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2007年11月12日 (月)

密猟・レッドデータブックの悲劇 小川 潔

 2007915日前後の各新聞は、912日にIUCN(世界自然保護連合)が2007年度版レッドデータブックを発表し、絶滅の危機にひんしている動植物の種数は188種(分類群)増加したことを報じた。国内では831日付西日本新聞が、この春発覚した唐津市の樫原湿原における県指定絶滅危惧植物マツランの盗掘事件を伝えた。

 盗掘と言えば一昨年、同じラン科で絶滅危惧植物(E類)にランクされているアツモリソウが山梨県のある山で盗掘された。その現場を私は朝8時過ぎに通り、花の写真を撮ったのだが、そこでボランティアで監視員をしているH氏から、県の高山植物保護条例(県内での商取引等を抑制する、いわばワシントン条約の県内版)の影響で、アツモリソウの闇取引価格が高騰していると聞かされた。30年ほど前まで、この山ではアツモリソウを踏みつけねば登山道を歩けないくらいに群生が見られたが、林道の発達による車を利用した大量採取、植林の生長や林地の手入れ不足による樹林下の光環境の変化で、アツモリソウの花を見るのはここ10年程の間で数輪となってしまった。
 この日は私の目撃のあとの情報を、登山雑誌に載った花の目撃記事やインターネットを通じて知ることができた。午前中は登山者がこの花をめで、昼からは地元の人たちが監視をしていたが、ボランティアが引き揚げるとすぐ採られてしまったという。監視を気づかれないよう、花のスケッチにかこつけて長時間現場に人がいるようにして、盗掘者を諦めさせようとしたそうだ。守るほうも考えたのだが、盗るほうは花が札束に見えるのか、時間をかけることに糸目をつけない。
 アツモリソウは現状では高い絶滅確率をもつが、希少性に比例する採集圧がきわめて高い。ワシントン条約の密猟・商品化は遠くの話に思えるかもしれないが、身近な国内各地でも上述のような問題が起こっていて、山野草ブームや野生動物のペット化という自然接触文化のあり方が依然として問われる状況にある。

(おがわ きよし/東京学芸大学准教授)

NPO法人 野生生物保全論研究会 会報『JWCS通信』No51 掲載

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