生物多様性条約 CBD COP12

2014年11月11日 (火)

ペットや生餌の輸入について外来種問題からのガイダンス

 COP12で採択された議題の一つとして、ペットや観賞用生物、生餌、食べ物の輸入について、外来種問題対策のためのガイドラインが策定されました。
 輸入されたペットや観賞用生物や生餌を、野外に放したり、逃げたりするリスクを考慮してのガイドラインです。日本でもアライグマやミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)のようにペットとして輸入された動物が野外に広がり、その対策に苦慮している例が多々あります。
例)認定NPO法人 生態工房による外来生物防除活動
 今回採択された最終文書で3つの点に注目しました。


「ホワイトリスト」方式の推進

 一つはガイダンス20段落の「輸入が安全であることが示されない限り、生物多様性への潜在的な危険があると分類される」です。現在の日本の外来生物法はリストアップされた種が規制対象になる「ブラックリスト」方式です。一方このガイダンスでは、「安全が確認されたもの以外はリスクがある」としていて「ホワイトリスト」方式になっています。
 日本の外来生物法について複数の自然保護団体から「ブラックリスト」では、リスト外の生物が輸入されて新たな脅威になるので、「ホワイトリスト」方式にすべきだという意見が出されていました。COP12で採択されたガイダンスはこの意見を後押しすることになります。


CITESとの連携

 二つめは本文4段落のワシントン条約(CITES)との協力です。CITESが絶滅のおそれのある野生動植物種だけでなく、外来種問題に関しても調査方法やリスク対処などでCBD事務局と協力するとあります。条約間や国連機関の間での協力が進められていることを前回の記事で書きましたが、その一環で各条約の役割が広がっています。


輸入する生物の学名などを表示

 そして最後に、ガイダンスの19段落に、「すべてのペットや観賞用生物、生餌などの輸入販売品は、学名など分類情報を明確に示すべき」としています。

 、CITES対象種を合法に所持するには「登録票」が必要なのですが、そこに表示される種名は、スローロリスを規制適用前に取得した個体の申請の場合は「属」のレベルまででよいとされています。JWCSが調査したスローロリスの違法取引問題では、大まかな表記が不正取引の温床になっていました。
 今後、このガイダンスに従って輸入されるペットに学名が表示されることになれば、適正な法執行にも役立ちます。
 ちなみに最新の研究によりスローロリスは8種に分類されていますが、日本では4種の分類を採用しており、登録票にいたっては「スローロリス」と「ピグミースローロリス」の2種の表記しか見かけませんでした。
 COP12の結果を受け、国内での取り組みが進むことを期待しています。
最終文書
INVASIVE ALIEN SPECIES(UNEP/CBD/COP/12/L.5

(鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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愛知ターゲットと地方政府の関与

 JWCSが市民ネットのポジションペーパーを通じて提言したことの一つに、愛知ターゲット3達成における地方政府の役割の追加がありました。資源動員の議題では地方政府についての文言の追加はありませんでしたが、地方政府との連携は一つの議題になっています。
 愛知ターゲットの達成のため、地方政府に、土地利用計画や交通、水や廃棄物の管理では生物多様性への配慮を統合すること、自然を基本にした解決策、人々の健康や生計、再生可能エネルギーは生態系からの恵みであることを示して、生物多様性の問題の優先順位を上げることなどを促しています。(UNEP/CBD/COP/12/L.22 Para5)

地方レベルでの生物多様性の主流化、愛知ターゲット達成のために地方自治体を支援(para6(a)(b))などの文言もあります。

 これは、JWCS愛知ターゲット3委員会の研究結果で注目している地域の取り組みを応援する内容です。ぜひ日本の政策にも取り入れて具体化してほしいと思います。

 また2016年の締約国会議の中心議題として、農林水産業での生物多様性保全の主流化が話し合われることになりました。(UNEP/CBD/COP/12/L.18 Annex)

 このような国際的な流れを考慮し、日本での取組事例を掘り起して、愛知目標達成のための提言を行っていきます。

(鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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2014年11月 5日 (水)

有害な奨励措置改革のための「宿題」

Gbo4


(写真)GBO4(地球規模生物多様性概况第4版)愛知ターゲットの各目標が評価されている。下の2段が愛知ターゲット3の評価。有害な奨励措置の廃止は進展なし、良い奨励措置は少しは進展あり。
 JWCSが3年計画で研究してきた愛知ターゲット3、補助金を含む奨励措置の改革に対し、COP12の決議で締約国に期限を区切った「宿題」が出されました。
その「宿題」をご紹介します。

「2015年 補助金を含む奨励措置の改革を国家目標と生物多様性国家戦略に含む」


 日本は愛知ターゲットを反映した「生物多様性国家戦略2012 -2020」を平成24年9月28日に閣議決定しています。
 しかし2014年2月の国家戦略の点検結果を見てみると有害な補助金を洗い出して改革するというものではなく、生物多様性保全事業の奨励措置を挙げ、「引き続き考慮していきます」の一文だけでした。
 そのため「改革すべき奨励措置の特定と良い奨励措置を計画するための分析研究の着手」や「有害な奨励措置候補を識別し、最終的に除去するための優先順位をつけ、そして良い奨励措置の強化にも優先順位をつけ、いつまでに何をやるかの政策計画を進展させる」や「すでに認識されている有害な補助金はすぐに政策措置をとる」を国家戦略に加えるのか注目されます。


参照:ブログ「生物多様性条約 国別報告書・国家戦略のパブリックコメント」2014年2月
2016年、2018年までの「宿題」

 そして「2016年のCOP13までに廃止、段階的廃止、改革すべき奨励措置の候補がすでに知られている場合は、その廃止等に向けて速やかに政策的または法律的措置を進展させる。分析研究は終了させる」「2018年までに改革すべき奨励措置を認識し、優先順位をつける。良い補助金にも優先順位をつけ、 いつまでに何をやるかを規定する」という「宿題」をやり遂げることができるのでしょうか。
 愛知ターゲットが採択されて4年たち、日本だけでなく他の締約国を含め、条約からの「宿題」への反応が思わしくないことを考えると、ますます関連する条約や国際機関のプロジェクトなどと連携して、「締約国がやる気になる」しくみが重要ではないかと思います。
参考:最終文書
RESOURCE MOBILIZATION(UNEP/CBD/COP/12/L.32)
(鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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2014年10月31日 (金)

ブッシュミート(野生動物の肉)から考える持続可能な利用 その3

JWCSの提案したことが最終文書に加えられる
 前回のブログでご紹介したブッシュミートについて、全体会議で議論する最終文書(UNEP/CBD/COP/12/L.13)を見てみると 、2段落目にカナダが提案したCITESについての記載が加筆されていました。
加えられた「CITES CoP16 の決議事項」とは、CBD、FAO(国連食糧農業機関) 、CMS(ボン条約)、ITTO(国際熱帯木材機関)との協議、とくにCBDとの連携とCITES CoP17 (2016年)で結果報告と勧告が行われることを指しています(14.29 (Rev. CoP16))。
 そしてそれと一緒にJWCSが提案したICCWC「野生生物犯罪と闘う国際コンソーシアム(CITES、インターポール、国連薬物犯罪事務所、世界銀行、世界税関機構で構成された組織)」について加筆されました。
 これによりCBDでの決議事項が、CITESでの決議や犯罪を取り締まる機関と連携することがはっきりし、実効性が高まることが期待されます。

自給の区別と自給用密猟
 最終文書の段落 9は「自給と密猟、野生種の試料および製品の国内外の取引を区別する」という表記になり、段落12では先住民と地域社会そのほか 野生生物資源を自給している利用者による自給用狩猟や生計のためであっても、密猟の影響を評価し、最小限にし、軽減することが奨励されました。


国際機関の連携
 会議が終わり、すぐ新しい事業への動きがありました。2013年に設立した持続可能な野生動物管理に関する共同パートナーシップ(Collaborative Partnership on Sustainable Wildlife Management (CPW))の事業です。
 CPWは、CBD COP11(2012年10月 ハイデラバード)で設立を進めることが決議され(UNEP/CBD/COP/DEC/ⅩⅠ/25 Para15(f))、CITES CoP16が開催されていた2013年3月10日にバンコクで第一回目の会議が開かれました。
 CPWの事務局はFAOで、CBD、CITES、CMS 、UNEP(国連環境計画)、IUFRO(国際森林研究機関連合)、OIE(国際獣疫事務局)、CIFOR(国際林業研究センター)、ITC(国際貿易センター)、CIC(狩猟動物及び野生生物保全国際評議会)、IIFB(生物多様性国際先住民フォーラム)IUCN(国際自然保護連合)、TRAFFICで構成されています。
 このCPWの事業として、CBD事務局は10月21日付プレスリリースで「持続可能な野生動物管理のための基準と指標: グローバル認証システムに向けた重要なステップ」のテストケースになる国を募集していました。
 関連する条約や国際組織が連携して決議を実行する動きはほかの議題でもみられ、COP12では他の条約との連携という議題もありました。この国際機関の連携の強化は、生物多様性保全の具体的な行動につながることを期待したい動きです。

 
(鈴木希理恵 JWCS事務局長 / 議事記録:小林邦彦 JWCS愛知ターゲット3委員会・名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程)

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2014年10月29日 (水)

生物多様性を取り巻く新たな議論“合成生物学”

 2014年10月、韓国・平昌で生物多様性条約第12回締約国会議(COP12)が開催された。本会合ではおもに、愛知ターゲットの中間評価やその達成に向けた資源動員戦略に関する議論が行われた。また、10月12日に発効した名古屋議定書の第1回締約国会議が開催されるなど、さまざまな議題が注目を集めた。本稿では、その注目を集めた議題の1つである「合成生物学(Synthetic Biology)」に焦点をあて、その概要やCOP12での議論を紹介する。

1.合成生物学の概要と議論の経緯

 合成生物学は2012年4月頃に開催された第16回科学技術助言補助機関(SBSTTA16)の会合から新規で緊急の課題として生物多様性条約の下で議論され始めた(ただし、議論され続けているものの、「新規で緊急の課題」として扱うべきかどうかという手続きの点においてもCOP12での論点となっている)。

 SBSTTAで議論が始まった背景には、合成生物学が人の手によって生命が創りだす潜在性を有した技術なのではないかという疑念に由縁する。2010年5月、サイエンス誌(電子版)にアメリカの研究グループが人工的に化学合成したゲノムDNAを持つ細菌を造成することができた論文を発表し、日本においても社会的に大きな話題となった(ただし、完全に人工的な生命体を創出するには、乗り越えるべき障壁が数多く存在するため、現時点では不可能という指摘もある)。

 そうして始まった生物多様性条約の下での議論は条約の最高意思決定場である締約国会議にて、「国内法令及びその他の国際的な義務に従って、合成生物学より生じる有機体、構成要素及び産物による生物多様性の深刻な減少や損失の脅威に対処する場合には、条約の前文及び第14条に従って、予防的取組方法をとること(決議 XI/11 para4)」を各締約国などに要請し、問題に対処することを決めた。


2.COP12での合成生物学に関する議論

 今年10月に開催されたCOP12における論点はおもに次の2点が挙げられる。

1点目は、前回のCOPにおいても議論になった、合成生物学を「新規で緊急の課題」とするかどうかということである。
 2点目は、合成生物学に新たな国際的な規制的枠組みが必要なのかどうか、さらに、カルタヘナ議定書とどのような関係があるのかということである。

具体的には、欧州連合やメキシコ、ブラジル、ノルウェー、カナダは新たな国際的な枠組みを不要で、すでにカルタヘナ議定書という国際的な枠組みがあるため、その下で合成生物学がどの程度カルタヘナ議定書によって適用されていて、されていないものがあるのかどうかを特定する必要があると、主張していた。

一方で、フィリピンやエチオピア、マレーシア、ボリビアは、新たな国際的な枠組みを求めていた。

結果的には、新たな国際的な枠組みを必ずしも設置しない方向で決議され、具体的な合成生物学に係る定義やカルタヘナ議定書との関係については、専門家グループの下で検討を進めていくことが決まった。

また、合成生物学的技術によって生じる構成要素、有機体及び産物の環境放出を規制していくために、リスクアセスメントを実施していく(すでに実施している場合には、引き続き)ことも決まるなど、問題に対処していくことが決められた。そのため、細かい具体的な対処については、今後の専門家グループでの検討などにも左右されることから、引き続き、この問題への対応を注視していく必要がある。

(小林邦彦 名古屋大学大学院環境学研究科博士後期課程)




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2014年10月14日 (火)

ブッシュミート(野生動物の肉)から考える持続可能な利用 その2

●CITESとの関係が具体的に


 では、その議論を踏まえて作成された会議文書((UNEP/CBD/COP/12/WG2/CRP.8 以下、会議文書)を見てみます。
 今回のCOPの前から、ブッシュミートに関する会議が何度か開かれています。その一つが2011年6月に開催されたCBDブッシュミート・リエゾングループ(連絡会)とCITES中央アフリカブッシュミート・ワーキンググループの合同会議(以下、合同会議)です。
 その合同会議について、会議文書の7段落に「(この合同会議の)成果を含め」と加えられました。
 2011年のCBD/CITES合同会議には、アフリカ、東南アジア、中南米の締約国とEU・米国そしてボン条約事務局やFAO、大型類人猿保護組織のGRASP、IUCNなど国際団体、先住民の団体などが出席していました。
 なぜこのような会議が開かれたのかを、合同会議の文書からご紹介します。
熱帯・亜熱帯の多くの国が狩猟により「空っぽの森症候群」、つまり森林動物相の損失が危機的な状況になっています。そしてそれは熱帯に多くみられる、動物によって種子が散布される植物にとっても脅威であり、森林生態系全体の危機でもあります。
 その背景には人口の増加と農村部の貧困と生計の選択肢の欠如、増加した都市部の消費、林業の拡大と奥地の伐採があり、もはや販売用、自給用の狩猟を支えきれないレベルにあります。さらに近年は、ブッシュミートの商取引の規模拡大と組織化された密輸の拡大傾向など、新たな脅威が加わっています。
 また野生動物の肉使用の大規模化と商業化は、先住民・地域社会の食糧安全保障、慣習、生計と精神的アイデンティティに深刻な脅威となっています。
 合同会議では以下の4点を提案しています。
(a)持続可能な野生生物の管理として、コミュニティの野生生物管理、ゲームハンティング、狩猟の観光
(b)家畜や野生動物の小規模な飼育 
(c)非木材林産物の持続可能な採集 
(d)エコラベル
 この提案について事例を考えてみると、JWCSが支援しているゴリラの保護活動団体「ポレポレ基金」が、小規模な飼育の実践例として挙げられるのではないかと思います。「ポレポレ基金では、かつてはゴリラを食べていた村で活動をしており、池での養魚やモルモットの飼育の普及をしています。(ENEOSウェブサイト参照) 
 また「非木材林産物の採集」とは日本の場合ではキノコや山菜取りなどがあたります。CBD COP12の会議文書3段落には、「SATOYAMAイニシアチブのための国際協力に留意」と書かれており、里山的な利用で食料を確保し、生計を立てようという代替案を示しています。
 そして会議文書の2段落目に「野生生物の違法取引に関するUNEPの国連環境総会、および関連するハイレベルの取り組みを認識し」という文言が加えられました。
 また会議文書7段落目にCITESとの関係についての記述が加えられ、2016年に南アフリカで開催される「CITES CoP17を考慮」との文言も入りました。CITES CoP17ではブッシュミートに関する報告がなされることが合同会議の文書にあります。


●先住民・地域社会(ILC)や野生生物保全の記述拡大

 ILCについては、会議文書の9段落目以降に大幅に加筆されました。自給のための狩猟と密輸や伝統的ではない違法な狩猟を区別すること、野生生物の持続可能な管理に関する先住民・地域社会の能力強化などです。
 また政府による持続不可能なブッシュミートの消費を促しているものの改革、「持続可能な利用」が野生生物へ与える影響の分析など、野生生物保全に積極的な記述も加わりました。
 この議題に関しては、JWCSの提案した要素も含め、草案より前進した内容になりました。
●国際社会の流れについていけているのだろうか

 私が環境イベントのブースに立っていると「野生動物を保護するために食べるなだなんて、それを食べて暮らしている人はどうでもいいのか、人間より動物が大事なのか」と言う人に出会うことがあります。
 しかし、野生動物の減少は危機的で、伝統的な暮らしがもはや続けられないと合同会議の文書は訴えています。生態系サービスがないと人間は生きていけない。だから持続可能に人間の生活を変えていかなければなりません。そうした認識に立って国際的な政策は動いています。

 途上国に対する能力開発は議論に上りますが、果たして日本は科学的知見が政策に活かされているのか、一般の人たちの意識向上や知識の普及は進んでいるのか、疑問を感じます。
(鈴木希理恵 JWCS事務局長 / 議事記録:小林邦彦 JWCS愛知ターゲット3委員会・名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程)

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ブッシュミート(野生動物の肉)から考える持続可能な利用 その1

 生物多様性条約(CBD)COP12には「生物多様性の持続可能な利用:ブッシュミートと持続可能な野生生物管理」という議題があります。この議題は、10月8日(水)に話し合われました。

●JWCSの提案

 JWCSはこの議題に関し、「国連生物多様性の10年市民ネットワーク(以下、市民ネット)」の会員として、市民ネットのポジションペーパーの中で提案をしました。
それは「野生生物犯罪と闘う国際コンソーシアム(ICCWC)などの政府間組織との協働を含む」と文言を加えるべきというものです。理由として「違法野生生物貿易取引が及ぼす問題は国家間で理解が進んでいるので、犯罪取り締まりの枠組みで国際協力を進めることは愛知ターゲット達成に効果的である」と書きました。
 ICCWCとは、2010年11月に結成された、CITES、インターポール、国連薬物犯罪事務所、世界銀行、世界税関機構による組織です。
 草案では「ロンドン宣言を認識し」や「CBDとCITESの協力」としか書かれておらず、具体性に欠いていました。
 ロンドン宣言とは、野生生物の違法取引が国際的な犯罪組織や、武装集団の武器購入の資金源になっているため、それを国際社会が封じ込めることを目的に開催された国際会議の成果です。

●ワーキングループ2での議論


 では会議ではどのような意見が出たのかを、メモから抜粋してご紹介します。
グアテマラ
ブッシュミートに関するいくつもの研究を実施しており、管理に関しては、漁業とブッシュミートに関する法令を有している。
アフリカグループを代表してコンゴ民主共和国
ブッシュミートはアフリカの大きな関心事項である。ブッシュミートはILC(先住民・地域社会)のおもな食糧である。コンゴ民主共和国は管理に関する戦略を多く有しており、サブ地域(※)も戦略を策定している。アフリカは決議案を支持する。とくに、One Health アプローチ(人間も動物も健康)を支持している。新たな文言を追加することを提案する。「技術的、人的な支援を求める」という決議を提案する。 能力構築に関してILCへの言及がない。事務局はその点を明記すべきである。
※「アフリカ」に対する「中央アフリカ」などさらに分割した地域
ボリビア
段落8(技術や現状分析の協力)に関して、技術的なガイダンスが必要。「関係者が関与した技術的な支援を求める」という表現に変更することを求める。また新たな段落を提案する。包括的な野生生物管理を求める。伝統的知識の価値を認識する必要がある。
ブルキナファソ
決議案を支持する。ILCの関与が重要。30%の地域にILCが住んでいる。野生生物の多くは保護地域内で失われていることに留意する。
EU
CBDとCITESの協力を強調する。持続可能な管理に関するパートナーシップは重要だと信じている。また、関係者間で情報共有することが重要だと考えている。EUには情報を共有するための「クリアリングハウス」がある。私たちは、違法な狩猟がその土地の社会などに悪影響を与えていることを懸念している。これらをきちんと反映させてほしい。
中国
決議案を支持する。このブッシュミートは持続可能な開発にとって重要である。私たちは、各締約国と協力していく。
エクアドル
自然の権利憲章を有しており、第2章において狩猟が許されている。
エジプト
アラブ諸国の代表として発言する。決議案を支持する。愛知目標2、4、5、6、14が関連している。ブッシュミートはILCの生活と関連している。しかし、違法な取引などが、国内のGDPと比較して相当数あることを懸念している。
FAO
ブッシュミートを優先的な課題と位置づけ、地域事務所と協力している。包括的で横断的なアプローチが推奨される。ILCが野生生物と共生して生活していることを強調する。
 このように大きな反対はありませんでしたが、ILCへの配慮とCITESとの連携が機能するよう求める発言が複数ありました。

(鈴木希理恵 JWCS事務局長 / 議事記録:小林邦彦 JWCS愛知ターゲット3委員会・名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程)

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2014年10月11日 (土)

資源動員戦略について議論した作業部会1

10月7日(火)

 今回のCOP12では、さまざまな議題が挙がっていますが、とくに愛知ターゲットを達成させるための資源動員戦略に各国、関係者の注目が集まっています。JWCS愛知ターゲット3委員会が追っている奨励措置の課題もこの議題の下で検討が行われています。
 この議題では、各国は愛知ターゲット20にある目標達成のための資金について、どうするかということを中心に、意見表明をしています。その中で、一部の国が補助金、愛知ターゲット3に関わる意見を表明しています。ここでは、その発言をした国々の発言内容を紹介するとともに、会議終了後に行ったインタビューについて紹介します。

●愛知ターゲット3を巡る各国の発言

 愛知ターゲット3を巡っては、愛知ターゲット3を達成するためのマイルストーン(スケジュール)に関する決議案への意見や、愛知ターゲット3を達成するための自国の取り組みを中心に発言がありました。
 ボリビアはエネルギーの文脈で、バイオ燃料の開発に関連する補助金については、先住民族等への配慮をしていくことが重要と、自国の経験を共有していました(写真)。


Co12

 一方ニュージーランドは、自国の取り組みについてはとくに言及しませんでしたが、愛知ターゲット3を達成するためのマイルストーンについては、強く支持する旨を表明していました。
 アルゼンチンもニュージーランドと同様に、自国の取り組みを発表しませんでしたが、各国が奨励(incentive)を特定することを推奨するとともに、実施においては、CBDやその他の国際的な条約の義務に沿う必要があると指摘していました。
 コスタリカは自国での取り組みの進捗について、詳しく述べることはしませんでしたが、良い進捗だということを報告していました。
 最後に、ブラジルは愛知ターゲット3のマイルストーンを支持するとともに、国内の全てのレベルでこの点を主流化することが重要と指摘していました。また、ポジティブな奨励措置に焦点を充てていくことが重要であるものの、知識・経験を共有していくことは重要であるため、事務局に愛知ターゲット3に関する各国の活動の手助けをすることを求めていました。
 なお、日本は愛知ターゲット3について、とくに言及することはありませんでした。

●ブラジル政府の担当者にインタビュー

 会議終了後に、熱心に奨励措置について話をしていたブラジル政府の担当官のもとに行きまして、簡単にインタビューをしました。以下は、その際のやり取りです。
質問:愛知ターゲット3を実施していく上で、補助金をはじめ、各省庁の事業の効率性や会計上の問題がないかをチェックする会計検査院はどのような役割を果たしているか?
ブラジルの担当官:ブラジルには会計検査院はなく、国のレベルでは関係省庁、州のレベルでは担当部署など、各レベルで委員会を設置して、委員会は関係者によって構成されている。その委員会がそれぞれ一斉にその年度の会計検査を行う。その関係で作業は膨大で大変だ。
質問:そういった作業は、何を根拠に実施されているのか?
ブラジルの担当官:基本的に、細かいことは行政措置(日本でいう所の政令)に書かれているが、根拠は法律に基づく。また、環境に悪い補助金が特定された場合には、その補助金が改革の対象になるのはもちろんだが、その補助金が執行される法律もまた改革の対象となり、法律が改正される。こういった作業は他国でも同様ではないか。

●小グループで議論を煮詰めることに

 会議では、この資源動員の議題について、とくに関心のある関係者を集めたコンタクトグループを設置し、さらなる議論がなされる予定です。愛知ターゲット3を実施するためのマイルストーンに対して、明確な反対を示した国はありませんが、引き続きどうなっていくのか、見守っていきたいと思います。

小林 邦彦(JWCS愛知ターゲット3委員会・名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程)

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2014年10月 9日 (木)

会議場でのロビー活動

10月7日(火)
 生物多様性条約COP12の1週目は、あらかじめ提案されている議題について、締約国と国連機関やNGOなどが意見を表明する段階です。
締約国から「我が国はこんな取り組みをしているが、資金がもっと必要だ」という話が続いています。
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JWCSでは、愛知ターゲット3委員会の研究・提言を、会議参加者に向けて3つの方法で発信しました。

 1つは日本の団体『国連生物多様性の10年市民ネットワーク(JWCSは団体会員)』で作成したポジションペーパーの中に、愛知ターゲット3・奨励措置や野生生物犯罪に関する部分とそれらに関する国際協力の部分についての意見を加えてもらいました。


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 2つ目は、国際的なNGOネットワーク「CBDアライアンス」が会場で毎日発行する新聞『eco』に投稿し、7日火曜日に掲載されたことです。この投稿原稿の日本語版は、ブログに掲載しています。今回のCOPはペーパーレスを目指しているので、たくさんは印刷せず、政府関係者を狙って配布しています。
 『eco』はこれまでの締約国会議でNGOの見解を知る媒体として定着しているので、配布のお手伝いをしていると「探していたんだ」「毎回読んでいるよ」などと声をかけられました。

 JWCS愛知ターゲット3委員会の提言
 CBDアライアンス 『eco』
Ecohondoutsmall

 3つ目はJWCSの研究報告を収めたCD(日本語・英語版)を会議場で配布していることです。これは2012年度からJWCS愛知ターゲット3委員会が進めてきた「生物多様性に影響を及ぼす奨励措置の研究」のうち、日本の地方自治体や地域のコミュニティが行っている生物多様性に配慮した補助金など公的資金を使った事業の例を集めたものです。ほかの国で役に立つ情報を提供できればと「良い事例」を集めました。
 CDは、エキシビジョンホールにあるIUCN日本委員会と国連生物多様性の10年日本委員会の共同ブースやメインホールのNGOコーナーに置いています。
 またCDには数に限りがあるので、ブックレットの内容をJWCSのウェブサイトに掲載し、そのサイトをお知らせするチラシも配布しています。
                              (鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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提言で貿易と地方での取り組みに注目した理由

●補助金改革が進まない理由


 2013年3月、CBD事務局は締約国に「奨励措置・資源動員(目標の設立を含む)に対する戦略の実施のチェック」という文章を送りました。
 これは愛知ターゲット3(補助金を含む奨励措置の改革)を進めるにあたって障害は何かを聞くアンケートです。締め切りは2013年7月5日でした。
 これに対し、13か国と2つの組織から回答がありました。締約国は194の国・地域なのですが。
 日本は回答をしませんでしたが、生物多様性条約科学技術助言補助機関会合(SBSTTA)あてにコメントを出したことが上記のサイトに書かれています(段落5)。

 そしてアンケート結果である、改革の障害物ワースト5(段落10)を簡単に訳してみますと
(a)資金、人、技術の不足
(b)環境以外の部署やる気なし
(c)生物多様性の損失で損をしていることが知られてないし、明文化されていない。
(d)政治的にやる気なし
(e)制度脆弱でやる人がいない
でした。どこの国でも同じなんだと納得しました。


●「貿易」と「地域」に注目


 ではどうしたら奨励措置の改革が進むのか。2012年度からJWCS愛知ターゲット委員会で研究してきた事例から2つの点に注目しました。
 1つは貿易です。
 WTOドーハラウンドでは、漁業補助金について「水産資源の枯渇に配慮しない国が、配慮する国より貿易で有利にならないようにすべき」という点で補助金が議論されていました。
 そのため、生物多様性に配慮しても自国だけが損をしない、また国際社会と協調しなければならないという状況を作り出すことは、奨励措置の改革を促すのではないかと考えました。
 貿易のルールが生物多様性保全のために変わることができれば、多くの国で補助金改革が実現しやすくなるでしょう。
 
 2つめは国よりも地方で先行する取り組みです。
 「志摩市里海創生基本計画」「千葉市谷津田等の保全に関する協定」、そしておもに県が実施している森林環境税など、生態系サービスを重視する政策が実施されています。また、前述の志摩市の基本計画や三重県での水田の水路の生態系を保全する環境用水事業は、地域の生物多様性を保全する政策の実施のために省庁の縦割りを超える事業です。
 また、沖縄嘉陽海岸高潮対策事業、千葉県海岸事業、荒瀬ダム撤去など地域住民や利害関係者が参加して、公共事業を生物多様性を保全する計画に変更した事例があります。
 日本では過疎対策から地方自治体が地域を見直す動きがありますが、世界でも貧困など地域の問題を解決と、生物多様性に配慮した地域づくりが結び付くのではないかと思います。
 詳しくはJWCSの報告書をご覧ください http://www.jwcs.org/activity/diversity.html


●COP12草案との関係


  愛知ターゲット3は、生物多様性に有害な補助金を良い補助金に替えて、保全の資金を確保するという意味で「資源動員」の議題の中で話し合われます。
 その「資源動員」の議題の草案(Item14 段落17)に、WTOなど貿易関係を含む国際機関との関係強化や能力開発・技術での協力に留意することと書かれています。
 また「他の条約や国際組織の協力、ビジネスを含む利害関係者の関与」の議題の草案(Item29 段落29)に、国民との協働という言葉があります。
 表現としては弱いですが、注目した要素は草案に入っているという点から、草案を後退することなく採択するよう求める提言にしました。
                                         (鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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