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2017年11月 2日 (木)

水産業のIT化・国際基準とウナギ

2017年10月27日、日経エコロジー主催の「東京サステナブルシーフードシンポジウム魚から考える日本の挑戦2017」に参加しました。

●拡大する水産業関連ビジネス

 2012年のロンドンオリンピックでは、持続可能な漁業による水産物を提供するためサスティナブルシーフードの調達基準がありました。日本でも2020年開催予定の東京オリンピックを機に、水産業界を持続可能に変えていこうという動きがあります。そのためには漁業が持続可能であるかを科学的に検証し、証明する認証制度と、認証を受けた産物が水揚げから販売までを追跡可能にし、他の水産物とまぎれていないことを明らかにするトレーサビリティが必要になります。
 シンポジウムでは、サスティナブルシーフードの調達で、日本のトップランナーであるイオンや西友などの大手流通企業がその調達について報告していました。また、水産物のトレーサビリティをIT技術を使って確保することを業務とする企業やコンサルタント会社の事業紹介もありました。水産業はIT業界など他業種と関連し世界規模のビジネスとして、規模を拡大している様子がうかがえました。
 ちなみに世界の商業用漁船のリアルタイムの漁業活動は、Global Fishing Watchのウェブサイトから無料で見ることができます。つまり禁漁区での操業も常に監視されているのです。
 

●国際基準をビジネスチャンスととらえる

サスティナブルシーフード調達のトップランナー企業は、日本独自の認証制度よりも、認証機関を第三者が検証しているより厳しい国際基準の認証制度を採用しているそうです。厳しい国際基準を外国からの押しつけととらえるのではなく、ビジネスチャンスとして積極的に取り入れているところは、行政との違いが鮮明です。
またその国際基準でのビジネスのために、最新の情報技術を使ったシステムが導入され、すぐに情報が共有されるところに行政への届け出などとの落差を感じました。

●漁業者のスマホ入力から始まる水産流通

 シンポジウムの昼休み中に漁業報告ツール「テレキャプシェ」の紹介とヨーロッパで活動するSustainable Eel Groupのミニセッションがありました。
 この漁業報告ツールは、漁業者がスマートフォンなどで漁獲を報告すると、そのデータを水産バイヤーが必要とするデータの形ににしてバイヤーに提供したり、漁業当局が漁獲上限を超えていないかチェックしたりすることに使うのだそうです。フランスと英国では4年前に導入され、何千もの漁業者が使っているといいます。統計や科学調査がなければ持続可能な漁業への転換はできません。でもこのようなシステムが日本の漁業政策に取り入れられるのはいつになるのかそれよりも世界の速度で変化するビジネスセクターや、水産業に力を入れる自治体が先行して導入する方が可能性は高いかもしれないと思いました。


●絶滅危惧種のヨーロッパウナギ

 次にヨーロッパウナギの保護の取り組みの紹介がありました。ヨーロッパウナギはIUCNのレッドリストで絶滅危惧種(CR)にリストアップされています。ワシントン条約では輸出に許可が必要な附属書Ⅱに記載されており、とくにEUは輸出割り当てがゼロなので輸出をしていません。Sustainable Eel Groupは、絶滅危惧種のヨーロッパウナギを食べるべきではないという意見と、密漁してでも食べたいという意見の対立を解決するために、研究者、業者、NGOにより設立されたそうです。セッションでは、ノルウェーでの小規模の水力発電所に魚道をつけて発電用タービンでウナギが切られるのを防ぐ事業や、オランダでのウナギの売り上げからファンドに寄付するしくみなどを紹介していました。
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写真 シンポジウム会場でのSustainable Eel Groupブース

●ニホンウナギは?

 ニホンウナギはIUCNのレッドリストで、ヨーロッパウナギよりは1ランク低いものの絶滅危惧種(EN)にリストアップされています。そして2016年のワシントン条約第17回締約国会議(CoP17)で、ウナギ属の生息と取引の状況を調査するという決定がなされました。折しも10月30日付の朝日新聞で「日本の輸入天然水産物 2割超が違法や不適切漁業と推計」とカナダのブリティッシュコロンビア大学の調査が紹介されていました。問題のある輸入が最も多かったのが中国からの輸入で、その中でもウナギが最も多かったと報道しています。
 絶滅のおそれのない範囲の国際取引であるかどうかを判断するための情報を得る技術は、このシンポジウムで紹介された数々の事例をみると、今後ますます充実していくと思われます。今後ニホンウナギがワシントン条約附属書Ⅱに掲載された場合、日本政府はその決定を受け入れ、トレーサビリティ技術に基づく制度を導入するのか、またはこれまでサメなど漁業対象種を留保してきたように、ニホンウナギも留保して国としては取り組まず、国際基準で事業を行う企業が自主的に条約順守に取り組むことになるのか、日本の漁業の方向性を示す象徴的な判断になるかもしれません。
朝日新聞デジタル版(リンク切れはご容赦ください)
(鈴木希理恵 JWCS)

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