CITES17 日本に関係の深い議題
ワシントン条約第17回締約国会議(CITES CoP17)でJWCSは日本に関係の深い以下のテーマに注目しています。
1.アフリカゾウ 国内市場閉鎖と附属書アップリスト
今回の会議では、議題として象牙の国内市場閉鎖と、すべてのアフリカゾウを附属書Ⅰ(国際商取引禁止)に戻す提案が出されています。一方で現在附属書Ⅱ(許可があれば取引できる)になっている南部アフリカの地域個体群のうち、ジンバブエとナミビアが自国の個体群に関する注釈を削除するという、取引再開に向けた提案をしています
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附属書に関する提案はこれまでの条約運営の枠組みの中ですが、象牙国内市場の閉鎖となると、これまでのアフリカゾウに関する過去の決定の変更が必要になります。そのことが象牙国内市場の閉鎖の提案の後につけられた事務局からのコメントに書かれています。
ワシントン条約43年の歴史の中で常に象牙問題が議論されてきましたが、すべての国際取引が禁止されていた時期を除き、アフリカゾウは減少の一途です。この現状を変える新たな展開になるのか、注目されます。
2.ウナギ
アジアに生息するニホンウナギの漁獲が減少し、代わって中国でのヨーロッパウナギの養殖が拡大しました。そのため2007年にヨーロッパウナギがワシントン条約附属書Ⅱに掲載され、EUでは河川環境の改善など生息数を増やす努力をしてきましたが、生息数の減少が続いたため、2010年に輸出割り当てゼロという事実上の輸出禁止措置をとりました。
その後、アメリカウナギや熱帯ウナギ(ビカーラ種)の漁獲が急増しました。1種だけを国際取引を禁止しても近縁種が減少してしまうので、その対策として淡水ウナギ16種の調査をしよう、というのが今回の案です。9月20日のみなと新聞には水産庁の「賛成する可能性がある」とのコメントが掲載されていました。
その後、アメリカウナギや熱帯ウナギ(ビカーラ種)の漁獲が急増しました。1種だけを国際取引を禁止しても近縁種が減少してしまうので、その対策として淡水ウナギ16種の調査をしよう、というのが今回の案です。9月20日のみなと新聞には水産庁の「賛成する可能性がある」とのコメントが掲載されていました。
3.サメ
クロトガリザメ、オナガザメ類の附属書Ⅱ掲載が提案されています。日本のサメ漁はヨシキリザメが多く(7,151トン)、提案されている2種の水揚げ量はクロトガリザメ(2トン、おもに混獲による)とオナガザメ類(170トン)です。どちらのサメも漁獲量は減少しています(「水産庁調査委託事業で収集された主要港におけるさめ類種別水揚量」2014年データ)。
またワシントン条約は国際取引を規制するものなので、国内での消費は対象外です。そして附属書Ⅱの場合は原産国の許可があれば取引できます。みなと新聞によると日本政府は「資源状態が悪いというデータがない」ため提案に反対する方針とのことです。
『平成27年度国際漁業資源の現況』は、クロトガリザメの資源水準を低位(中西部太平洋)、資源の動向を減少(中西部太平洋)と評価しています。またオナガザメについては調査中としています。
提案書に書かれた生息状況のデータに対し、日本の主張がどのように受け取られるのか注目されます。
4.ペットトレード(爬虫類・ヨウム)
附属書掲載の提案として、ペットとして取引される爬虫類、両生類がいくつも挙げられています。中でもマレーシアが附属書Ⅰ掲載を提案したミミナシオオトカゲは、生息地では捕獲や売買が禁止されているにもかかわらず、日本で販売されています。このことは、9月15日に開催された種の保存法の見直しを議論する「あり方検討会」でも話題に上りました。
現在の種の保存法では、附属書Ⅰの動植物は所有や売買に登録票です。しかしこの登録票と登録した個体が対応せず、違法に売買されていることが検討会の課題になっています。
附属書Ⅰに格上げが提案されたアフリカ原産のヨウムも日本で一羽24~30万円で売られています。しかしヨウムの生息地での密猟と違法取引を告発する動画から、1羽のヨウムが日本に売られてくるまでの間に、たくさんのヨウムが死んでいることが分かります。
現在の日本の法律に違反していなくても、生息地や取引過程などで数々の問題があります。このことを締約国会議の機会に理解を広げ、来年に予定されている種の保存法改正につなげていきたいと思います。
5.CITESと持続可能な生産・消費
このほかにJWCSが注目しているのが、持続可能な開発目標(SDGs)の一つ、「持続可能な生産・消費」に関連する議題です。CITESと生計、ブッシュミート、食糧の安全保障などの議題が挙がっています。
絶滅のおそれのある動植物の輸出に頼るくらしは「持続可能な生産」なのか、他に選択肢はないのか、消費者としての日本は生息地の状況を理解して消費行動をとっているのか、また野生動植物の減少に大きく影響する紛争と難民、人口増加などの問題と関連させた、持続可能な開発目標の枠組みでの対策はないか、など情報収集をする予定です。
会議期間中は、Twitter、Facebook、当ブログで随時報告します。
また10月14日にCITES参加報告会を行います。ぜひ直接話を聞きに来てください。
詳しくはJWCSホームページをご覧ください。
JWCSはワシントン条約締約国会議で議論されていることを国内に伝えるため、日本と関係の深い議題の一部を翻訳しています。翻訳はJWCSのホームページの「資料室」「国際会議資料」からご覧になれます。
翻訳は翻訳ボランティアの皆さんのご協力をいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。
(鈴木希理恵 JWCS事務局長)
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