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2013年5月12日 (日)

生物多様性と消費 象牙の需要とゾウの危機

●細切れになったアフリカゾウの分布

 アフリカゾウはサハラ以南の熱帯雨林、サバンナに分布し、遠距離移動をします。アフリカゾウの数を正確に推定することは難しいですが、アフリカゾウデータベース (1)が推定を試みています。それによると生息地はすでにアフリカ大陸の中で島状にしか残っていません。その生息地も人口の増加と農地の拡大で脅かされています。これは長期でみたアフリカゾウへの脅威となっています(2)。
 1989年にアフリカゾウがワシントン条約附属書Ⅰ(国際取引は原則禁止)になる前も、附属書Ⅱ(国際取引に許可が必要)に掲載されていました。しかし1970~80年代はヨーロッパ、米国、日本で需要が拡大し、密猟を誘引しました。国際取引が禁止されるととくに東アフリカで多くの密猟が終止符を打ちました。その結果、その後の20年間で東アフリカのゾウの生息数の回復が見られましたが再び密猟に脅かされています。またアフリカ中央部をはじめいくつかの個体群が絶滅の危機にあります(2 ) 。
 とくにアフリカ中央部の熱帯林には、サバンナに生息するゾウよりも小型の「マルミミゾウ」が生息しています。このマルミミゾウの牙は緻密で硬いので、三味線のバチなど伝統楽器や印鑑の材料として、とくに日本での需要の高い象牙といわれています(3 )。

●密輸の現状

 アフリカ大陸の中で犯罪組織を通じて違法取引された象牙は、おもにケニア、タンザニア、南アフリカから出発し、香港、マレーシア、フィリピン、ベトナムを経由して中国とタイに到着することが明らかになりました(2)。
 日本へのゾウ(象牙・皮製品など)の密輸を、税関で輸入が差し止められた件数でみると、2009~2011年では年間1000件前後の差し止め件数のうち10件以下でした。しかし2011年5月には日本象牙美術工芸組合連合会元会長らが国内での違法取引で逮捕される事件があり、今なお根強い需要があることを表しています。

●大規模なアフリカゾウの密猟と武装集団

 2012年6 月、ゾウの密猟のレベルがこの10年において最悪となり、象牙の押収も1989年以来記録的な量となったとCITES事務局が発表しました(4)。2011年の1年間でアフリカゾウ全体の7.4%が違法に殺されたと推測され、2012年もその傾向が続いています(2)。
 とくに大規模な密猟は、2012年2月にカメルーン北部のブバ・ンジダ国立公園のゾウ約450頭が組織的に殺された事件です。 
 2012年4月にはコンゴ民主共和国のガランバ国立公園で、22頭のゾウがヘリコプターからレベルの高い射撃の腕前で襲撃されたとみられ、象牙が取り去られていました。2012年6月24日にはコンゴ民主共和国のオカピ野生動物保護区の本部が、密猟や不法採掘をしていたとみられる武装集団によって襲われました。武装集団は本部の建物に放火し、近隣の村を略奪しました。この事件により数人の死傷者がでました。2012年9月には密猟者の報復とみられる攻撃でチャドの国立公園レンジャー5人が死亡、1人が行方不明になりました(5)。 
 2012年2月にはチャドとスーダンの密猟者集団が、乾季を利用してゾウを大量虐殺したとの報告がありました。そこで密猟された象牙は、近隣の紛争地域に渡る軍資金や武器・弾薬になっているとみられています(6 )。
密猟が多発する地域は人々の暮らしが最も不安定で、国の統治や法執行が弱い地域です (4)。このようなゾウの密猟は、東アジアでの象牙の需要が引き起こしているとみられています。
「象牙を買うことでアフリカの経済に貢献するのではないか」という考え方がありますが、現実は法執行が難しく、象牙を買うことで紛争の激化や犯罪組織の拡大に加担してしまうのです。
  (鈴木希理恵 JWCS理事 『JWCS通信』No.68より転載)
参考文献

(1) アフリカゾウデータベース http://elephantdatebase.org
(2 )  Elephant in the dust  The African elephant crisis UNEP CITES IUCN TRAFFIC 2013 p15,p23,p32,p46
(3) 『HIDDEN GIANT 知られざる森のゾウ』ステファン・ブレイク著 西原智明訳2012 現代図書
(4) CITESプレスリリース 2012年6月21日
(6) CITESプレスリリース 2012年2月28日

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