種の保存法改正パブリックコメントに海外からも
環境省は種の保存法改正のための答申案に対し、パブリックコメントを募集し、その結果が1月30日の中央環境審議会自然環境部会野生生物小委員会で公表されました。
●海外の団体も意見を提出
●日本政府は象牙の国内市場閉鎖はしないという立場
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
議題84は「象牙取引再開のための意思決定メカニズム」の提案です。
象牙取引再開するための生息国・輸入国双方の条件を挙げたものですが、今回の会議で決議できるように最終合意を取っておく必要がありましたができませんでした。
そのままならタイムアウトしてしまう議題でしたが、常設委員会がこの議題の議論を続けるかどうか、締約国会議で合意を取ってはどうかとのレポートがでていました。(Doc. 84.1)
この「象牙取引再開のための意思決定メカニズム」を不要という提案が、ベニン、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、チャド、エチオピア、ケニア、ニジェール、セネガルから提出されました(Doc. 84.2)。
それに対し、ナミビア、南ア、ジンバブエが取引再開の条件を提案をしていました。(Doc. 84.3)
最初の投票で、取引再開のシステムはいらないという提案(Doc. 84.2)は、僅差で否決されました。
日本は反対していました。
次に南アフリカ共和国などの案です。日本を含む14か国が秘密投票に賛成しました。
結果は賛成21、反対76、棄権13の大差で否決されました。
相反する結果のため「議論を続けるかどうか」(Doc. 84.1)という常設委員会からの提案で投票が行われました。EUはEUとしてではなく、各国がそれぞれの意見で投票しました。
つまり、「Yes 緑」は次回の締約国会議でも議論する
「No 赤」もうこの議題は終了する
結果は賛成21、棄権13、反対76で圧倒的に議題の終了が支持されました。
日本はYesでした。
象牙取引再開に関する議題は、ワーキンググループで議論中の「象牙国内市場閉鎖」と、28日以降に予定されている附属書提案の議論の中で、南部アフリカの個体群を国際商業取引禁止の附属書Ⅰにするか、それともⅡのままで取引を再開しやすく改定するかが残っています。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
1.モーション(motion) とは
国際自然保護連合(IUCN)の4年に1度の総会にあたる世界自然保護会議(WCC)が9月1日~10日、ハワイで開催されました。WCCでは、IUCNとしての意見を5団体以上の会員が動議として提出し(モーション)、議論ののち投票で採択します。過去に開催されたWCCでは、たくさんのモーションが提出されて会議に時間がかかったため、今回からは事前にオンライン会議を行い、議論がまとまったモーションは電子投票し、意見が割れたモーションはWCCで議論をすることになりました。
WCCで議論することになったモーションの一つが「象牙の国内市場の閉鎖」です(英文)。この動議は9月24日から開催されるワシントン条約第17回締約国会議(CITES CoP17)に提出された同様の議題(日本語)について、IUCNとしての意見を決めるという意味を持っています。
2.投票までの経緯
9月3日にはWCC会場で記者会見がありました。18か国のサバンナを空撮と地上での調査を行い、精度の高いゾウの個体数を明らかにした「グレート エレファント センサス」についてです。2007年から2014年の間にサバンナゾウの生息数は30%減少(144,000頭減)、そしておもに密猟により年間8%のスピードで減少していることが報告されました。(報告書 英語)
この日は、WWFはCoP17に向け、国際象牙取引再開を支持しない、強く象牙の消費を阻止する、そして象牙国内市場の閉鎖を支持すると表明しました。
WWF does not support the resumption of international ivory trade, strongly discourages ivory consumption and supports the closure of all domestic ivory markets.
(英語)
しかしながら、MIKE(ゾウ違法捕殺監視システム)とETIS(ゾウ取引情報システム)の分析からは2008年(アフリカで競売があった年)の「一度限りの象牙取引(one-off sale)」によって密猟が増加したという結果は出ていないと述べています。
「一度限りの象牙取引」は、1989年のCITES CoP7でアフリカゾウが附属書Ⅰになり、象牙の国際商取引が禁止された後、2回行われました。1999年に附属書Ⅱに格下げしたボツワナ、ナミビア、ジンバブエからの象牙を日本が輸入、そして2009年(入荷した年)に南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエからの象牙を日本と中国が輸入しました。(CITES事務局 英語)
2008年に象牙取引再開が決定したころから、アフリカの国立公園での密猟のニュースが目立つようになりました。(2010年1月14日付JWCSのブログ 日本語)
2008年の象牙取引再開が密猟激増の引き金になったと主張する研究者もいます。
(英語)
その後ゾウの密猟は増え続け、2012年にピークになり、その後も高止まりしていました。
(『消えゆくゾウたち アフリカゾウの危機』UNEP CITES IUCN TRAFFIC 2013 日本語)
また2012年には密猟された象牙と武装組織の資金源のつながりが国連安全保障理事会で議論されました。(CITES事務局 英語 )
そして密猟、密輸は国際的な犯罪組織の資金源として成長しているとして、野生生物犯罪へ国際社会が取り組む必要性が理解されるようになりました。
とくに象牙取引は野生生物犯罪の中でも規模が大きいので、世界各地で象牙を燃やすなどして象牙の需要を否定するイベントがありました。そして2015年9月25日の米中首脳会談でオバマ大統領と習近平主席は「中国国内の象牙市場の閉鎖」に合意しました。(日本語)
これらの国際社会の取り組みは、前述のCoP17の提案文書で述べられています。
3.コンタクトグループ
このような世界の流れの中で、WCCのモーション・象牙国内市場の閉鎖に対し、日本政府は会議前のオンライン会議で何度も反対意見を述べていました。そしてWCCの会期中に、投票にかけるモーションの文章を話し合うため、関心のある会員が集まって議論するコンタクトグループが2回開かれました。そこでは国内市場閉鎖に賛成する会員が圧倒的多数で、日本政府は少数派の意見が反映されないと退席した後、モーションの文章が決定しました。しかし翌9日の投票前に日本政府とナミビア政府から異議申し立てがあり、決議委員会での検討ののち、もう一度コンタクトグループを開催する提案が総会に出されました。
そしてその日深夜に及ぶコンタクトグループによる議論が行われました。その席でコンタクトグループの議長は、前回WCCのクマ牧場のモーションは意見が割れ、最終的にはモーションは議決されたがいくつかの大切な会員のサポートを失った、できる限りコンセンサスに達することが大切と述べていました。このクマ牧場のモーションはJWCSも共同提案者でした。クマ牧場とは漢方薬の原料にする胆汁をとるために、体にチューブを差し込んでオリの中でクマを飼う施設です。クマが死にやすいため補充のため野生のクマが捕獲され、野生の個体群に影響するのでやめるべきだという内容です。このモーションは中国が強く反対し、多くの修正がされて決議されました。
象牙の国内市場閉鎖についての日本政府の主張は、日本の制度は完璧なので密輸象牙は国内に入ってきていない、そのような合法な取引までも閉鎖しなければならないのはおかしいというものです。国内市場閉鎖賛成派の主張は、ゾウの密猟を止めることが目的であり、象牙が違法か合法かを識別する技術は確立していないというものです。
(コンタクトグループでの発言は出席者によるメモを参照)
4.投票
翌日10日はWCCの最終日でした。7日のコンタクトグループでまとまった原案と、9日夜つくられた日本・ナミビア案の両方が投票にかけられました。原案のタイトルは「象牙国内市場の閉鎖(Closure )」に対して、日本・ナミビア案は「さらなる規制の努力(Making further Efforts to Regulate)」でした。
会議は対案のあるパラグラフを原案、日本・ナミビア案の両方を説明してから投票する、という少数意見に最大限配慮した進行となりました。それでもどのパラグラフでも圧倒的に原案が支持され、閉会時間が迫る中、原案がそのまま採択されました。
投票は、NGOの9割以上が原案に賛成、政府等も約6割が原案に賛成、3割が棄権、1割が日本・ナミビア案に賛成という結果でした。
(投票結果の写真 NACS-J提供)
5.世界が象牙取引禁止に動く中、日本は
(1)「適正な取引」が信用されていない
WCCの投票で、少数意見を尊重した議事進行をしても、象牙国内市場閉鎖が圧倒的に支持されていることが世界に示されました。そして日本と南部アフリカ諸国の政府が、この問題に対しどのような態度を取るのか、注目されるようになりました。
日本政府の方針は「適正な取引推進」です。今年5月と7月に「適正な象牙取引の推進に関する官民協議会」を開催し、9月に報告書が公開されました。協議会に参加しているのは、日本象牙美術工芸組合連合会、全日本印章業協会、全国印判用品商工連合会、そして海外のNGOにより印鑑など象牙製品の通販の問題点が指摘された楽天とYahoo!等です。
報告書には、違法行為に対する厳正な対処(立入検査の強化、行政処分の実施・公表等)、業界への周知、中国関税当局との情報交換などの対策が並んでいます。
(報告書 日本語)
ところが、日本政府がコンタクトグループで「日本の制度は完璧」と発言した6日後、国内での象牙の違法取引で摘発がありました。都内の女性が、規制前の1972年に夫が香港から買ってきた象牙を古物商に持ち込み、それをインターネットオークションから中国籍男性が購入したという事件です。関係者5人が書類送検されました。
「警視庁、象牙の無登録売買摘発 ネット取引急増、抜け道に」東京新聞2016.9.16 (リンク切れの場合はご容赦ください)
また6月に開催された種の保存法の見直しを検討する「あり方検討会」では、ワシントン条約附属書Ⅰの登録業務を国から委託されている自然環境研究センターが、現在の制度の問題点を報告しています。あり方検討会の委員からは「そのような後ろ向きなことでは困る」との発言がありましたが、制度の見直しにあたって登録や法執行の現場の困難さが反映されていないと感じます。
検討会配布資料「登録・認定機関としての業務内容について」自然環境研究センター
WCCのコンタクトグループの議論で、米国からの参加者は「どの政府にも違法取引がある。(違法、合法を判別する)技術が確立していないので今は使えない。合法市場なんて作れない」、中国外務省職員は「中国国内で違法取引があるのは確か」と発言していました。
現状を直視せず、合法市場があると主張する日本政府の主張が信頼されていないことが、WCCの投票や議論で明らかになりました。
(2)象牙取引が引き起こす問題の大きさが理解されていない
ゾウの密猟、象牙の違法取引が武装勢力の資金源になるため、ゾウを観光に活かしたいアフリカの国にとって治安の悪化、ゾウの減少は大問題です。「アフリカゾウ連合」にはアフリカ諸国29か国が加盟しています。
武力で武装勢力を抑えるには多くの資金が必要です。密猟者との銃撃戦でレンジャーが亡くなることもあります。しかし世界のすべての国で象牙の売買ができなくなれば、象牙は取引する価値がなくなります。
また前述の「グレート エレファント センサス」で深刻なアフリカゾウの減少は明らかです。象牙国内市場閉鎖に強く反対したナミビアは、民間の助成による調査にもかかわらず、調査データの公開を拒んだため表記されていません。図で見るようにかつては大陸に広く分布していたサバンナゾウの生息地は島状です。
Great Elephant Census Final Results
官民会議の報告書には「現在、アフリカゾウの多くはアフリカ東部及び南部に生息しており、特にアフリカ南部での個体数は安定し高水準を維持している」と書かれていますが、どの状態を基準に「高水準」と言っているのか疑問です。
ゾウにGPS発信機を付けた調査では、ゾウが安全なボツワナに集まっていることが明らかにされました。
現時点では象牙の国際商取引はワシントン条約により禁止されていますが、地域社会の収入のために高額で狩猟を認めている例があります。しかし汚職などで理想的な運営はされていないことをナショナルジオグラフィック誌が報告しています。 (2015年11月17日 英語)
日本国民はそんなにも象牙を欲しがっているのでしょうか。国民主権ということにはなっていますが、外交に民意が反映されていないと感じます。
(鈴木希理恵 JWCS事務局長)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
アフリカから緊急メッセージ(1) 西原智昭(WCSコンゴ共和国・JWCS理事)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント