« 2008年3月17日 | トップページ | 2008年4月8日 »

2008年4月 2日 (水)

初逮捕 スローロリスの違法取引  坂元雅行

 絶滅の恐れのある希少種の保護を目的としたワシントン条約で、商取引が禁じられている小型サル「スローロリス」を密売したとして、警視庁生活環境課は16日、会社員S容疑者(64)ら2人を種の保存法違反(譲渡)などの疑いで逮捕した。

 スローロリスは、テレビ番組で紹介されたことでペットとして人気を呼び、150万円以上の高額の取引が横行。このため国内では昨年9月に売買や譲渡が禁止された。違法取引の摘発は全国初。

 調べによると、S容疑者らは昨年9月~11月、3回にわたって、タイで購入したピグミースローロリス(体長約20センチ)計9頭を、ズボンのポケットに隠すなどして国内に持ち込み、うち3頭を男性会社員(29)らに、11018万円で販売した疑い。

 S容疑者は、インターネットのサイトを通じて、販売を持ち掛けており、調べに対し、「1回につき3頭ずつ、計12回密輸した」と供述しているという。

2008116日 読売新聞)

スローロリス類は(ガラゴ類とともにロリス科をなす)、マダガスカルのキツネザル類、東南アジアのメガネザル類とともに原猿類と呼ばれ、そのほかの霊長類(真猿類)よりも原始的なサルのグループである。

 スローロリス類は北部インドから、東南アジア、中国南部にかけて生息し、夜行性で、果実や昆虫などを食べている。「ロリス」というのはオランダ語で「道化師」の意味で、手足を伸ばして自由自在に動き回ることからこの名がついたようである。ロリス類は枝と枝の間をゆっくり移動、昆虫類に気づかせず、捕食する。

スローロリス類は、森林伐採による生息地消失や激しい密猟によって絶滅の危機に瀕している。このうち密猟を助長しているのがペット目的の取引だ。20076月、絶滅のおそれのある野生生物の国際取引を規制するワシントン条約の第14回締約国会議で、スローロリス類の国際商業取引は禁止された。それにともない同年の9月から、日本の国内法「種の保存法」で、

①合法的に輸入された個体

②合法的に輸入した個体から国内で繁殖した個体

であることを環境省の登録団体に登録しなければ販売・購入は禁止になった。

しかし、小さく、大きな音も出さず、愛らしい容姿であるためか、スローロリスのペット需要は高まっており、闇で110数万円以上で取引されている。スローロリスの人工繁殖は困難といわれ動物園での繁殖実績も限られている。一方、2000年以降正規に輸入されたスローロリスは0頭である。スローロリスの密輸は後を絶たず、2006年に税関が輸入差止めに成功したものだけでも100頭以上にのぼる。実際に密輸されている数は想像もできない。今、日本のペット市場に出回っているもののほとんどは、密輸されたものだと考えられる。

密輸されたスローロリスは、すでに死んでいたり保護されて間もなく死んでしまうものも多い。赤ん坊は生まれてすぐ母親の腹にしがみつき、大きくなってくると背中に乗るようになり、餌の取り方や敵からの身の守り方を学習していく。親はおそらく密猟時に殺されてしまっているのだろう。日本人もスローロリスの未来に関わっているといえる。

(さかもと まさゆき/JWCS事務局長・弁護士)

| | トラックバック (0)

生物多様性条約と生物多様性に対する学生の理解  安藤元一

中央環境審議会は14日、第3次生物多様性国家戦略を鴨下環境相に答申した。約660の施策を打ち出し、今月下旬に閣議決定する。(朝日新聞20071115日抜粋)

野生生物保護に関してもっともよく知られているのはワシントン条(CITES)だろう。この条約は仕組みもシンプルである。対象を希少生物に限定し、規制対象を国際取引に限定し、保全のためのツールも取引規制に限られるため、理解しやすい。これに対し、生物多様性条約(CBD)は内容も多様である。

大きな特徴の一つは生物を生態系、種、遺伝子の3レベルでとらえたことにある。生物資源の持続可能な利用を強く打ち出した点も注目される。国家間の現実的な利害がかかわる中で、遺伝資源の利用から生じる利益の公正・衡平な配分を明記している点も新しい。

生物多様性条約はこのほかにも次のようなことを求めている: 

地球上の生物の多様性を包括的に保全する

生物多様性国家戦略を制定する

生物資源の利用に関する伝統的・文化的慣行を保護・奨励する

開発途上国への資金援助と技術協力の仕組みをつくる

調査研究における国際協力体制を推進する

バイオテクノロジーによる遺伝子組み換え生物を管理する(カルタヘナ議定書や国内ではカルタヘナ法がこのために作られた)。

このため本条約はわかりにくいといわれる。そもそも「生物多様性」という用語が従来の「自然保護」とどのように異なるのかについても、市民の理解は一様でないように思われる。

そこで日本において生物多様性条約と生物多様性をどのように理解しているか知ることを目的に、筆者は2007年に東京農業大学農学部の動物系学生249名を対象にアンケート調査を行った。

その結果をわが国の生物多様性国家戦略と照らしあわせてみると、次のような課題が浮かび上がってきた。

- 保護の視点はあるが、持続可能な生物資源の活用という視点はわずかである

- 関心が生物側を向いており、人間側の対応に関する視点が少ない。

- 地球環境保全の両輪といえる「気候変動枠組条約」と「生物多様性条約」との関連が意識されていない。

- 人口問題など、異なる問題との関連が意識されていない。

- 国際協力の視点が少ない

- 教育を保全ツールとして使うことへの理解は低い。

- 植物に関する視点が少ない

- 生態系レベル、遺伝子レベルの多様性が理解されていない

- 遺伝子レベルの保全に関する認識が偏っており、バイオテクノロジーの視点がない

(あんどう もとかず/JWCS理事・東京農業大学准教授)

| | トラックバック (0)

« 2008年3月17日 | トップページ | 2008年4月8日 »