ペットや生餌の輸入について外来種問題からのガイダンス
COP12で採択された議題の一つとして、ペットや観賞用生物、生餌、食べ物の輸入について、外来種問題対策のためのガイドラインが策定されました。
輸入されたペットや観賞用生物や生餌を、野外に放したり、逃げたりするリスクを考慮してのガイドラインです。日本でもアライグマやミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)のようにペットとして輸入された動物が野外に広がり、その対策に苦慮している例が多々あります。
例)認定NPO法人 生態工房による外来生物防除活動
今回採択された最終文書で3つの点に注目しました。
「ホワイトリスト」方式の推進
「ホワイトリスト」方式の推進
一つはガイダンス20段落の「輸入が安全であることが示されない限り、生物多様性への潜在的な危険があると分類される」です。現在の日本の外来生物法はリストアップされた種が規制対象になる「ブラックリスト」方式です。一方このガイダンスでは、「安全が確認されたもの以外はリスクがある」としていて「ホワイトリスト」方式になっています。
日本の外来生物法について複数の自然保護団体から「ブラックリスト」では、リスト外の生物が輸入されて新たな脅威になるので、「ホワイトリスト」方式にすべきだという意見が出されていました。COP12で採択されたガイダンスはこの意見を後押しすることになります。
CITESとの連携
CITESとの連携
二つめは本文4段落のワシントン条約(CITES)との協力です。CITESが絶滅のおそれのある野生動植物種だけでなく、外来種問題に関しても調査方法やリスク対処などでCBD事務局と協力するとあります。条約間や国連機関の間での協力が進められていることを前回の記事で書きましたが、その一環で各条約の役割が広がっています。
輸入する生物の学名などを表示
輸入する生物の学名などを表示
そして最後に、ガイダンスの19段落に、「すべてのペットや観賞用生物、生餌などの輸入販売品は、学名など分類情報を明確に示すべき」としています。
、CITES対象種を合法に所持するには「登録票」が必要なのですが、そこに表示される種名は、スローロリスを規制適用前に取得した個体の申請の場合は「属」のレベルまででよいとされています。JWCSが調査したスローロリスの違法取引問題では、大まかな表記が不正取引の温床になっていました。
今後、このガイダンスに従って輸入されるペットに学名が表示されることになれば、適正な法執行にも役立ちます。
、CITES対象種を合法に所持するには「登録票」が必要なのですが、そこに表示される種名は、スローロリスを規制適用前に取得した個体の申請の場合は「属」のレベルまででよいとされています。JWCSが調査したスローロリスの違法取引問題では、大まかな表記が不正取引の温床になっていました。
今後、このガイダンスに従って輸入されるペットに学名が表示されることになれば、適正な法執行にも役立ちます。
ちなみに最新の研究によりスローロリスは8種に分類されていますが、日本では4種の分類を採用しており、登録票にいたっては「スローロリス」と「ピグミースローロリス」の2種の表記しか見かけませんでした。
COP12の結果を受け、国内での取り組みが進むことを期待しています。
最終文書
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コメント
スローロリスの件に関しては、いろいろ間違っているとおもいます。
まず、登録票は合法に輸入された事の証明書ではありません。
あくまで、登録要件を満たしたとして登録されていることの証明書で、似て非なるものです。
また、個体登録制度は、個体ごとの識別ができないものを個体ごとに登録していることが問題なのです。
種類ごとではなく個体ごとの分類ができなければ、不正取引はできてしまうので、種類ごとの記載は、ほとんど何の意味もありません。
投稿: | 2014年11月11日 (火) 20時58分
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、登録票は登録要件を満たしたものに発行されるというのが正確です。訂正します。
スローロリス類はワシントン条約附属書Ⅰとして扱われる2007年9月13日以前も輸入には許可が必要な動物でしたが、2000年以降にCITESデータベースに報告された日本の輸入は2011年の毛の輸入だけでした。つまりその間ワシントン条約の手続きに従った生体の輸入はなかったということです。そして現在の登録票には2007年9月13日以前に取得した個体であるか、またはその個体の繁殖個体であることが記載されています。
しかし2007年9月13日以前に取得したと登録した個体については、それが密輸の疑いがあっても現在の日本の法律では刑事事件として違法とできないのです。そのことを簡潔に伝えたいと思い、記載の表現になってしまいました。
また個体識別と種の識別についてですが、おっしゃる通り個体と登録票が一致することが一番重要です。当会では2014年5月に「種の保存法施行規則等の改正案に関する意見」としてその点を指摘した意見を環境省に届けました。
http://www.jwcs.org/data/JSCS2014-2.pdf
ただ、法執行や販売の現状を見てみると、種の識別が国内外の犯罪捜査の手掛かりになるケースがあります。正確な種の識別も含め、違法取引を許さない制度へ改正すべきと考えています。
投稿: JWCS鈴木 | 2014年11月12日 (水) 12時06分