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2016年2月 8日 (月)

スローロリスの不十分な登録管理は世界から丸見え

 2016年2月初め、国際自然保護連合(IUCN)の種の保存委員会(SSC)アジア霊長類専門家グループが発行する専門誌に、日本でのスローロリスの違法取引についての論文が掲載されました。
 この論文を書いたオックスフォードブルックス大学の大学院生(当時)とJWCSは、一緒に日本のペットショップを調査しました。論文では、展示販売しているペットショップだけでなく、インターネット広告や、飼い主個人が投稿した映像も調査しています。
 インターネットに掲載された情報は、世界のどこからでも見ることができ、また自動翻訳を使えば日本語も読むことができます。インターネットの世界では違法取引が疑われるスローロリスたちが公開されているのです。

●登録票に6年半前に取得したと書かれた未成年ロリスも
 論文のために調査した20のペットショップで74頭のスローロリスが売られており、その中にはスローロリス属の中で最も絶滅のおそれのあるジャワスローロリスも含まれていました。展示販売されていた18頭のスローロリスを詳しく調べてみると、大人のスローロリスが83%、未成年(赤ちゃんよりは大きい)のスローロリスが17%いました。18頭のスローロリスには、すべてスローロリスの国際取引が原則禁止になり国内取引に許可が必要になった2007年9月13日以前に取得したという登録票がついていました。スローロリスの寿命は15~25年ほどで、16~21カ月で性成熟します。未成年ロリスの販売は登録票の不正が疑われます。
 この登録票は財団法人自然環境研究センターが発行しています。2016年1月に象牙の不正登録を指南した件で新聞に大きく取り上げられ、環境省が指導をした団体です。
 2013年には死んだスローロリスの登録票が不正使用され、種の保存法違反で逮捕者が出た事件がありました。登録制度そのものを見直す必要があります。

●飼い主個人の投稿映像に違法入手が疑われるロリス
 自分のペットの映像をインターネットで公開する人は大勢います。その映像は世界どこででも見ることができます。論文では、日本から投稿されたスローロリスの動画を調査しています。その数、2007年5月から2014年7月までの投稿で93本、114個体。そのうち大人は63.2%、未成年が22.8%、赤ちゃんが14%でした。
 ワシントン条約に従って日本に輸入されたスローロリスは1999年が最後です。したがって高齢のスローロリス以外は日本生まれのはずです。スローロリスは飼育繁殖が難しい動物なのに、なぜ日本には今も若いスローロリスが、商品になるほどたくさんいるのでしょうか。

●日本の不十分な規制が世界のロリスを守る努力に水を差す
 スローロリスの保護を行っている団体に、オックスフォードブルックス大学の研究者を中心に生息地での活動をしている「リトル ファイヤーフェイス プロジェクト」があります。この団体は保護のための研究や救護のほか、生息地での環境教育や購入者に向けた啓発活動を行っています。
 また野生生物の違法取引は国際的な犯罪組織の資金源や汚職の温床となっているため、インターポールや世界の税関は取り締まりに力を入れています。
 こうした努力も日本の規制が不十分では実りません。スローロリスは日本では高いものでは1頭100万円もの値がつくので、不十分な制度の隙をついて儲けようとする人もいるでしょう。

●インターネットで世界からは丸見え
 個人の飼い主がインターネットに投稿した違法が疑われる映像は、海外からでも見ることができます。象牙の場合は覆面調査で自然環境研究センターによる違法指南が明らかになりました。しかしスローロリスの場合は、飼育者が同センターに登録申請したときにどのような対応だったのかなどを個人のブログなどに書いているので、誰でも知ることがで きます。
 そのようなスローロリスの飼育日記や動画の投稿のなかには、スローロリスの野生での生態からみると虐待に等しいものがあります。例えば夜行性なのに昼間に連れ出したり、野生では樹脂や昆虫を食べているのに人間の食べ物を与えたりすることです。両手を上げる威嚇の動作をかわいいとコメントして投稿しているものもあります。このような動物福祉の面で問題のある映像が、日本から多く投稿されていることも海外から問題視されています。
 スローロリスを守る取り組みは、生息地での保護活動、密猟・密輸の摘発、消費国・日本での規制がひとつながりになって効果が現れます。日本でのワシントン条約対象動物の規制の強化、野生動物をペットにすることの教育普及が必要です。

                                  (鈴木希理恵 JWCS事務局長)

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