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2007年6月12日 (火)

▼ トラの飼育繁殖は、トラの保全に貢献するのか?



◆ 生息地内保全・生息地外保全の研究提案、否決される。



6月11日、「生息地内保全と生息地外保全との関係」 に関する議論が第Ⅱ委員会で行われました。生息地外保全とは、生息地ではないところでの飼育繁殖がその中心。中国で盛んなトラの飼育繁殖をさらに推進しかねない問題です。

その、飼育繁殖を中心とする生息地外保全は、生息地内保全に対して「利益」となるのか、「リスク」となるのかがこれまでに動物委員会で議論され、ケーススタディーもとりあげられてきました。


「利益」とは、繁殖個体を生息地に再導入するとか、繁殖個体(から得られたもの)を取引して野生個体への密猟圧を減らすとか、繁殖で得られた利益を生息地保全に使うなど。


「リスク」とは、かえって野生個体のロンダリングが進むとか、飼育繁殖はビジネスになるためそこに資金が集中し生息地保全がおろそかになることなどです。


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今回は、CITESでこの研究をさらに進めるかどうかが議論されました。動物委員会のケーススタディー検討でも、本当に生息地内保全に利益になるかどうかは、現在入手できるデータに基づく限り、これ以上研究しても明らかにすることは難しいと示唆されていました。SSNなどのNGOは、そのような研究に時間と資金を使わず、生息地内保全により集中していくべきだという意見です。



各国の議論を聞いていても、決議で、生息地外保全は生息地内保全に貢献できるよう各国が任意に実行すべきだと既に言っているのだから、もうこの話はいいのではないかという雰囲気でした。



これに対して中国は、国が異なれば哲学も異なる、生息地外保全と生息地内保全のどちらが原則とは言えず(これは生物多様性条約の前文にも反する見解で、初めて聞きました)、保全の両面だと強気でした。中国の発言は、明らかにトラ・ファームやクマ・ファームの推進を念頭に置いたものです。


結局、投票になり、生息地内保全と生息地外保全との関係の研究は打ち切られることになりました。飼育繁殖の推進には締約国がある程度慎重な姿勢を見せていることがうかがえます。



(JWCS事務局長 坂元雅行)



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▼ トラを守れるか? 中国とインドの大問題!!


明日、6月12日にトラの問題が審議される予定のため、ここ数年の経緯をふりかっています。 前半はこちらへ



◆ 中国の問題

チベット自治区における著しいアジアン・ビッグキャットの違法取引が起きていました。常設委員会は中国に法執行努力の状況と国内におけるトラの部位の現に存在する あるいは 意図している利用について報告するよう勧告しました。
「意図している利用」とは、今や5000頭を超え、年間800頭から1000頭の子トラが出産される、飼育トラから虎骨や毛皮を生産して取引することを念頭においています。CoP14では、中国の報告と事務局の報告を検討し、不履行に対する制裁措置をとるかどうかを議論します。



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国際動物福祉基金のレポートに掲載された写真。全身骨格が浮かぶ虎骨酒の水槽があるトラファームで展示されていた。



◆ インドの問題

インドの問題は、アジアン・ビッグキャットのもっとも主要な生息国であるにもかかわらず、中央政府レベルで野生生物犯罪への対策をとる行政組織が不在だということです。
インド政府は、1994年以来、「作る」と繰り返しながらここまできてしまいました。最近、中央野生生物犯罪局がようやく正式に発足しましたが、未だ動き始めていません。CoP14では、その後の状況が報告され、CITESの決議を履行しているといえるかどうかが議論されます。



Tigercoallitionbooth

タイガーコリアクションのブース、少しでしたが、時間を見つけ、ブース番のボランティアもしました。


さて、明日、6月12日の審議は、ゾウとトラの揃い踏みになるかもしれません。緊張感のある1日になりそうです。



(JWCS事務局長 坂元雅行)


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▼ 最大の危機に瀕する トラ


◆ 最大の危機に瀕するトラ

おそらく明日、6月12日には、「アジア大型ネコ科動物」(アジアン・ビッグキャット)が第Ⅱ委員会で議題に上る予定です。その議論に先立って、この問題に関するここ数年の経過を振り返っておきたいと思います。


アジアネコ科動物、特にトラについて、野生の個体数が減少しており、ひどい違法取引が続いていると2005年頃から強く指摘されるようになり、トラがかつてない絶滅の危機に瀕していることは、CITESでは既に共通認識になりつつあります。



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タイガー・コアリションというNGOの連合体が会場前に設置した縦4mくらいありそうな看板

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近くで見ると、なんとトラの保全を訴える人の顔写真のモザイクでした!!


◆トラの保全に対するCITESの対応

ずっと遡れば、CITESでは1993年以来トラの保全について議論され、行動がとられてきました(1994年のCoP9で「トラの保全と取引」の決議が採択)。それにもかかわらず、トラの状況はよくならず、かえって悪くなってきました。CITES事務局は、密猟と違法取引を防ぐ努力を続けるということ以外の保全策も検討したといいます。

まず、ハンティングを認めてそこから得られる利益を保全に使うという方法(よくゾウについて言われる「持続可能な利用」です)は、ハンティングが認められていないトラの密猟を防ぐ生息国の法執行力が弱すぎるため、事務局は不適切という意見です。

飼育繁殖したトラから虎骨などを生産して取引するという方法は、そのような飼育繁殖が十分需要に応えられるか、経済的に成り立つか、密猟品がロンダリングされるのではないかという懸念があるため不適切という意見を維持してきました。



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タイガーコアリションのサイドイベントで熱弁を振るうバルミック・タパ氏。30年以上トラの保全に取り組んできた。


2005年の常設委員会で、既に採択されている決議の履行状況をトラの各生息国に提出させることをアメリカが求め、採択されました。しかし、その後提出状況が悪かったため、2006年の常設委員会では、事務局はトラの保全に関する高官レベルのサミットの開催を、アメリカは生息国の決議履行状況が評価されるべきであり、履行しない国に対しては、取引停止の制裁措置や、CITES事務局長を含む高官レベルのミッションの派遣を提案しました。


◆ CoP14、今回の討議のポイント

アメリカもCITES事務局も、生息国はトラの保全に対する十分な政治的意思と優先的な法執行努力にかけているのではないかと疑問視していたのです。
これに対して、中国とインドは、高官レベルのサミットを拒否、政治的意思にも法執行努力にもかけるところはないと主張しました。結局、問題解決のための合意に達することができず、今回のCoP14で議論されることになりました。

特に焦点となるのは中国とインドの対応です。
 



中国とインドについて、続きはこちらへ

 



(JWCS事務局長 坂元雅行)

 


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