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2008年4月 2日 (水)

生物多様性条約と生物多様性に対する学生の理解  安藤元一

中央環境審議会は14日、第3次生物多様性国家戦略を鴨下環境相に答申した。約660の施策を打ち出し、今月下旬に閣議決定する。(朝日新聞20071115日抜粋)

野生生物保護に関してもっともよく知られているのはワシントン条(CITES)だろう。この条約は仕組みもシンプルである。対象を希少生物に限定し、規制対象を国際取引に限定し、保全のためのツールも取引規制に限られるため、理解しやすい。これに対し、生物多様性条約(CBD)は内容も多様である。

大きな特徴の一つは生物を生態系、種、遺伝子の3レベルでとらえたことにある。生物資源の持続可能な利用を強く打ち出した点も注目される。国家間の現実的な利害がかかわる中で、遺伝資源の利用から生じる利益の公正・衡平な配分を明記している点も新しい。

生物多様性条約はこのほかにも次のようなことを求めている: 

地球上の生物の多様性を包括的に保全する

生物多様性国家戦略を制定する

生物資源の利用に関する伝統的・文化的慣行を保護・奨励する

開発途上国への資金援助と技術協力の仕組みをつくる

調査研究における国際協力体制を推進する

バイオテクノロジーによる遺伝子組み換え生物を管理する(カルタヘナ議定書や国内ではカルタヘナ法がこのために作られた)。

このため本条約はわかりにくいといわれる。そもそも「生物多様性」という用語が従来の「自然保護」とどのように異なるのかについても、市民の理解は一様でないように思われる。

そこで日本において生物多様性条約と生物多様性をどのように理解しているか知ることを目的に、筆者は2007年に東京農業大学農学部の動物系学生249名を対象にアンケート調査を行った。

その結果をわが国の生物多様性国家戦略と照らしあわせてみると、次のような課題が浮かび上がってきた。

- 保護の視点はあるが、持続可能な生物資源の活用という視点はわずかである

- 関心が生物側を向いており、人間側の対応に関する視点が少ない。

- 地球環境保全の両輪といえる「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」との関連が意識されていない。

- 人口問題など、異なる問題との関連が意識されていない。

- 国際協力の視点が少ない

- 教育を保全ツールとして使うことへの理解は低い。

- 植物に関する視点が少ない

- 生態系レベル、遺伝子レベルの多様性が理解されていない

- 遺伝子レベルの保全に関する認識が偏っており、バイオテクノロジーの視点がない

(あんどう もとかず/JWCS理事・東京農業大学准教授)

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