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2014年5月28日 (水)

スローロリス保全行動計画の策定に協力

スローロリスの脅威は森林伐採と密猟


 スローロリスは東南アジアの森林に生息する夜行性のサルです。森林伐採や密猟のため絶滅のおそれがあります。そこで2007年9月13日からはワシントン条約で国際取引が原則禁止になりました。しかし生息地の違法伐採や密猟は続き、日本では今なおペットとして人気があります。
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(写真)撮影地:インドネシア

野生生物犯罪のもたらす不幸

 野生生物の密猟や密輸などの「野生生物犯罪」は、犯罪組織の資金源として大きなウエイトを占めるようになってきました。金額で比較すると、麻薬、偽ブランド、人身売買に次ぐ世界第4位の犯罪分野です。
 とくにアフリカでは、象牙の密輸がテロ組織の資金源になっていることが大きな問題になっています。4月、ナイジェリアで女子学生200人以上を誘拐した「ボコ・ハラム」もその一つと言われています。
 象牙を高値で買う人が世界のどこかにいる限り、ゾウの密猟は止まりません。
 そのため野生生物の生息国だけでなく、国際協力で野生生物犯罪の取締りを強化する動きが活発になっています。


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(写真)Tokyo Conference on Combating Wildlife Crime 2014年3月3日 国連大学 での報告

野生のスローロリスの保全と日本

 スローロリスの保全を国際的に取り組むため、国際自然保護連合(IUCN)の内部組織の一つである種の保存委員会(SSC)が、行動計画を策定することになりました。そこには生息国での取り組みだけでなく、消費国での取り組みも加えることになり、消費国の一つである日本からも、情報を提供することになりました。
 スローロリスは国際取引が原則禁止になる前も、輸入には許可が必要な動物でした。さらに2005年からは感染症予防のため、ペット用のサルの輸入は禁止されています。それにもかかわらず、多くのスローロリスが国内で流通し、密輸が多発していました。
 その状況を変えたのが、スローロリスがワシントン条約で国際取引原則禁止の動物になり、それと同時に国内法の「種の保存法」の対象となって、国内での許可証なしの取引や陳列などが禁止になってからです。
 そこで行動計画策定のための情報として、この国内取引規制の効果とまだ残る法律の問題点を日本の事例として報告しました。
 このほかに新たな問題として、インターネットによる需要の呼び起こしがあります。例えば海外旅行に行って、スローロリスと記念写真を撮るサービスにお金を払い、その写真を自分のブログやTwitterやFacebookに掲載するとします。インターネット上の情報は世界中の人の目に触れる可能性があり、記念撮影用のスローロリスの需要や、ペットとしての需要に結びついてしまいます。
 また、自分が飼っているスローロリスを動画に撮ってYouTubeに掲載することも同じ結果を生み出してしまいます。さらにスローロリスのしぐさがかわいいからと投稿された動画が、スローロリスの専門家から見ると実は恐怖や威嚇の動作だということがあり、動物福祉上の問題が指摘されています。
 つまりスローロリスは愛玩用に品種改良された動物ではなく野生動物だ、という教育普及が必要なのです。教育普及は行動計画の重要な柱となる予定です。

Little Fireface Project との連携

 スローロリス保護団体「Little Fireface Project」は、2009年2月に「スローロリス識別ワークショップ」とシンポジウムをJWCSが開催した時に来日した、アンナ・ネカリス博士が主宰しています。このスローロリス保全行動計画への日本からの情報提供はLittle Fireface Projectとの連携で行われました。
 そのメンバーの一人でネカリス博士の下で研究をしているルイーザ・ミュージンさんが、JWCS主催のセミナーで報告をしました。セミナーは学生を中心に大入り満員で、スローロリスのもつ毒の話を初めて聞いたなどの感想が寄せられました。

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(写真)2014年5月13日 セミナー 世界の野生動物研究「スローロリスの現状と保全の取り組み」
 「スローロリス保全行動計画」が策定されると、それに基づいて生息国・輸入国の両方で法執行の強化や教育普及のための活動が始まる予定です。
 日本にいても、東南アジアの森で暮らす野生のスローロリスのためにできることがあります。
 今後ともご支援をお願いいたします。
  Japan Giving (寄付サイト)

                           (鈴木希理恵 JWCS理事)

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