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2007年6月 6日 (水)

▼ 「野生生物を絶滅から守ること」 から脱却!?

          

◆ CITESのビジョンは、「野生生物を絶滅から守る」ことから脱却してしまうのでしょうか?

6月5日、今日から、第Ⅰ委員会と第Ⅱ委員会に分かれて議論が行われます。大まかにわけると、次のとおりです。

<第Ⅰ委員会> CITESの規制対象種のリストである附属書を改正する提案と、それに関連する条約の履行に関する議題が議論される。
<第Ⅱ委員会> それ以外、条約の戦略や履行に関する議題が議論される。

        

第Ⅱ委員会では、CITES戦略的ビジョン2005-2013と、予算について議論が始まりました。
お金の問題は、締約国、特に日本とアメリカのように、CITES事務局にもっとも多額のお金を出している国の政府にとっては、ある意味で一番重要な問題かもしれません。
お金はできるだけ出したくない。出すなら自国の国益に適うような使途で出したいというのが正直なところでしょう。
しかし、それを地で行ってしまうと、お金の力で自国に有利になるよう事務局に有言・無言の圧力をかけることにもなりかねないのですが。
戦略的ビジョンをどうするかは、予算にも関係します。ビジョンを達成するには、これまでと比べて100%増の予算が必要とされているからです。

戦略的ビジョンは、お金の問題だけでなく、CITESのポリシーを左右する問題です。議論の中でアメリカが指摘していましたが、相矛盾するところのある2つの課題をどう調整するかが論争になっているのです。2つの課題とは、次の通りです。

第1に、伝統的な野生生物保全のための法システムをどう履行していくかということ。
第2は、CITES誕生以降状況の変化があったこと、つまり、生物多様性の保全と人類の福祉向上という問題との関係でCITESがどのようなポリシーをとるべきかということです。

    

ビジョン案では、持続可能な野生生物取引を推進して持続可能な開発と貧困低減に貢献することが強く主張され、またCITESのターゲットから絶滅危惧種という枠を外し、商業価値のある木材種と漁業対象種の取引管理に力点をシフトしていくことが提案されています。
これに対して、SSN(種の保存ネットワーク)などのNGOは強く反発しています。

現在のビジョン案は、CITESの本来の目的(国際取引を規制して種の絶滅を回避する)を踏み外し、独自の存在意義を失わせるものだからです。(実は、今回のビジョン案のさらに前の草案段階ではもっと極端で、野生生物保全がどこかへ行ってしまったような内容でした)。

    

そのほか、より厳しい国内措置(CITESに違反した国に対して、CITESのルールを超えた独自の厳しい措置をとる権利が締約国に保障されている)を制限することが提案されているなどの問題もあります。この措置の例としては、アメリカの貿易制裁がありますが、それをおそれて台湾がサイ角の、日本がタイマイ(ウミガメの一種)の輸入を禁止した例があります。

    

結局、予算、ビジョンそれぞれについて作業部会が編成され、そこで妥協案がドラフトされることになりました。後日、作業部会から委員会に草案が出され、再度議論されることになります。

    

(JWCS事務局長 坂元雅行)

               

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