2010年10月開催:生物多様性条約CoP10名古屋会議に向け準備進む 坂元雅行
2010年10月に名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(CoP10)に向け、同条約事務局は10月5日、各地域の代表を集めた初の会合をスペインのバルセロナで開き、今後の活動や交渉スケジュールを盛り込んだ「名古屋ロードマップ」をまとめた。
生物資源の商業化で得られた利益を特許として先進国が独占するのではなく、原産国と先進国が利益を公平に分け合うルール作りも10年が交渉期限。このため、会議までに計6回の専門家会合や作業部会を開催し、溝が大きい先進国と発展途上国間の合意形成を目指す。
(中日新聞 2008年10月6日(共同通信 配信))
2年後に日本で初の開催となるCoP10に向け、条約事務局、ホスト国である日本などを中心に準備が急速に進んでいる。条約の議題は多岐にわたるが、生物多様性のもたらす利益へのアクセスとその配分(ABS = Access and Benefit Sharing)はCoP10最大の課題といわれている。野生生物の保全に直接かかわるテーマとしては、保護地域制度などがある。こうしたレールの敷かれた議題とは別に、ホスト国日本はどのようなカラーを出していくのだろうか。
9月13日に名古屋で開催され、環境大臣が議長を務めた「第16回アジア太平洋環境会議(エコアジア2008)」では、「生物多様性」をメインテーマとした議論が行われた。日本にとっては、CoP10の議長国としてのリーダーシップを地域でアピールする場という意味がある。ここで生物多様性の保全と持続可能な利用の「アジアのモデル」として日本政府が提案したのが「SATOYAMAイニシアティブ」である。里山が、農林業生産と密接に結びついた水田や二次林などの人手の加わった二次的自然環境を維持・再生する日本の智恵と強調する。
里山を含めて農村地域には特有の生態系が形成されている。それは遺存種を含む少なからぬ絶滅危惧種のシェルターとしての機能も果たしている。しかし、森林や草地の農地化、農村の形成は、在来の野生生物の生息地を消失させ、あるいは生息環境を改変した。農村の生態系は人為的なものであり、自然生態系とは異なるものである。アジア地域では、熱帯雨林やマングローブ林などの海岸環境など自然生態系の改変が激しく進行している。農村生態系のあり方を考える上で里山を紹介することはよいと思うが、アジア地域の生物多様性保全全体において中心におかれるべきテーマではない。CoP10では生物多様性喪失を顕著に減少させるための2010年目標期間が終了、次の目標が立てられることになるが、この点には留意される必要があると考える。
(さかもとまさゆき/JWCS事務局長・弁護士)
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