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2008年12月 1日 (月)

2010年10月開催:生物多様性条約CoP10名古屋会議に向け準備進む 坂元雅行

2010年10月に名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(CoP10)に向け、同条約事務局は10月5日、各地域の代表を集めた初の会合をスペインのバルセロナで開き、今後の活動や交渉スケジュールを盛り込んだ「名古屋ロードマップ」をまとめた。
生物資源の商業化で得られた利益を特許として先進国が独占するのではなく、原産国と先進国が利益を公平に分け合うルール作りも10年が交渉期限。このため、会議までに計6回の専門家会合や作業部会を開催し、溝が大きい先進国と発展途上国間の合意形成を目指す。
(中日新聞 2008年10月6日(共同通信 配信))

2年後に日本で初の開催となるCoP10に向け、条約事務局、ホスト国である日本などを中心に準備が急速に進んでいる。条約の議題は多岐にわたるが、生物多様性のもたらす利益へのアクセスとその配分(ABS = Access and Benefit Sharing)はCoP10最大の課題といわれている。野生生物の保全に直接かかわるテーマとしては、保護地域制度などがある。こうしたレールの敷かれた議題とは別に、ホスト国日本はどのようなカラーを出していくのだろうか。
9月13日に名古屋で開催され、環境大臣が議長を務めた「第16回アジア太平洋環境会議(エコアジア2008)」では、「生物多様性」をメインテーマとした議論が行われた。日本にとっては、CoP10の議長国としてのリーダーシップを地域でアピールする場という意味がある。ここで生物多様性の保全と持続可能な利用の「アジアのモデル」として日本政府が提案したのが「SATOYAMAイニシアティブ」である。里山が、農林業生産と密接に結びついた水田や二次林などの人手の加わった二次的自然環境を維持・再生する日本の智恵と強調する。
里山を含めて農村地域には特有の生態系が形成されている。それは遺存種を含む少なからぬ絶滅危惧種のシェルターとしての機能も果たしている。しかし、森林や草地の農地化、農村の形成は、在来の野生生物の生息地を消失させ、あるいは生息環境を改変した。農村の生態系は人為的なものであり、自然生態系とは異なるものである。アジア地域では、熱帯雨林やマングローブ林などの海岸環境など自然生態系の改変が激しく進行している。農村生態系のあり方を考える上で里山を紹介することはよいと思うが、アジア地域の生物多様性保全全体において中心におかれるべきテーマではない。CoP10では生物多様性喪失を顕著に減少させるための2010年目標期間が終了、次の目標が立てられることになるが、この点には留意される必要があると考える。
(さかもとまさゆき/JWCS事務局長・弁護士)

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最新版レッド・リストが示す哺乳類の危機と生息地の消失・分断 坂元雅行

国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストが世界の哺乳類の危機を明るみに
2008年10月6日にバルセロナ(スペイン)で開催された「IUCN世界自然保護会議」で、2008年版IUCNレッド・リストが公表された。(2008年10月6日 国際自然保護連合(IUCN)プレスリリース)

平成17年度~平成19年度の3ヵ年で「イリオモテヤマネコ生息状況等総合調査(第4次)」が実施された。この調査結果等から、環境省としては、イリオモテヤマネコの生息個体数をおよそ100個体と推定している。生息個体数は、平成4~5年度の第3次調査時から減少傾向にあるものと推定され、その要因としては、交通事故による個体数減少や好適な生息環境の減少などが考えられるとされている。(2008年8月7日 環境省プレスリリース)

IUCNによれば、哺乳類は1500年から今日までの間に少なくとも76種が絶滅したとされている。今回の2008年版レッドリストによると、全哺乳類5,487種のうち1,141種が絶滅のおそれがあるとされた。一方、今回の評価で絶滅のおそれのある哺乳類のうち5%が回復の兆候を示しており、保全活動が種を絶滅から救える可能性も強調されている。見逃せないのは、全哺乳類5,487種のうち836種については未だ評価のための情報が不足していることである。もしこれらの情報が集まればさらに絶滅のおそれのある種が増える可能性があるという。国際NGOのコンサベーション・インターナショナルのジャン・シッパー氏は、絶滅のおそれのある哺乳類の割合は実質36%だともいう。

絶滅のおそれのある哺乳類1,141種のうち188種は、CR(1番目に絶滅のおそれの高い種のカテゴリー)に指定されている。そこには成獣が83-143頭しか残っておらずさらに減少が続いているスペインオオヤマネコ(Lynx pardinus)などが含まれている。
 一方、日本では、琉球大学による環境省委託調査の結果、イリオモテヤマネコ(Prionailurus bengalensis iriomotensis)の危機的状況がさらに進行しつつあることが確認された。イリオモテヤマネコは、ベンガルヤマネコの固有亜種で、西表島のみに生息する。環境省が作成する日本版レッド・リストでは、従来、絶滅危惧IB類(2番目に絶滅のおそれが高い種のカテゴリー)に指定されていたものが2007年の見直しで同IA類(1番目に絶滅のおそれが高い種のカテゴリーで、IUCNレッド・リストのCR相当)に格上げされていた。今回の調査結果で減少傾向が見られるとされた100頭程度の個体数にとって、交通事故による1頭1頭の死亡は個体群の維持に重大なインパクトとなる。さらに、第4次調査報告書によると、「エコツアー」ブームで増加しつつある観光客の生息地への入り込みが新たな脅威となっている可能性があるという。そして、イリオモテヤマネコの生存基盤そのものを失わせる巨大な問題として、大規模農地整備、道路整備などの公共事業、加速しつつある民間のリゾート開発による生息地への影響が指摘されている。
 
野生生物から見た脅威の3大要因は、生息地の消失・分断、過剰捕獲(取引)、外来生物の侵入である。種によって優先的に取り組むべき要因は異なるが、多くの種にとって生息地の消失・分断が最大の脅威であることは疑う余地がない。今回のIUCNのプレス・リリースによれば、絶滅のおそれのある哺乳類のうち40%が、生息地の消失・分断の影響を受けているとされており、この現象は、中南米、西・中央・東アフリカ、マダガスカル島、南・東南アジアでとくに著しいとされている。
この問題は短期的な対処が難しい。人間による土地利用のあり方を長期的にコントロールしていく以外に方法がない。対処が遅れれば遅れるほど、社会経済的に取り返しがつかなくなり(莫大な投資がされたり、利害関係者が拡大・複雑化してしまったら後戻りはできまい)、やがて物理的にも取り返しがつかなくなる(生息適地が消滅)。このことは、日本のイリオモテヤマネコについても、JWCSが直接かかわっているトラやゾウにとっても当てはまることである。
(さかもとまさゆき/JWCS事務局長・弁護士)

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