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2009年4月14日 (火)

『ダーウィンが来た!』 これは「キリンの楽園」とみてよいのか?

       NHK『ダーウィンが来た!生きもの新伝説 
         第143回 ようこそ!キリンの楽園』

            「楽園」とみてよいのか?

 NHKの日曜日、午後7時半からの『ダーウィンが来た』は、すばらしい映像を提供しているテレビで、いつも視聴しております。

 しかし2009年4月5日放送の「キリンの楽園」は、興味深い映像が多かったのに、「キリンの楽園」というテーマに疑問を感じました。それは、野生生物をどうとらえるかという基本にかかわることだけに、残念に思っています。

 西アフリカのニジェール共和国が、旱魃や乱獲によるキリンの個体数激減に対応して保全に取り組んでいる、と紹介していました。テレビは、そうした政府など行動については最小限にとどめて、アカシアの枝先を食べている様子、繁殖期になってのオスどうしの争い、子キリンのこと、休息の時の姿勢などキリンの生活している様子をみせてくれました。

 このテレビの映像でもっとも注目したことは、キリンが人間のすぐ近くにきて野生のスイカを食べていた様子です。それは、これまで想像もしなかったアフリカの野生動物の事実でした。解説によれば、農民がニジェール政府の呼びかけに応じて、近付いてきたキリンを追い払わないようにしたことが理由のようです。この地域の農民は草丈が3mにもなるアワを栽培し、その穂先を食用にしているそうです。野生のスイカはその雑草となっているとのことです。人間の近くにいることによって、天敵から守られ食物を確保し、雑草を取り除くことによって農民に有益な行動をとり、人間とキリンとの間に共存が成立しているとのことです。そういうキリンの生活環境を「キリンの楽園」と言っていました。

 キリンの個体数減少の原因は、旱魃というような自然現象にもありますが、それだけでしたら、環境が自然復元すればキリンの個体数も回復するはずです。それが難しいのは、開拓などによる自然破壊や乱獲が重大な原因となっていると考えられます。こうした野生保全では、基本的にはそうした人為的な環境破壊をとめ、回復することがもっとも望まれることです。しかしまた、激減状態にあるものは、そのまま放置すれば絶滅するおそれがあります。そうした場合には、ニジェール政府が採ったように、緊急措置として人間による保護が必要になります。

 しかし、農地と農民からなる人為世界で生活するというのは、野生生物の本来のあり方ではありません。そうした生活は、最小限にとどめて、できるだけ早く野生世界のなかへもどることが、野生生物には必須です。農民に守られ、畑地雑草を食べて生活しているキリンが野生生物であるかどうかは、実態をきちんと調査し、野生世界へもどることを目標にした上で判断しなければならないことですが、緊急支援といえども、そうしたこととの関連のなかでされねばならないと思います。したがって、人間に守られて天敵におそわれることなく、食べ物に不自由しない生活を「楽園」というのは、キリンの立場からすれば迷惑な解釈ではないかと思います。そうした生活をしている動物園のキリンを、楽園のなかのキリンとはだれも思っていません。 (岩田 好宏・JWCS理事)                                                                                            

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