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2014年2月24日 (月)

生物多様性条約 国別報告書・国家戦略のパブリックコメント

1月27日、環境省中央環境審議会自然環境部会(第21回)を傍聴してきました。
 今回の議題は、鳥獣保護法、種の保全戦略、生物多様性条約事務局に定期的に提出する国別報告書と国家戦略の点検結果についてでした。

今回はこの議題のうち、生物多様性条約の事務局に提出する国別報告書と、国家戦略の点検結果についてご報告します。
 国別報告書は生物多様性条約第26条に基づき、締約国が自国の実施状況を条約事務局に提出するレポートです。前回は2009年3月に提出されました。今回の国別報告書は2014年10月に開催される第12回締約国会議で予定されている愛知ターゲットの中間レビューや、地球規模生物多様性概況第4版(GBO4)の情報源になります。
 
条約事務局ホームページ 国別報告書
 日本政府が提出する国別報告書(案)は、1月27日~2月20日までパブリックコメントが募集されました。
●生物多様性から見る未来

報告書は全100頁もあります。
第1章が生物多様性の状況、傾向と脅威、
第2章は生物多様性国家戦略の実施状況及び生物多様性の主流化、
第3章は愛知目標の達成状況及びミレニアム開発目標への貢献
の3部構成です。

 第1章では、東日本大震災の生物多様性への影響報告されています。津波によって生息地そのものが失われた場所がある一方、攪乱によって生態系が回復した事例が掲載されました。生物多様性の脅威の項では、依然開発が絶滅の脅威である図が掲載されています。そして生態系別にみると陸水生態系、島嶼生態系、沿岸生態系で生物多様性の損失が大きいことが述べられています。
 第2章は愛知ターゲットに対応した生物多様性国家戦略2012-2020についてです。そこでは新たに示した「自然共生圏」について述べられています。東日本大震災からの教訓としての食糧やエネルギーの地産地消、地域内循環による自立分散型の地域社会、そして生態系サービスを供給する地方へ需給する都市からの資金・人材・情報の提供で支えあうという考え方です。
 また第3章の「条約の実施から得た教訓」には(4)人口減少等を踏まえた国土の保全管理の項があり、生物多様性は地球の将来を考えるキーワードであることがわかります。

●進まない愛知ターゲット3

 この国別報告書(案)の中で、JWCSが取り組んでいる愛知ターゲット3(生物多様性に有害な補助金などの奨励措置を廃止・改革する)についてみてみました。
「奨励措置  多様な主体による生物多様性に関する取組を促進するための経済的措置としては、国からの補助金や交付金(生物多様性保全推進支援事業、緑化対策事業など)、税制上の措置、各種基金による助成(地球環境基金など)、損失補償、任意の募金や協
力金の提供、地方公共団体による森林環境税などがあります」との表記がありました。
しかし進捗状況については
「奨励措置による生物多様性への影響については、引き続き、考慮していきます」
しか書いてありませんでした。
 そこで、パブリックコメントでは以下のようにコメントしました。
(意見)
生物多様性保全目的の新規補助事業や、奨励措置の生物多様性保全を目的とした変更など、愛知目標3に向けた進捗状況を具体的に記載すべき。

(理由)
締約国として、また愛知目標が採択されたCOP10のホスト国として、目標の達成に責任ある対応が望まれる。とくに農業・漁業分野の補助金に関しては、国際交渉の場で環境への影響が議題になっており積極的に取り組むべきである。


資料1として添付したのは、条約事務局から愛知目標3の進捗についての調査です。2013年3月12日付の文章で、7月5日までに愛知ターゲット3である、生物多様性に有害な奨励措置の廃止や改革が進まない理由について締約国に回答を求めています。
資料2として添付したのは他国の事例で、フランス政府が2012年に発表した報告書『生物多様性に有害な公的援助』です。JWCSが2012年に発行した報告書にこの報告書の一部を和訳し資料として掲載しました。フランス政府は前回の締約国会議(COP11)の前に、自国の制度を生物多様性の視点から点検する報告書を作成していました。
自国の制度を点検し、その結果を踏まえて廃止した補助金や改革した補助金を金額で示せれば、国際社会に胸を張って報告できると思うのですが。



●国家戦略の点検


「生物多様性国家戦略2012-2020」の実施状況の点検結果(案)に対する意見募集(パブリックコメント)も同時に行われました。
こちらは愛知ターゲット達成のロードマップに対する国家戦略の点検で3部構成になっています。
第一部 5つの基本戦略に関する取組
  1生物多様性を社会に浸透させる
  2地域における人と自然の関係を見直し、再構築する
  3森・里・川・海のつながりを確保する
  4地球規模の視野を持って行動する
  5科学的基盤を強化し、政策に結びつける

第二部 愛知目標達成に向けたロードマップの進捗状況
 愛知目標を国内の事情に合わせて具体的にした国別目標の評価です。
第三部 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する行動計画の点検結果
 ここには水質の改善や生物多様性地域戦略を策定した自治体の数など数値目標に対する進捗状況と、各省庁の事業のうち生物多様性に関するものの一覧が掲載されています。

 奨励措置に関しては、国別報告書と同じ文言が使われていましたので、パブリックコメントでは国別報告書と同じ点を指摘しました。

 生物多様性国家戦略が描く未来図は、過去と地続きでありながら斬新で、希望が灯されていると思います。しかしそれに向けて環境省以外の農水省、国交省、経産省などの本気度が点検結果からは残念ながら感じられませんでした。

(鈴木希理恵 JWCS理事)

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