動物テレビ番組

2013年4月14日 (日)

なんでも鑑定団を見て「サイの角で一攫千金とはうらやましい…」と思う 前に

●ワシントン条約の国内法「種の保存法」罰則強化へ
ワシントン条約締約国会議(CITES CoP16)が終わって間もなくの3月26日、環境省中央環境審議会を傍聴しました。
そこでは、ワシントン条約を国内で対応する「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物種の保存に関する法律)」の改正案について諮問がありました。
 改正点は、高額で取引される希少野生動植物種に対して罰則が軽いため重くすること、規制されている販売目的の陳列にインターネットも含めることでした。
 「種の保存法」は国内希少野生動植物種と、ワシントン条約附属書Ⅰに掲載されている国際希少野生動植物種を対象としています。

●「なんでも鑑定団」で紹介されたサイの角を売ったら?
テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」2013年2月12日放送で、漢方薬「鳥犀角(インドサイの角)」に500万円の鑑定結果が示されました。
ワシントン条約適用前の約100年前に入手したとのことですが、これを販売しようとした場合は(財)自然環境研究センターに登録をしなければなりません。登録には「登録するものの入手経緯を証明する書類等」が必要です。また販売目的の陳列には登録票を備える必要があり、譲り渡すときは登録票も渡し、譲り受けたものは30日以内に届け出が必要です。
 
参考:環境省HP 国際希少野生動植物種の登録について
この手続きを行わなかったり、偽りがあると罰せられます。その罰則が今国会に提出される種の保存法改正で強化されます。

譲り渡しの違反行為の罰金は、個人で最高500万円、法人では1億円に引き上げられます。
法律案要綱
●高価な角がサイを絶滅の危機に
こんなにも高値が付くため、サイは絶滅の危機にあります。
インドサイは現在インドとネパールに生息し、バングラディシュとブータンでは絶滅してしまいました。2007年5月時点で2,575頭と推定され、インドでは厳格に保護されています。
ジャワサイは絶滅寸前(CR)で推定50頭前後(CITES CoP16のドキュメントでは35-45頭)になってしまいました。
アフリカのサイの生息数はシロサイが20,165頭、クロサイが4,880頭と推定されています。アフリカの野生のサイの83%、世界の野生のサイの73%が南アフリカに生息しています。

(2010年12月31日時点 IUCNアフリカサイ専門家グループ CoP16-54-02 Rev.1 p.16)
その南アフリカで密猟が増加していることがCITES CoP16でも報告されています。(CoP16-54-02 Rev.1 p.4)


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<南アフリカでの密猟数>
2007年  13頭
2008年  83頭
2009年  122頭
2010年  330頭
2011年  448頭
2012年   445頭(10月16日時点)


サイは角を漢方薬として使うために密猟され、中国やベトナムなどアジアに密輸されます。中国、ケニア、南アフリカ、ベトナム政府は取り締まりを強化していますが、国際的な犯罪組織の存在やチェコ共和国・ベトナムが法の抜け穴になっていることなどがCITES CoP16で報告されています。

お宝鑑定を見て「サイの角で一攫千金とはうらやましい…」と思う前に、サイの保護と犯罪組織の取り締まりに国際社会が協力していることも知っていただきたいです。

参考:国連TVとCITES事務局が作成した動画「危機の下のサイ」
鈴木希理恵 JWCS理事               ( 写真:インドサイ いしいひでヲ)

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2009年4月21日 (火)

連載TV評 『ダーウィンがきた!』のオオタカ

   『ダーウィンが来た!生き物新伝説』

   第145回 オオタカ 街で驚きハンティング

 2009年4月19日、NHKの『ダーウィンが来た』のオオタカを見ました。地味ながらすばらしい貴重な映像だったのではないかと、素人ながら感じました。水辺でカラスを襲って捕られる姿に魅せられました。と同時に、都市に近いところでヒヨドリを追う姿を見て、このオオタカはどのようなオオタカなのか、判断に迷いました。

 私の知るオオタカは、鷹匠が飼育して狩猟に使っていた「家禽オオタカ」と野生世界に住む「野生オオタカ」の二つのタイプのものです。それは、動物園にいる「家畜ゾウ」とアフリカのサバンナに住む「野生ゾウ」に対応するものです。

 しかしこのオオタカはそのどちらでもありません。人間世界のなかで生活している動物でありながら、飼育しているわけではありません。家畜でもないし野生生物でもありません。「都市鳥」というのがいますが、これも不思議な存在です。家畜でもなく、野生動物でもありません。人間がつくったフェンスぎりぎりにヒヨドリを追い詰めるオオタカは都市鳥なのでしょうか。都市鳥としても、都市鳥は、家畜でもなく野生でもないとしたら、何なのでしょうか、という疑問が湧きます。

 前回取り上げましたアフリカの畑の雑草のスイカを食べるキリンも、同じような存在です。野生のサバンナに住むキリンでもなく、家畜として飼育しているキリンでもありません。もしこうした環境で生活するキリンが現われたことによってキリンの保全が可能だと考えたとしますと、野生のサバンナが開拓され縮小し、サバンナに住むキリンがいなくなっても、キリンは生き残ることになります。それでも生物多様性保全ができていると考えてよいのでしょうか。アフリカの人たちがすることです、多分よい知恵を出して広いサバンナが保全され、そこに住むキリンがいつまでも生存できるようにしてくれることでしょう。

 ひるがえってオオタカのことを考えますと、同じように都市のなかで生存可能だから、これまでオオタカが住んでいた森や林の保全は考えなくてもよいという考え方が生まれるとすると、野生のオオタカの生存について不安が出てきます。「代替環境」という言葉が頭に浮かびました。本来の野生の生息環境でなく、人為的につくられた環境でありながら、生物がそこで生きてゆける環境のことです。動物の適応性、生き方の幅の広さに感嘆します。

 もともと生物は、野生環境、人為環境の区別などしていません。そこで生きてゆけるかどうかが唯一の判断基準です。それに甘えてはいけないと思うのですが、つくづく人間の知恵と思いの単純さを痛感します。(JWCS副会長 岩田好宏)

関連サイト:http://www.nhk.or.jp/darwin/program/program145.html

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