« オオタカの準絶滅危惧種への移行について  廣井 敏男 | トップページ | 水鳥の減少の喜ばしいケースも   安藤元一 »

2007年10月 3日 (水)

ヨウスコウカワイルカの絶滅   小原 秀雄

 亡くなられた神谷敏郎氏(注1)が心配していた通り、地球の歴史と関わりがあるアジアと南米にすむ古代カワイルカの一種、ヨウスコウカワイルカが絶滅したらしい(別記)。

 地球上から野生動物がまた1種消えた。2006年の11月から12月にかけて、棲息している中国の長江を延べ3500km調査を行なったが、1頭も発見されなかったという。

 中国の科学者は、この種についての調査を長い間続けてきた。1985年から86年には鯨類学者の粕谷俊雄氏によると、分布しているとみられた地域全てカバーしたと思われる1512kmを調べた。そのときのは243頭を推定数とみなされた。より古い記録では1916年の発見当時、季節移動をして春遅くの交尾繁殖のため小川へ行くとされている。冬季には見やすくふつう3~4頭、時には10~12頭に群れが見られ、スイギュウの子のような声を出すとされている。94年から3年間には10頭未満、97年には13頭、99年5頭、そして04年には1頭の目撃と報告されていた。しかし今回はついに見つからなかった。つまり刻一刻と絶滅への時を刻んでいったのであろう。目撃については、水質汚染もあって、発見が難しいのだとの説もあったが、まず絶滅は間違いあるまい。

 最高年令の記録に粕谷氏によると24才というから、生き残りはいるかもしれないが、これだけ少なくなると出会いや繁殖は難しくなる。飼育も難しく飼育下では長生きせず失敗例がある。

 餌はさまざまな魚であり、ナマズを食べていた個体が知られている。妊娠期間10~11ヶ月、3年ほどで性成熟するらしい。雌の方が大きく、歯からは原始的とみられ、目は小さく退化傾向があり、青灰色の背で腹は白い。中国では「長江の女神」といわれ直接に捕殺はまれだが、食物の魚などを人間が濫獲し、その他交通の激増による事故、水質汚染などが絶滅の原因とされる。

(注1)2004年7月永眠。著書に『川に生きるイルカたち』東京大学出版2004 など

(別記)カワイルカ類は原始的なイルカで淡水に棲息。南米に2種(ラプラタカワイルカ、アマゾンカワイルカ)、アジア南部に2種(ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカ)が、ヨウスコウカワイルカの他に現存する。大陸の移動とカワイルカの分布が関係あるとみられる。

(おばら ひでお/JWCS会長・女子栄養大学名誉教授)
会報No.48 2006 Vol.4 掲載

|

« オオタカの準絶滅危惧種への移行について  廣井 敏男 | トップページ | 水鳥の減少の喜ばしいケースも   安藤元一 »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/409162/8221763

この記事へのトラックバック一覧です: ヨウスコウカワイルカの絶滅   小原 秀雄:

« オオタカの準絶滅危惧種への移行について  廣井 敏男 | トップページ | 水鳥の減少の喜ばしいケースも   安藤元一 »