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2007年10月 3日 (水)

外来生物対策の問題点があらわに  羽山 伸一

 昨年(2006年)の年の瀬、麻布大学・宇根助教授がわが国におけるカエルツボカビ症初症例を確認したとの第1報を自宅で受け、背筋が寒くなるのを覚えた。カエルツボカビ症が両生類における過去、最悪の感染症と言われているからだ。

 その理由は、両生類に属する多くの種がこの病原体に感受性を有し(少なくとも93種の両生類に感染する)、しかもこの病原体の感染性が高く致死的である(単独でカエルを死に至らしめる)ことがあげられる。

 じつは、昨年の夏ごろから国際的な対策の動きが急ピッチで始まっているため、日本でも専門家を集めた対策会議を年明けに開こうと準備をしていたところだった。しかし、見つかってしまった以上、一刻も早く事態の深刻さを世論に伝える必要があった。そこで、対策会議へ参加を予定していた専門機関や団体の共同署名による「カエルツボカビ症侵入緊急事態宣言」を正月返上で作業を行い、1月13日に記者発表することができた。

 そもそもこのカエルツボカビ(Batrachochytrium dendrobatidis)は、2000年にIUCN(国際自然保護連合)SSC(種の保存委員会)が公表した「世界の侵略的外来種ワースト100」にもリストアップされ、近年の急激な両生類の衰退要因として注目されていた。わが国では、世界で最も厳しい法律のひとつと言われる外来生物法がその後施行され、カエルツボカビも規制の対象にすべきであった。しかし、この法律の基本指針では、肉眼で区別のつかない外来生物は指定できないこととされているのだ。

 また、両生類は動物愛護管理法の対象動物から除外されているために、取り扱い業者は自由にその売買が可能だ。つまり、両生類の販売実態はまったく把握できないのが現状なのである。これでは感染ルートの解明や対策は困難である。

 カエルツボカビ症の国内侵入が確認されたことによって、わが国の外来生物対策の構造的な問題が改めて浮かび上がってきたといえよう。

(はやま しんいち/JWCS理事・日本獣医生命科学大学准教授) 
会報No.49 2007 Vol.1 『JWCS通信』掲載

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