種の保存法

2017年3月 1日 (水)

種の保存法改正パブリックコメントに海外からも

●種の保存法パブリックコメントの結果

 環境省は種の保存法改正のための答申案に対し、パブリックコメントを募集し、その結果が1月30日の中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会で公表されました。
環境省報道発表資料 http://www.env.go.jp/press/103596.html

 コメントしたのは36個人/団体でした。JWCSは、スローロリスのペット取引の調査を元に、ワシントン条約附属書Ⅰに掲載されている種の登録や流通の問題点を指摘しました。
また附属書Ⅱに掲載されている種は国内取引規制が全くなされておらず、輸入時に密輸が見逃されると取締りができないため、規制の必要性を指摘しました。
JWCSのパブリックコメント http://www.jwcs.org/data/LCES2017JWCS.pdf

●海外の団体も意見を提出
またワシントン条約に関連する活動をしている国際NGO5団体がコメントしており、それらのコメントも正式に受理されていました。海外からはワシントン条約第17回締約国会議での決定にそって象牙の国内市場閉鎖を求める意見、象牙製品のネット販売の禁止を求める意見、種の保存法での海洋生物の保護を求める意見がありました。
ヒューマン ソサイエティ インターナショナル(米国)のコメント(日英)
 
生物多様性センター(米国)のコメント(日英)
意見を提出したその他の団体
   シーシェパード リーガル(米国)
   プロ ワイルドライフ(ドイツ)
   鯨類ソサエティ インターナショナル(米国)

 しかし環境省の反応は、答申の象牙取引に関する部分の文章に追加があったものの、JWCSや海外団体からのコメントの多くに対し「今後の施策の参考とさせていただきます」という回答でした。

●日本政府は象牙の国内市場閉鎖はしないという立場
 そして政府は象牙取引に関して、規制の強化はするが市場閉鎖はしないという立場を崩していません。「そもそも世界に合法の国内市場がある限り、需要が喚起され、ゾウの密猟は止まらない」という29か国から成るアフリカゾウ連合の訴えを日本政府は無視しています。
 2017年2月28日、種の保存法の改正案が閣議決定され、国会に提出されました。法案を見ると、違法行為があっても罪を立証する証拠がそろわないのではないかと感じました。JWCSはパブリックコメントで「規制前取得の登録票を発行する期限も設けるべき」と提案しましたが、新たな合法象牙の登録はしないといった象牙の国内市場閉鎖に向けた法案になっておらず残念です。
環境省 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について http://www.env.go.jp/press/103685.html
●業者の反応
 パブリックコメントで興味深かったのは、象牙の取引業者の登録と公表に対し、「現状でも善意の象牙取引業者がインターネット上で誹謗中傷されたり、HP上で悪意の書き込みをされたりしているため、登録企業の公表については注意が必要である」という意見があったことです。「日本の法律で合法であっても象牙取引を支持しない」という声が多くあることを事業者は受け止めたくないようです。
 一方で印鑑販売店のハンコヤドットコム、東洋堂、昭栄堂は、象牙の販売終了または終了予定を公表しています。
「ハンコヤドットコムでは、象牙・マンモス印材の販売を終了とさせて頂きました。」
中国政府は2016年12月29日に、2017年12月31日までに象牙の国内市場を停止すると発表しました。
中国政府のサイト(中国語)
英国では2016年9月から1947年以降に生産されたすべての象牙の販売は禁止されています。今、英国議会で議論されているのは、象牙を使った骨董品の販売禁止です。
このような状況の中で、「日本の象牙市場はCITES CoP17の決議の対象外」という日本政府の主張は理解を得られないものと思われます。
JWCS事務局長 鈴木希理恵

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2016年9月23日 (金)

CITES17 日本に関係の深い議題

ワシントン条約第17回締約国会議(CITES CoP17)でJWCSは日本に関係の深い以下のテーマに注目しています。

1.アフリカゾウ 国内市場閉鎖と附属書アップリスト


 今回の会議では、議題として象牙の国内市場閉鎖と、すべてのアフリカゾウを附属書Ⅰ(国際商取引禁止)に戻す提案が出されています。一方で現在附属書Ⅱ(許可があれば取引できる)になっている南部アフリカの地域個体群のうち、ジンバブエとナミビアが自国の個体群に関する注釈を削除するという、取引再開に向けた提案をしています
附属書に関する提案はこれまでの条約運営の枠組みの中ですが、象牙国内市場の閉鎖となると、これまでのアフリカゾウに関する過去の決定の変更が必要になります。そのことが象牙国内市場の閉鎖の提案の後につけられた事務局からのコメントに書かれています。
 ワシントン条約43年の歴史の中で常に象牙問題が議論されてきましたが、すべての国際取引が禁止されていた時期を除き、アフリカゾウは減少の一途です。この現状を変える新たな展開になるのか、注目されます。

2.ウナギ


 アジアに生息するニホンウナギの漁獲が減少し、代わって中国でのヨーロッパウナギの養殖が拡大しました。そのため2007年にヨーロッパウナギがワシントン条約附属書Ⅱに掲載され、EUでは河川環境の改善など生息数を増やす努力をしてきましたが、生息数の減少が続いたため、2010年に輸出割り当てゼロという事実上の輸出禁止措置をとりました。

 その後、アメリカウナギや熱帯ウナギ(ビカーラ種)の漁獲が急増しました。1種だけを国際取引を禁止しても近縁種が減少してしまうので、その対策として淡水ウナギ16種の調査をしよう、というのが今回の案です。9月20日のみなと新聞には水産庁の「賛成する可能性がある」とのコメントが掲載されていました。

3.サメ


 クロトガリザメ、オナガザメ類の附属書Ⅱ掲載が提案されています。日本のサメ漁はヨシキリザメが多く(7,151トン)、提案されている2種の水揚げ量はクロトガリザメ(2トン、おもに混獲による)とオナガザメ類(170トン)です。どちらのサメも漁獲量は減少しています(「水産庁調査委託事業で収集された主要港におけるさめ類種別水揚量」2014年データ)。
 またワシントン条約は国際取引を規制するものなので、国内での消費は対象外です。そして附属書Ⅱの場合は原産国の許可があれば取引できます。みなと新聞によると日本政府は「資源状態が悪いというデータがない」ため提案に反対する方針とのことです。
『平成27年度国際漁業資源の現況』は、クロトガリザメの資源水準を低位(中西部太平洋)、資源の動向を減少(中西部太平洋)と評価しています。またオナガザメについては調査中としています。
 提案書に書かれた生息状況のデータに対し、日本の主張がどのように受け取られるのか注目されます。

4.ペットトレード(爬虫類・ヨウム)


 附属書掲載の提案として、ペットとして取引される爬虫類、両生類がいくつも挙げられています。中でもマレーシアが附属書Ⅰ掲載を提案したミミナシオオトカゲは、生息地では捕獲や売買が禁止されているにもかかわらず、日本で販売されています。このことは、9月15日に開催された種の保存法の見直しを議論する「あり方検討会」でも話題に上りました。
現在の種の保存法では、附属書Ⅰの動植物は所有や売買に登録票です。しかしこの登録票と登録した個体が対応せず、違法に売買されていることが検討会の課題になっています。
 附属書Ⅰに格上げが提案されたアフリカ原産のヨウムも日本で一羽24~30万円で売られています。しかしヨウムの生息地での密猟と違法取引を告発する動画から、1羽のヨウムが日本に売られてくるまでの間に、たくさんのヨウムが死んでいることが分かります。
 現在の日本の法律に違反していなくても、生息地や取引過程などで数々の問題があります。このことを締約国会議の機会に理解を広げ、来年に予定されている種の保存法改正につなげていきたいと思います。

5.CITESと持続可能な生産・消費


 このほかにJWCSが注目しているのが、持続可能な開発目標(SDGs)の一つ、「持続可能な生産・消費」に関連する議題です。CITESと生計、ブッシュミート、食糧の安全保障などの議題が挙がっています。
 絶滅のおそれのある動植物の輸出に頼るくらしは「持続可能な生産」なのか、他に選択肢はないのか、消費者としての日本は生息地の状況を理解して消費行動をとっているのか、また野生動植物の減少に大きく影響する紛争と難民、人口増加などの問題と関連させた、持続可能な開発目標の枠組みでの対策はないか、など情報収集をする予定です。

 会議期間中は、Twitter、Facebook、当ブログで随時報告します。
また10月14日にCITES参加報告会を行います。ぜひ直接話を聞きに来てください。
詳しくはJWCSホームページをご覧ください。
 JWCSはワシントン条約締約国会議で議論されていることを国内に伝えるため、日本と関係の深い議題の一部を翻訳しています。翻訳はJWCSのホームページの「資料室」「国際会議資料」からご覧になれます。
翻訳は翻訳ボランティアの皆さんのご協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
(鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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2013年6月22日 (土)

スローロリスで販売者が逮捕

●スローロリスの違法取引事件が一斉に報道される
6月18日、登録票のないピグミースローロリスを譲り渡したとして2名が逮捕されました。この事件は20日午後、ネットニュースやテレビで報道されました。

(リンク切れの場合はご容赦ください)
 報道によると、購入した和歌山市の夫婦は、飼っていたスローロリスが死んで悲しいとブログに書き、それを読んだ容疑者らが違法取引をもちかけたそうです。販売価格は18万円でした。先月開かれたエキゾチックペットの展示即売会では登録票のあるスローロリスが65~80万円でしたから破格です。

(東京レプタイルズワールド2013報告
 購入した夫婦は、死んだスローロリスの登録票を返納しなかった容疑で書類送検されました。

●種の保存法の罰が重くなった
 スローロリスは、ワシントン条約で国際取引原則禁止の附属書Ⅰに掲載されています。国内では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称・種の保存法)」により、登録票のないスローロリスの取引は禁止されています。
 2013年6月12日、改正された種の保存法が公布され、登録票のない譲り渡し(第12条)は個人の場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(第57条2)になりました。改正前は1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金でした。

( 官報
●犯罪の立証に生き物の情報が重要
 ワシントン条約締約国会議CoP14でスローロリスが国際取引原則禁止に決まったことが、「種の保存法」に反映されたのは2007年9月13日。しかしすでに2005年7月1日から感染症予防のためにペット目的のサルの輸入は禁止されていました。その間、多くのスローロリスがペットショップで販売されていました。繁殖は難しいので密輸された個体が多かったと考えられます。

 2007年9月13日以前に取得した、もしくは国内で繁殖したことを証明して登録できれば、取引は違法になりません。そのため子どもなのに国内で生まれた証拠がないなどスローロリスの年齢がわかれば、犯罪を立証する証拠になります。

 またこの事件のように、登録していたスローロリスが死んで手元の登録票と違うスローロリスを飼っていた場合、個体を見分ける生物学的な情報が犯罪を立証できるかどうかの重要な証拠になります。

 そのためJWCSでは、2009年2月にスローロリスの研究者を招いて、関係する行政担当者や動物園スタッフを対象に「スローロリス識別ワークショップ」を開催しました。その時に日本語に翻訳した資料を、警視庁に提供しました。

 改正された種の保存法が公布され、登録票の記載内容が明記されました(第20条)。記載内容は「種名、個体の形態、大きさその他主な特徴」などです。今までは種名は「スローロリス」「ピグミースローロリス」程度で、スローロリス類の中で分かれている種の記載が不十分でした。

(JWCSが翻訳した識別チャート http://www.jwcs.org/data/JWCSshikibetuLoris.pdf )

 そのほかには体長・体重・雌雄しか情報がなく、個体識別には情報が不十分でした。今後の登録票には、このような違法取引事件の裁判に役立つ情報を記載してほしいものです。


●「かわいい!」が絶滅に加担する
 またこの事件では動物取扱業の容疑者が、無登録のスローロリスを繁殖させて違法販売を繰り返していたそうです。国内で繁殖したと偽って密輸個体が販売されないよう、制度の厳格化が求められます。

 税関のHPに2012年度の「ワシントン条約に関する不正輸入輸入差止」が公開されました。今までJWCSが情報公開請求を行って得ていた情報です。


( 税関HP
 これを見ると昨年はタイからのスローロリス計3頭(No.267 No.319)の密輸が差し止められています。
 スローロリスが生息する東南アジアでは、スローロリスを絶滅させないための活動が行われています。そして飼い主が「かわいい!」とYoutubeに投稿した動画を見た研究者は、それが威嚇や怯えのしぐさであることがわかるので、ストレスで寿命を縮ませていると警告しています。

Loris1
 

 野生動物は家畜ではありません。東南アジアの夜の森をゆっくり移動し、樹脂や花を食べる野生のスローロリスを想像してみてください。かわいがっている(と飼い主は思っている)スローロリスにとって、ペットにされることは死に至るほどストレスのたまることなのです。

 またペットが高価であるほど密猟や密輸、犯罪を誘います。スローロリスの研究者は、「森の中でスローロリスを見つける頻度より、ペットショップで見つける頻度のほうがはるかに高い」と話し、絶滅を心配していました。
「スローロリスがかわいい」から始まったこの事件は、このような深刻な背景をもっているのです。

鈴木希理恵 JWCS理事

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2013年6月21日 (金)

種の保存法が一部改正される

 今春から新聞等でも取り上げられていた、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称・種の保存法)」の一部を改正する法律案が第183回国会に提出されていました。

 
 限られた時間の中で、参議院と衆議院の環境委員会において、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の一部を改正する法律案とともに審議され、参議院では5月23日に、衆議院では6月4日に可決・成立し、6月12日に公布されました。参議院環境委員会を他のNGOメンバーと一緒に傍聴し、NGOからの提案がどのように反映されるかを見てきました。
 
 
改正の柱:罰則の強化
 種の保存法とその施行令で指定されている国際希少野生動植物種(ワシントン条約附属書Ⅰ・国際取引原則禁止)は高額で取引されるケースが多く、これらの野生動物を捕獲するための密猟には、UNEP(国連環境計画)、CITES(ワシントン条約事務局)、IUCN(国際自然保護連合)、トラフィック(TRAFFIC)などから、犯罪組織が関与していると指摘されています。
 
 
 しかし日本では、法律に違反して希少野生動植物種の取引を行った場合でも、個人は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、法人についても「100万円以下の罰金」という軽い罰則になっていました。
 
 先日の東京レプタイルズワールドで取引されていた動物たちは合法的に輸入されたものですが、国際希少野生動植物種に指定されているスローロリスが一頭が65万円から80万円程度で売られていたことを考えれば、数頭まとめて輸入すれば、捕まっても100万円罰金を払うだけで十分利益が出る場合があるでしょう。
 
 
 また、登録票の偽造などにより摘発がとても難しく、実刑になる例が少ないため、犯罪は繰り返し行われていると言われています。
 今回の改正では、個人に対する罰金が「500万円以下」、法人が「1億円以下」とそれぞれ大幅に罰則が強化されました。
 
 
登録種の増加を目指す
 5月23日に傍聴した参議院の環境委員会では、種の保存法の改正案に含まれている内容だけでなく、環境省の今後の目標として、希少野生動植物種を2020年までに300種まで増やすことを目指すことが明言されました。
 環境省が平成24年8月に公表した第4次レッドリストでは、9分類群合計で3,430種が絶滅の恐れのある種として掲載されていたにもかかわらず、種の保存法では国内希少野生動植物種は89種しか指定されていませんでした。民主党政権下で、生物多様性国家戦略の見直しの際に提示されていた、25種の追加から比べると飛躍的な進歩といえます。
 ただし厳しい国家財政の中、希少野生動植物種に指定した動植物の保護増殖をどう進めていくのか、またその残り200種の指定をどのような手続きで進めていくのか、希少野生動植物種に指定されることで乱獲が行われる可能性があることにどう対処するのか、といった具体的なことはまだすべてこれからの検討にゆだねられています。
 そのほか今後の種の保存法の施行に関わる重要な内容について、質疑の中でしか触れられていないことが多くありました。私たちが選んだ議員によって法改正が行われる重要な場において、課題を政府やそれぞれの政党がどのようにとらえているかに、今後も注目していく必要があります。
 
 
 


残された課題
 今回の法改正に先立ち、いくつかのNGOが事前に議員にロビーイングをし、改正の内容についての提案を行っていました。登録種の増加などについても、NGOからの事前提案が取り上げられた例の一つです。
 種の保存法の条文の中ではありませんでしたが、種の保存法の検討に関わる参議院の附帯決議として、NGOからの事前提案の内容が数多く明記されました。
 たとえば国際希少野生動植物種の個体等の登録制度において、個体等識別情報をマイクロチップ、足環、ICタグ等によってすべての個体等に表示し、登録票上へもICタグなどにより表示することによって、登録票の付け替えや流用を防止する措置を検討することなどが記されています。
 この附帯決議は、今後また種の保存法の改正が行われる時に、過去の審議の申し送りのような意味合いを果たすものです。今後の種の保存法の改定時に、今回の附帯決議に挙げられたような内容が盛り込まれ、絶滅危惧種の保全にもっと効果的な法律となるよう、JWCSも働きかけを続けます。
 
絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律の一部を改正する法律案 に対する附帯決議 (平成25年5月23日)(PDF)
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/current/f073_052301.pdf
 
廣瀬光子 JWCSスタッフ

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2013年6月11日 (火)

抗いがたい、生きものと暮らすという誘惑

-「東京レプタイルズワールド2013」の報告-

CITES CoP16で注目を浴びた両生類やは虫類。これらの他、ほ乳類、鳥類、昆虫などを含む、海外から輸入された動物達のうち、犬・猫以外のことは、「エキゾチックアニマル」と呼ばれています。
このエキゾチックアニマルが大集合すると銘打たれ、「東京レプタイルズワールド2013」が、東京・池袋のサンシャインシティで5月18日・19日に開催されました。

東京レプタイルズワールド2013のwebサイト

●ペットとして販売されるさまざまな動物たち
 熱気あふれる会場には、大小さまざまな動物たちが所狭しと小さなケースに入れられ、並べられていました。
 動物の中では気味悪がられることの多いヘビの仲間が数多くいるにもかかわらず、会場は進むのも大変なほどの盛況ぶり。自慢のペットを連れてくる人もちらほらと見られ、みんな嬉々として動物たちに見入っていました。
ヘビやカメレオンなどは、動物園でも見たことのないような種類がたくさんいました。お店の数も動物の数も予想以上ですべてを記録することはできませんでしたので、ほ乳類と、カメを中心としたは虫類をできるだけ見てきました。
 下に、会場で見かけたおもな動物たちをあげますが、一番高額で取引されていたのはシロガオサキの雄で、1匹320万円でした。

・ほ乳類:シロガオサキ、インドタテガミヤマアラシ、コモンマーモセット、キンクロライオンタマリン、リスザル、ピグミースローロリス、アカハナグマ、ミーアキャット、プレーリードッグ、メガネヤマネ、コモンツパイ、インドオオリス、ホワイトシマリス、イングリッシュアンゴララビット、ハリネズミ、フクロモモンガ、ロボロフスキーハムスター、デマレフルーツバット
・カメ:ナミビアヒョウモン、チュリーヘッドアカアシ、ホールスフィールド、ベルセオレガメ、ビルマホシガメ、キンバリーアカミミマゲクビガメ、アルバーティスマゲクビガメ、アカミミガメ、ヨツメイシガメ、ヒジリガメ、ノコヘリハコヨコクビガメ、マダガスカルヌマヨコクビガメ、フチドリニシキガメ、ギリシャリクガメ、ソマリアリクガメ、ロシアリクガメ、マルギナータリクガメ、ニホンイシガメ、セマルハコガメ、モエギハコガメ、クロハラモエギハコガメ、マタマタ
・カメ以外のは虫類:カールシュミット、エルドラドギャリワスプ、クラブテールイグアナ、クラカケカベヤモリ、マツカサヤモリ、ニシキビロードヤモリ、パンサーノシベ、ニホンイモリ、ゲイリートゲオアガマ、ボールパイソン、オレゴンレッドスポットガータースネイク、フロリダブルーガーター、アネリケニアスナボア、サイエリキングスネーク、ラフグリーンスネーク、アイゾメヤドク、サマージー、クリストパルレッド、シュレーゲルアオガエル、モリアオガエル、ミヤコヒキガエル

注:会場にて販売されていた動物の名前をそのまま記録していますので、標準和名とは限りません。

・東京レプタイルズワールド2013のギャラリーで会場の様子や販売されていた動物の写真が見られます。

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熱気にあふれる会場の様子

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小さなケースに入れられ所狭しと並べられる動物たち

●CITES附属書に記載される動物たち
 会場で販売されていた動物たちの中には、すでにCITES附属書に記載され、取引が規制されている動物に加えて、CITES CoP16で新たに記載された種や評価が見直され、6月12日以降に追加される種なども含まれていました。また、CITES附属書Ⅰに記載され、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令」(種の保存法)で国際希少野生動植物種に指定されている種については、きちんと希少野生動植物種登録票がケージの前に提示してありました。

 たとえば国際希少野生動植物種であるスローロリスは、1頭が65万円~80万円で販売され、規制適用日以前に取得された個体となっていました。同じく国際希少野生動植物種のキンクロライオンタマリンも販売されていましたが、こちらは国内繁殖の個体で、マイクロチップも入れられていました。また、CITESの附属書Ⅱに記載されるヤドクガエルの仲間、そしてヒジリガメやリクガメ科のカメ達は比較的安価で、かなりの数が販売されていました。

 また、CITES CoP16で提案され、6月12日から国際希少野生動植物種として国内でも取引が規制されるようになるビルマホシガメや、同じくCITES CoP16で提案され、商業目的の野生標本の割当量を0(ゼロ)とすると規制が強化されたモエギハコガメも、数個対販売されていました。

参考1:トラフィックイーストアジアジャパン ワシントン条約の対象種(附属書)動物一覧表 (2012/9/25 現在)

参考2:トラフィックイーストアジアジャパン 第16回ワシントン条約締約国会議 附属書改正提案に関する結果一覧

参考3:環境省報道発表資料「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律施行令の一部を改正する政令」の公布について(お知らせ)

●売買される日本の野生動物
 会場でおもに見られた野生動物のリストですでに挙げましたが、日本の野生動物も会場で販売されていました。

 とくに、CITES CoP16で附属書Ⅱに記載されるようになったニホンイシガメは、会場で小さなカメがバケツに大量に入れられ、1匹2,800円で売られていました。
 そのほか、モリアオガエルが1,300円、シュレーゲルアオガエルは500円、大東島産とされるミヤコヒキガエルが3,800円で売られていました。

 また、会場では日本だけでなく海外にも生息しているコノハズクやチョウゲンボウなどの猛禽類も販売されていました。天然記念物のセマルハコガメも含めて、おそらくこれらは海外で捕獲されて日本に持ち込まれたものと考えられますが、野生では双眼鏡で遠くでしか見られない猛禽類が、ケージの外の止まり木でおとなしく座っているところには、たくさんの人だかりができ、多くの人が写真を撮っていました。

 これらの動物たちは、現在でも環境の変化や外来生物の影響などで地域によっては個体数が減少しているところもあります。
 ペットとして買えば、こんなかわいい動物たちが毎日家で待っている生活が訪れるという誘惑は、動物好きにとっては本当に抗いがたい誘惑です。
 しかしこれらの動物たちを買うことは、もし日本の野生動物でなかったとしても、海外の野生動物達を捕まえ、危機にさらす大きな要因の一つになっているのです。
 今後ペットとして、これ以上多くの動物たちが売買されるようになったりしないことを願わずにいられません。

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イシガメのバケツ売り

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チョウゲンボウの仲間

廣瀬光子 JWCSスタッフ

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