« 2007年10月3日 | トップページ | 2008年1月16日 »

2007年11月12日 (月)

密猟・レッドデータブックの悲劇 小川 潔

 2007915日前後の各新聞は、912日にIUCN(世界自然保護連合)が2007年度版レッドデータブックを発表し、絶滅の危機にひんしている動植物の種数は188種(分類群)増加したことを報じた。国内では831日付西日本新聞が、この春発覚した唐津市の樫原湿原における県指定絶滅危惧植物マツランの盗掘事件を伝えた。

 盗掘と言えば一昨年、同じラン科で絶滅危惧植物(E類)にランクされているアツモリソウが山梨県のある山で盗掘された。その現場を私は朝8時過ぎに通り、花の写真を撮ったのだが、そこでボランティアで監視員をしているH氏から、県の高山植物保護条例(県内での商取引等を抑制する、いわばワシントン条約の県内版)の影響で、アツモリソウの闇取引価格が高騰していると聞かされた。30年ほど前まで、この山ではアツモリソウを踏みつけねば登山道を歩けないくらいに群生が見られたが、林道の発達による車を利用した大量採取、植林の生長や林地の手入れ不足による樹林下の光環境の変化で、アツモリソウの花を見るのはここ10年程の間で数輪となってしまった。
 この日は私の目撃のあとの情報を、登山雑誌に載った花の目撃記事やインターネットを通じて知ることができた。午前中は登山者がこの花をめで、昼からは地元の人たちが監視をしていたが、ボランティアが引き揚げるとすぐ採られてしまったという。監視を気づかれないよう、花のスケッチにかこつけて長時間現場に人がいるようにして、盗掘者を諦めさせようとしたそうだ。守るほうも考えたのだが、盗るほうは花が札束に見えるのか、時間をかけることに糸目をつけない。
 アツモリソウは現状では高い絶滅確率をもつが、希少性に比例する採集圧がきわめて高い。ワシントン条約の密猟・商品化は遠くの話に思えるかもしれないが、身近な国内各地でも上述のような問題が起こっていて、山野草ブームや野生動物のペット化という自然接触文化のあり方が依然として問われる状況にある。

(おがわ きよし/東京学芸大学准教授)

NPO法人 野生生物保全論研究会 会報『JWCS通信』No51 掲載

| | コメント (0) | トラックバック (0)

第4回 アフリカ開発会議(TICAD)  森川 純

「アフリカ支援日本停滞」というヘッドラインの下に「欧米諸国は軒並み増額」、また「資源外交存在感増す中国」最後に「庶民に届く援助模索」という順序でこの記事は構成されている。
 支援停滞には、日本の緊縮財政による援助削減。またTICADがトークショーに留まり実際には発展に貢献していないとするアフリカ側の不満、批判を紹介。最後に円借款によるインフラ整備で民間投資を呼び込み経済成長を実現する戦略の問題的側面と市民の立場からアフリカ政策を提言する「TICAD市民社会フォーラム」の主張を紹介している。
(朝日新聞2007年8月15日版抜粋)

 第4回アフリカ開発会議が来年の5月に横浜で開催される。会議の名称自体が与える印象や開催国が経済大国で援助大国の日本であることからTICADとは、一般に援助戦略や具体的支援策を議論する場として日本の内外で理解され期待される傾向が強い。
 上記の望月洋嗣氏と金子桂一氏による記事もそうした認識枠組みで執筆されているし、アフリカ側からするTICADに対する不満、批判も同様な背景を持つと思われる。
 とはいえ注意すべきは日本政府がアフリカ側からの過剰な援助要請を牽制してか一貫してTICADは援助供与を約束する性格の会合ではない旨を表明してきている事実である。筆者の観察によればTICADは、言わば、闘牛士が突進してくる牛を幻惑させる赤い布の役割を演じている。メデイア、研究者、NGO関係者の多くが援助をめぐる議論に没頭させられる反面、外交当局者はアフリカでの日本の過去と現在の問題行動から世論の関心をそらせると共に日本のイメージと威信の向上や国連安保理常任理事国入りといったより大きく長期的な目標を追求することが出来るからである。
 いま一度振り返って考えてみたい。日本のアフリカ政策とは援助供与政策と同義であって政策は援助の多寡や方法論をめぐって回っているだけなのか。「西サハラ」独立問題やアフリカのイスラム「原理主義」勢力への対応に問題はないのか。人権侵害,政治腐敗、環境破壊問題と日本の関係の有無、程度、拡がりについてメディアを含めた各界各層で再検証し教訓を引き出す必要はないのであろうか。
 また日本のアフリカ政策について批判分析的に究明しそれを判断材料としてアフリカ社 会側に使ってもらわない限り「アフリカの声を聞け」という正当な主張も単なるスローガンに終わってしまうであろう。野生生物の保全に関して言えば

(1)持続可能な商取引の厳守、

(2)この分野への援助強化、

(3)援助受け取り国側の政治社会運営が民主主義的に行われる必要がある。

だが

(1)では西アフリカ沖でのタコの資源枯渇やかっての象牙の大量輸入、

(2)では野生生物保全関係援助の事実上の欠落、

(3)では「悪しき統治」への驚くべき歴史的寛容さ

に見られるように日本のこの分野での援助も多くの課題を抱えている。そうした状況の中でケニアでのアフリカゾウ国際保護基金(特集参照)による野生生物保全とエコツーリズムと地域社会の振興と環境教育を繋げた統合的プロジェクトから外交当局者が学ぶ事柄は多いのではないか。

(もりかわじゅん/酪農学園大学教授・アデレード大学客員研究員)

NPO法人 野生生物保全論研究会 会報『JWCS通信』No.51掲載

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2007年10月3日 | トップページ | 2008年1月16日 »