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2008年4月28日 (月)

アフリカゾウ 「増えすぎたから利用してよい」のか ●小原秀雄(談)

南アフリカ政府は2月25日、国内のアフリカゾウの頭数制限のため、5月1日から殺処分することを決めた。
読売新聞2008年2月27日  「ゾウ急増 南アが頭数調整へ 95年8000頭→現在1万8000頭」より抜粋

ほかにもAP通信2008年2月3日  「保護措置の成功により、ケニアで野生のゾウが増加」(JWCSブログ「ワイルドライフ ニュース」に翻訳文掲載)、朝日新聞 2008年2月27日夕刊 「アフリカ象、増えすぎ? 南アフリカ 間引き   ケニア 引っ越し作戦」、毎日新聞2008年3月3日  「南アフリカ 増えすぎたゾウ、十数年ぶり間引き」 で報道される。

 1974年以降、ケニヤのツァボ国立公園にほぼ毎年訪れている。2000年からはJWCSがツァボ国立公園のレンジャーにマラリア薬などを寄贈してきた。そのためケニヤでのゾウをめぐる経年的な動きを実際に見ている。

 『ゾウのための闘い』(1995岩波書店)を記したダグラス・ハミルトンによれば、ケニヤの1970年代初めのアフリカゾウの個体数は約15万~17万頭とされている。

 1980年代は密猟最盛期であったが、ケニヤでの生息数は2万3000頭余りといわれた。その頃は国立公園内でもゾウに出会うと、遠いのにもかかわらず逃げる姿がみられた。1989年のワシントン条約締約国会議で象牙の国際取引が全面禁止になると、ゾウと出会っても逃げなくなった。

親交のあるケニヤ野生生物公社(KWS)・元総裁のオリンド博士によると、ケニヤ・ツァボ地区の場合、60年代には2万頭余りだった個体数が一時4万頭近くなり、森林だったところが現在のような長径草本のサバンナになったという。この植生の変化を見て白人のロウズ博士は間引きを提案したが、オリンド博士は断った。その後、大干ばつがあり、ゾウの個体数は自然に減少した。またツァボ地区の個体数が4万頭になったのは、密猟者に追われたゾウがツァボ国立公園に逃げ込んだためだったと見られる。

その後さらに密猟が激しくなり、1980年代のツァボ地区のゾウの個体数は6000頭以下と推定されている。この時期、2万頭近くいたクロサイが全滅した。

象牙の国際取引禁止以降、 ツァボ地区の個体数も調査のたびに増えていった。しかし密猟者に追われたゾウが保護区へ逃げ込んでいるので、自然繁殖によって個体数が回復した数だけではない。ゾウの個体数についての今回の調査は、いろいろな点で正確を期している。個体数の数が細部まで正確かどうかは別として、私の実感でもツァボ地区のゾウは増加している。

観光が大きな収入源のケニヤは、南アを中心とした南部アフリカ諸国が提案する象牙取引再開に抵抗している。それに対し再開を望む南部アフリカ諸国の勢力は強い。

日本政府はさまざまな形で象牙取引再開に尽力しているが、その一方で地球温暖化問題などでは国際協力を謳っている。つまり日本政府の環境問題への取り組みには、野生生物が自然の状態を示すインディケーターだとの視点を欠いているのだ。

 また局地的な増加はよく報道されるが、それは極めて危険な事例である。ケニヤのアフリカゾウの件だが、シンバヒルズ国立保護区からツァボイースト国立公園に移送しようとしが、失敗したと聞く(ケニヤ在住の研究者・中村千秋氏の報告)。

 野生生物の個体数が「増加した」と言うとき、広さの単位などと、いつの時点の個体数と比較して「増加した」のかを問わなければならない。また人間の利用によって最低の個体数になった野生生物が地域的に「増加した」ことをとらえて「増えすぎたから利用してよい」という結論を導きだすのは「科学的」なことではなく、単なる人間の欲望である。
(おばら ひでお/女子栄養大学名誉教授)

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