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2010年11月15日 (月)

COP10が残したもの2--持続可能な自然の利用をする伝統的な知恵

 日本は耕作放棄が問題になっていますが、世界に目を向けると農地の拡大が生物多様性喪失の原因になっています。貧困が原因で自然が失われている国は多く、持続可能な自然の利用をする伝統的な知恵が対策として決定文のあちこちに盛り込まれました。もともと条約の第10条(c)に「保全又は持続可能な利用の要請と両立する伝統的な文化的慣行に沿った生物資源の利用慣行を保護し及び奨励すること」と書かれています。

 COP10期間中も先住民のグループの活動は活発で、生物多様性条約から伝統的知識への評価が高まり、先住民の生活基盤である自然が守られ、人権擁護につながることが期待されています。

 また「SATOYAMAイニシアティブ」を提案した日本では、2012年にインドで開催される次回会議までに優良事例を掘り起こす動きがあるでしょう。また生物多様性を守る行動として「地産地消」や「旬食」を呼びかけた市民団体もありました。生物多様性保全の政策から、地域経済の組み立て直しにつながるかもしれません。そうするとグローバル企業の儲けは減るのではと思いますが、同じ条約の中で伝統的知識とグローバル企業の利益が綱引きをしているようです。

 里山の見直しで気をつけなければいけないのが、「SATOYAMAイニシアティブ」の議論でほかの国から出された意見です。「二次的自然の保護の支援によって保護区が後退するのではないか」、また「どんなプロジェクトに結びつくのか理解しにくい」という意見がありました。

  たとえば大木に営巣するシマフクロウのように遷移の後半の森でないと生きていけない生物には保護区が必要です。そして地球上の残り少ない手付かずの自然を守ることも生態系サービスの維持に重要です。

 また半乾燥地帯や山岳など脆弱な生態系の国の人にとって、もともと自然災害による撹乱に適応した生物の多い日本での自然の利用の方法は、イメージしにくいと思います。
  里山の自然を誇るあまり「人の手を入れるほど生物多様性が豊かになる」という主張は、撹乱に弱い生物・生態系に対して配慮が足りないと感じます。脆弱な生態系も含めて多様な生態系があることが生物多様性です。

 そもそも里山の価値が言われ始めたのは、1987年にリゾート法が制定され、里山がありふれた自然だからとゴルフ場やスキー場に開発されたことに対する反論でした。1989年に日本自然保護協会とWWFJから日本で初めてのレッドデータブック『我が国における保護上重要な植物種の現状』が発行され、川原の植物をはじめとする里山の植物の多くが、開発のため絶滅の危機にあることが明らかになりました。また循環型社会としての里山の研究も進みました。

 COP10が終わり、里山整備に税金が投入されることがあるかもしれません。そのとき「人の手を入れるほど生物多様性が豊かになる」という言葉が独り歩きして画一的な里山になってしまったら、都会のコンサルの言うなりだったリゾート開発の繰り返しになってしまいます。

 それに対し、生物多様性条約には広報・教育・普及啓発(CEPA)という活動があります。これを「地域社会の伝統的な知恵」と、「進化の結果今ここにある自然」をみんなで理解し、未来を決めることに活用できます。

 生物多様性条約は、実はとても身近で大事なことだったのです。

JWCS 鈴木希理恵

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