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2007年10月 3日 (水)

水鳥の減少の喜ばしいケースも   安藤元一

 鳥取県と島根県にまたがる中海は2005年にラムサール条約湿地に登録された。同地の米子水鳥公園は干拓地の一部を利用して1995年に開設され、1,000羽以上のコハクチョウが越冬する集団越冬南限地として知られてきた。しかし登録と時を同じくして公園内のコハクチョウが減り始めた。この年は北日本の大雪の影響で、山陰地方には昨シーズンより約2割増の約3,000羽が飛来して水鳥公園でも最高800羽まで増えたが、年末から急激に減少して数十羽に減ってしまった。

 原因は公園から5キロほど離れた島根県安来市の水田約6ヘクタールに水が張られたことである。ここはもともとコハクチョウが昼間に落ち穂を食べに行く餌場であったが、湛水によって水鳥が安心して夜を過ごせるねぐらになったとみられ、水田だけで最高約1,300羽が越冬した。冬期湛水は無農薬農法の一環として地元の営農組合が3年ほど前から取り組んでいるもので、除草剤を使用しないため、冬期から水田に水を入れて雑草の繁殖を防いでいる。当初は水を張る水田が広く分散していたが、作業効率を高めるために一カ所に集中させたことがコハクチョウを呼び寄せたらしい。こうした水田には田植え後に安来節で有名なドジョウの養殖も予定されている。安来市側にとっては無農薬米作りとドジョウの復活、それにコハクチョウが加わって喜ばしい事態であるが、水鳥のいない水鳥公園にとっては存続に関わる問題である。

 石川県加賀市にある登録面積10haの日本最小の条約湿地、片野鴨池でも似た状況がおきている。同池は網を投げ上げて飛来するカモ類を捕獲する坂網猟という伝統的猟法が江戸時代から続けられていることで知られており、片野鴨池観察館が保全の核となっている。この池は1970年代までは1万羽を越えるトモエガモが越冬していたが、現在は600-1,000羽に減っている。主要因は東アジア全体における急速な減少であるが、地域限定の要因として、カモ類が同池周辺に分散していることがあげられる。すなわち、かつてはカモ類が安全に過ごせる場所は同池しかなかったのに、現在では禁猟化によって周辺にカモ類が安全に生息できる場所が増えているからである。

 これらの湿地では水鳥にとって望ましい状況が生じたわけだが、それは啓発活動の場や伝統文化の消失につながっている。干潟の場合に典型的にみられるように、湿地はもともと遷ろいゆく生態系である。その管理も順応的であることが求められる。

(あんどう もとかず/JWCS理事・東京農業大学准教授)
会報No.49 2007 Vol.1 『JWCS通信』掲載

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