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2007年6月15日 (金)

象牙取引が決まるまで

6月14日、第Ⅰ委員会の午前のセッションで、アフリカゾウ関連議題の討議が始まりました。
07610

◆象牙取引再開提案
冒頭、ザンビアとチャドの大臣から、閣僚級の交渉の結果が報告されました。EU修正案をベースにしたもので、内容は以下のとおりですが、簡潔に言うと、既に決まった60トンと2007年1月末時点の在庫を合わせて、(国別に)1回限りの輸出を行う。輸入できるのは今のところ日本のみ(輸出までに中国が輸入国として承認されていれば、中国も参入できることになる)。この1回限りの輸出が行われてから9年間は、現在附属書Ⅱのゾウについては象牙取引再開を提案してはならない」というものです。

・ ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエの附属書)注釈部分)の改正
Ø 常設委員会で認められた60トンに、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエ各国の2007年1月31日時点の政府在庫でCITES事務局の検証を受けたものを合わせて、1回限りの輸出を認める。
Ø 上記輸出後の9年間、既に附属書Ⅱに掲載されているアフリカゾウ個体群(ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエ)の象牙取引再開は9年間提案してはならない(モラトリアム。現実にはそれ以降の象牙取引再開提案は早くてCoP18(2019年開催見込み)となるだろう)
Ø 輸入を許されるのは、決議10.10を満たす輸入国と指定された国(現時点では日本のみ)。
Ø 輸入国あるいは輸出国に不履行があった場合、または他のゾウ個体群に対する悪影響が証明された場合は、事務局の勧告に基づき、常設委員会は取引の一部又は全部を停止させることができる。
Ø 60トン以外の追加分については、常設委員会で条件の成就を確認する。
・ モラトリアム以降の象牙取引再開提案について)常設委員会は締約国会議の賛同を得つつ、事務局の補佐のもと、遅くともCoP16には象牙取引承認のための意思決定手続を提案する。
・ 常設委員会は、MIKE、ETIS、「象牙流通管理行動計画」(アクションプラン)の履行状況に基づき、ゾウの状況、取引状況、違法取引の影響を包括的に評価する。
・ アフリカゾウ生息国は、法執行体制の強化、アクションプランの履行、能力開発等を続けること。
・ CITES事務局は、アクションプラン履行のためのアフリカゾウ基金を設置すること。
・ 締約国やNGOら、取引国ら、象牙業界、国際団体、NGOはアフリカゾウ基金とMIKEのために資金協力すること。

この修正提案に対し、日本が発言し、この案の起草に関与することができなかったので、1点修正を提案したいとして、常設委員会で承認された60トンはこの修正案から明確に切り離すべきことを主張しました。売り手はアフリカ諸国、買い手は日本である。追加分についてビジネス的にこれらの象牙を日本だけに売らないというならそれは仕方がないが、60トンは既に決まったことなのだから、追加分とは別口で取引されるべきであるというのです。60トンだけは早期に、中国などの関与なしにすべて買いつけたいという意図と思われます。追加分は事務局の在庫検証も受けなければならず、常設委員会の条件成就の承認も必要となります。当然、輸入時期は相当遅れ、早くても来年の終わり頃になるでしょう。象牙業界のためにそれは避けようとした修正案でしょう。
次にアメリカは、ジンバブエでは密猟と違法取引の問題が著しいので、象牙輸出を認めることには賛成しがたい、ジンバブエを現時点で削除することまでは求めなが、57回常設委員会がジンバブエに改善が認められない限りは輸出を認めないことを求めたい、と述べました。また、生息国間の対話、アクションプランのための基金は予算面の負担が大きい、地域レベルの行動計画はSSCによっても取り組まれてきている、これまで、1つの拠出者だけでは、ゾウの保全のために十分な資金を提供できなかった。新たな資金メカニズムを考えるべき。代金の10%を拠出するなどの策が必要だ、と主張しました。
EUは、日本の主張は受け入れられない。常設委員会で60トンが決まったこと自体が、日本にとって気分がよいのではないのかと発言しました。
ケニアは、この取引再開の影響が心配であること、修正案が1回限りの輸出とされたのはそのためであると発言、また日本の提案は修正案の採択を複雑にするものであり受け入れられないと述べました。
中国も発言し、現在のところ輸入国は日本だけであるが、中国は来年の6月か7月に開催される常設委員会で輸入国として承認められることを期待している、したがって。日本の修正は受け入れられないと主張しました。続けて、ボツワナも日本の修正は認められないと発言しました。
まったく指示がない状況で、日本はアフリカ諸国の修正提案を受け入れると発言、議長はコンセンサスでチャド・ザンビア修正案を採択しました。
その後、ナミビアは、ゾウのみが他の附属書Ⅱ掲載種と異なった扱いをされるべきでないことを銘記したいと発言。
CITES事務局は、 アメリカの指摘したジンバブエの問題については、輸出入国に不履行があった場合の問題(事務局から常設委員会に取引停止を勧告する)として対処したいと説明しました。
EU、南ア、ナミビアの修正案はそれぞれ撤回されました。

◆アクションプラン
事務局が現「象牙流通管理行動計画」(アクション・プラン)の修正案を提示しました(Doc.53.1 Addendum)。アフリカ大陸内やアジアに見られる「無規制状態の国内象牙市場」への対策が強化しようとするものです。事務局の修正案は、プランを作るべき国をアフリカゾウ生息国だけでなく、アジアゾウ生息国、その他の国にまで広げています。また、プランの履行状況の報告違反に対する制裁措置を具体化しています。
アメリカは、アクションプランを策定すべき国の拡大に反対しました(アメリカも含まれることになります)。特に象牙占有権限の立証責任の転換が求められていることについて、このような措置をとるとアメリカでは憲法違反になると主張しました。
ナミビアは、不履行に対する制裁措置の規定を削除すべきである、すべてのCITES掲載種の取引を停止するのは過剰な措置であると主張しました。
ドイツは、事務局案を支持する。それをベースにケニアの何らかの提案を検討できる。
ルワンダは、ナミビアが削除を求める部分は、既に採択されていたバージョンにも規定されていたものであり、削除は妥当でないと指摘した。
ケニアは、事務局案をベースにそれを強化する修正を加えたいと指摘しました。
事務局は、ルワンダと同旨。また、原案を採択してもらいたいと発言。
議長は、いったんは事務局とケニアで午後の全体会までに修正案を用意することを提案したものの、事務局と相談し、時間がないという理由で事務局案にしぼったコメントを求めました。
タイは、自国は、優先順位を置く4カ国のひとつだが、4カ国に絞るのは不適切。国の特定を削除すべきと発言。ウガンダ、タンザニアは事務局案を支持。結局、議長が、ケニアに申し訳ないとしつつ、コンセンサスを求め、反対がなかったため採択となりました。
ケニアは、別に提案していた決議10.10の改正案(Doc.53.4)を撤回しました。

◆今回の決定の評価は・・・
 先日のブログにも書きましたが、妥協案でコンセンサスにしたほうがよかったのか、投票に付したほうがよかったのかの判断は難しいものがあります。しかし、現実となった結果については次のように言えるでしょう。このことをメディアにもリリースしました。

「1989年の象牙取引禁止以来かつてないほどの規模の象牙の違法取引が発生しており、しかも犯罪組織がこれに関わっていることが、今回の会議で共通認識となった。そのような中で、6月2 日の常設委員会で決まった60トンを含め100数十トン以上になると推測される象牙輸出を認めたことは受け入れがたい。合法取引の再開は、既に蔓延している違法取引のさらなる隠れ蓑になり、ゾウの生息国における密猟監視はさらなる困難を強いられるだろう。1回の輸出と引き換えに決定されたモラトリアム(2019年の締約国会議まで)の期間に、関係国は急ぎ密猟や違法取引の取締を強化すべきだ。また、誰かが象牙を買おうとする限りゾウの密猟や違法取引はなくならないことを日本の消費者に訴えたい。」

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