ゾウとロリスと日本政府(第14回ワシントン条約締約国会議報告)

2007年6月18日 (月)

6月のCITESで決まったこと

◆附属書改正提案の結果
CITESで規制される種のリストを変更する議案(附属書改正提案)の結果は、次のとおりです。


提案1 スローロリス(提案国:カンボジア) 附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案2 ボブキャット(オオヤマネコ)(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱから削除
→否決
提案3 ヒョウ(提案国:ウガンダ) (原)附属書ⅠからⅡへ移行(50頭の年輸出枠)
→撤回(ただし、附属書Ⅰのまま年間28頭の輸出枠付で輸出をする提案(附属書改正提案ではない)として出しなおし→可決)
提案4 アフリカゾウ(提案国:ボツワナ・ナミビア) (原)ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエのゾウについて象牙の年間輸出枠付輸出
提案5 アフリカゾウ(提案国:ボツワナ) (原)ボツワナのゾウについて在庫象牙40トンの1回限りの輸出、それに続く年8トンの輸出枠付象牙輸出等 
提案6 アフリカゾウ(提案国:ケニア・マリ) (原)20年間の象牙輸出停止
→(修正)提案4.5.6に対する修正として条件付1回限りの政府在庫輸出→コンセンサス採択
(アルジェリアは、全体会で昨年の後半の半年で500頭のゾウを失ったことと、この厳しい状況への支援を求めた。)
提案7 アフリカゾウ(提案国:タンザニア) タンザニアのゾウを附属書ⅠからⅡへ移行
→撤回(会議前)
提案8 ビクーニャ(提案国:ボリビア)附属書Ⅰ掲載は維持しつつ、3つの個体群由来という限定を撤廃し、全個体群由来の毛製品を輸出
→コンセンサス採択
提案9 アカシカの亜種(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→否決
提案10 エドミガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→コンセンサス採択
第Ⅰ委員会では否決されていたが、アルジェリアが全体会での討議再開を求めた。ケニアはEUが反対したために第1委員会で敗れたと述べた。コンセンサスで再開後、EU原産国のすべてが支持しており、取引の影響についても十分説明を受けたので、賛成すると発言。附属書Ⅰへの掲載となった。
提案11 ドルカスガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→撤回
提案12  リムガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案13 クロカイマン(提案国:ブラジル)附属書ⅠからⅡへ移行
→コンセンサス採択
提案14 メキシコドクトカゲ(提案国:グァテマラ)附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案15 ニシネズミザメ(提案国:EUを代表してドイツ)附属書Ⅱへ掲載
→否決
提案16 アブラツノザメ(提案国:EUを代表してドイツ)附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で否決されていたが、EUが全体会での討議再開を求めた。アイスランドの要求による秘密投票で再開が可決された後、討議が行われ、アイスランドの要求による秘密投票が行われた結果、48%賛成でまたも否決。
提案17 ノコギリエイ科全種(提案国:ケニア、アメリカ)附属書Ⅰへ掲載
→1種を生きたものを受け入れ可能かつ適切な箇所に保全の目的で取引する場合に限定して附属書Ⅱに掲載、残りの種は附属書Ⅰに掲載と修正し、可決
提案18 ヨーロッパウナギ(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→可決
提案19 Banggai cardinalfish(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案20 アメリカイセエビ(提案国:ブラジル) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案21 サンゴ属全種(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で化石サンゴを除く修正後、可決されていたが、全体会で、秘密投票の結果、討議再開。その後日本が要求した秘密投票の結果、52%賛成で再度の可決となった
提案22 Agave arizonica(提案国:アメリカ) 附属書Ⅰから削除
→コンセンサス採択
提案23 Nolina interrata(提案国:アメリカ)附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案24 Pereskia spp. and Quiabentia spp.(提案国:アルゼンチン) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案25 Pereskiopsis spp.(提案国:メキシコ) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案26 Cactaveae spp. and Orchidaceae spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物の範囲を一部拡大
→修正後コンセンサス採択 関連決定あり
提案27 略(多数の分類群にわたる)(提案国:スイス(植物委員会の求めによる)) 取引が規制される部分・派生物の範囲を拡大
→コンセンサス採択
提案28 Shortia galacifolia(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案29 Euphobia spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物から一定の形態と大きさのものを除外
→修正後コンセンサス採択 関連決定あり
提案30 Caesalpinia echinata(提案国:ブラジル) 附属書Ⅱへ掲載
→修正後、コンセンサス採択
提案31 Dalbergia retusa(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案32 Dalbergia stevensonii(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案33 Cedrela spp.(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回 関連決定あり
提案34 Orchidaceae spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引規制対象から種間、属間のハイブリッドを除外
→否決
提案35 Orchidaceae spp.(提案国:スイス(植物委員会の求めによる)) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物の定義を単純化
→コンセンサス採択
提案36 Taxus cuspidata (提案国:アメリカ) 取引規制対象から人工的なハイブリッド、栽培変種を除外
→撤回 関連決定あり
提案37  Taxus chinensis, T. cuspidate, T. fauna and T. sumatrana(提案国:スイス(常設委員会の求めによる)) 1種について、取引規制対象から人工的なハイブリッドを除外
→修正後、コンセンサス採択

◆CITES CoP14の結果の評価
 CITESの問題は大きく、ポリシー(政策)、履行と執行、個々の種にかかわる問題に分かれます。
 このブログでは、象牙取引、トラ、スローロリスなど個々の種にかかわる問題を中心に報告してきましたが、合間にそれ以外の話題もできるだけ紹介しました。そこからチラリと感じていただけたかどうかわかりませんが、今回の会議は、実はCITESのポリシー(政策)を大きく問うものでした。キーワードは、CITESと「暮らしあるいは生計(livelihood)」でした。暮らしというと漠然としていて、生計というと(暮らしを立てるための)お金と露骨に聞こえますが、後者のニュアンスがピタリときます。CITESは、条約立法の精神が死ぬか生きるかという節目にあるのです。このあたりの評価は、まとめて次号会報(別刷版)で詳しく論じてみようと思っています。
 

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2007年6月16日 (土)

6月14日CITES最終日

◆最終日の全体会は昼過ぎには終わることも多いのに・・・
 2週間とう長丁場のCITES CoP14も、いよいよ最終日となりました。委員会で決まったことが全体会で最終的に採択されるわけですが、議長が結果を読み上げ、やや形式的に採択が進んでいくことが通例です。ただし、それぞれの議題について3分の1の賛成が得られれば、討議の再開ができます。今回もいくつかの種の附属書改正提案についてそうなるだろうと予想されていましたが、実際はそれ以外の附属書改正提案以外の2つの議題で大もめになりました。実質的にブロックしたのはいずれも日本です。
まず、「附属書の定期的見直し」の議題です。第Ⅰ委員会でナガスクジラなど大型クジラについては、見直しの対象としないという決定がされていました。この議題についてパラオやカリブ海諸国などが議論を再開する提案をしました。これらの国が日本政府の意向に沿った発言をしているということには、(公式にどうかは別として)疑いを挟む人はいないでしょう。そして投票になった結果、否決されました(3分の1未満)。しかし、今度は、議長の議事進行手続がおかしいとして異議が相次ぎ、討議が空転。議長の議事進行が妥当かどうか投票されましたが、異議は否決。それにもまた異議が出され、さらに討議は空転、昼休みを挟むことになりました。締約国会議事務局がこれまでの手続について説明をしましたが、それでも島嶼国らから意見が相次ぎました。パラオは、わざわざ「これは捕鯨の問題ではない、附属書の定期的見直しは決められた手続である」と述べ苦笑を誘えば、日本は、パラオに同情する、その意見に同感であるとすました発言をしていました。結局、早く次の議題の討議に移るべきだという提案が出され、投票になった結果、過半数を大きく上回り、ようやく次の議題に移りました。非常に非生産的な時間の浪費と感じました。

今回の会議では、戦略ビジョンとそれに伴う予算増が大きな問題でした。「予算を要する事業」という議題について、事務局の50%増提案に対して、日本は3%、EUやメキシコは7.5% 増を主張した。日本は投票を求めたが、コンセンサスを目指すべきだという意見が相次ぎ、投票するか、しないかを投票した結果、否決、さらにコンセンサスが目指されることとなりました。コンセンサスにしないと、反対した国がそれを口実に、後日負担金を滞納するおそれがあるからです。日本は、差引勘定が2007年予算で5.01%あるので、そこから4.5%を組み込み、3%の実質増を合わせて7.5%とすればよいという妥協になっていないような妥協案を提案しました。
討議が続いた結果、日本は譲らず、メキシコや予算増に反対していたアメリカも、7.5%増のコンセンサスを説得しましたが、日本は同じことは繰り返したくない、7.5%の実質増のコンセンサスには絶対同意しないという態度を貫きました。その後、何度も議論は空転し、事務局は、こんなことはCITESの歴史始まって以来のこと、予算を決めずに家に帰れないと頭を抱え、議長は苦肉の策の議長案を出しましたが、あまりに灰色の表現のため、内容がわからないという意見が相次ぐ始末でした。
とうとうコンセンサスを諦めて再度投票をしかないというところまで行きましたが、イギリスが、投票するなら昨日までの15%増案を投票にかけるべきだと主張しました(7.5%はコンセンサスのための妥協案だったといことです)。非常に険悪な雰囲気になってきました。
さらに議事を中断した後、予算ワーキンググループの議長から、6%増でのコンセンサスを提案。多数の国が、条約の危機だ、野生生物種の保全のための条約の役割を考え、国際協調の姿勢をと訴えました。議長が、祈るような目で日本に意見を求めたところ、日本は、「申し訳ないがコンセンサスには乗れない。記録には残さないで欲しいが、負けてもいいから投票を求めざるを得ない、記録上はただ投票を求めたということにして欲しい」と述べ、会場は大笑いになりました。この発言は、日本を支持することに事前に合意していたと思われるアジア諸国、中南米諸国に対して、「もはや可決をブロックするな」というメッセージだったのでしょう。発言していた大使館の人に、3%以上を決める裁量権が認められていなかったことは明らかで、私自身はその人個人に対しては気の毒に思いました。しかし、日本政府の態度としては非協調的、わがままという印象が強く残りました。日本のイメージは大変悪くなったでしょう。
投票の結果、86%の多数で可決となりました。
 この後、ようやく他の議題に移りました。
 附属書改正提案で、全体会での討議再開申立があった種についての議論は次のとおりでした。
提案10 エドミガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→コンセンサス採択
第Ⅰ委員会では否決されていたが、アルジェリアが全体会での討議再開を求めた。ケニアはEUが反対したために第1委員会で敗れたと述べた。コンセンサスで再開後、EU原産国のすべてが支持しており、取引の影響についても十分説明を受けたので、賛成すると発言。附属書Ⅰへの掲載となった。

提案16 アズラツノザメ(提案国:EUを代表してドイツ)附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で否決されていたが、EUが全体会での討議再開を求めた。アイスランドの要求による秘密投票で再開が可決された後、討議が行われ、アイスランドの要求による秘密投票が行われた結果、48%賛成でまたも否決。

提案21 サンゴ属全種(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で化石サンゴを除く修正後、可決されていたが、全体会で、秘密投票の結果、討議再開。その後日本が要求した秘密投票の結果、52%賛成で再度の可決となった

 全体の附属書改正提案の結果は、後日お知らせしたいと思います。
◆次回締約国会議(CoP15)の開催国
カタールが、首都ドーハでの開催に名乗りを上げ、採択されました。前回もアジア地域でしたが(タイ)、中東では始めての開催となります。
 これで、議題は終了。オランダ環境大臣の挨拶で閉会となりました。午後6時50分。最終日の全体会としては、今までにない長丁場でした。
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・閉会式です。

 まもなく、ハーグを離れます。日本から改めてメッセージを載せたいと思います。

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2007年6月15日 (金)

象牙取引が決まるまで

6月14日、第Ⅰ委員会の午前のセッションで、アフリカゾウ関連議題の討議が始まりました。
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◆象牙取引再開提案
冒頭、ザンビアとチャドの大臣から、閣僚級の交渉の結果が報告されました。EU修正案をベースにしたもので、内容は以下のとおりですが、簡潔に言うと、既に決まった60トンと2007年1月末時点の在庫を合わせて、(国別に)1回限りの輸出を行う。輸入できるのは今のところ日本のみ(輸出までに中国が輸入国として承認されていれば、中国も参入できることになる)。この1回限りの輸出が行われてから9年間は、現在附属書Ⅱのゾウについては象牙取引再開を提案してはならない」というものです。

・ ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエの附属書)注釈部分)の改正
Ø 常設委員会で認められた60トンに、ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエ各国の2007年1月31日時点の政府在庫でCITES事務局の検証を受けたものを合わせて、1回限りの輸出を認める。
Ø 上記輸出後の9年間、既に附属書Ⅱに掲載されているアフリカゾウ個体群(ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエ)の象牙取引再開は9年間提案してはならない(モラトリアム。現実にはそれ以降の象牙取引再開提案は早くてCoP18(2019年開催見込み)となるだろう)
Ø 輸入を許されるのは、決議10.10を満たす輸入国と指定された国(現時点では日本のみ)。
Ø 輸入国あるいは輸出国に不履行があった場合、または他のゾウ個体群に対する悪影響が証明された場合は、事務局の勧告に基づき、常設委員会は取引の一部又は全部を停止させることができる。
Ø 60トン以外の追加分については、常設委員会で条件の成就を確認する。
・ モラトリアム以降の象牙取引再開提案について)常設委員会は締約国会議の賛同を得つつ、事務局の補佐のもと、遅くともCoP16には象牙取引承認のための意思決定手続を提案する。
・ 常設委員会は、MIKE、ETIS、「象牙流通管理行動計画」(アクションプラン)の履行状況に基づき、ゾウの状況、取引状況、違法取引の影響を包括的に評価する。
・ アフリカゾウ生息国は、法執行体制の強化、アクションプランの履行、能力開発等を続けること。
・ CITES事務局は、アクションプラン履行のためのアフリカゾウ基金を設置すること。
・ 締約国やNGOら、取引国ら、象牙業界、国際団体、NGOはアフリカゾウ基金とMIKEのために資金協力すること。

この修正提案に対し、日本が発言し、この案の起草に関与することができなかったので、1点修正を提案したいとして、常設委員会で承認された60トンはこの修正案から明確に切り離すべきことを主張しました。売り手はアフリカ諸国、買い手は日本である。追加分についてビジネス的にこれらの象牙を日本だけに売らないというならそれは仕方がないが、60トンは既に決まったことなのだから、追加分とは別口で取引されるべきであるというのです。60トンだけは早期に、中国などの関与なしにすべて買いつけたいという意図と思われます。追加分は事務局の在庫検証も受けなければならず、常設委員会の条件成就の承認も必要となります。当然、輸入時期は相当遅れ、早くても来年の終わり頃になるでしょう。象牙業界のためにそれは避けようとした修正案でしょう。
次にアメリカは、ジンバブエでは密猟と違法取引の問題が著しいので、象牙輸出を認めることには賛成しがたい、ジンバブエを現時点で削除することまでは求めなが、57回常設委員会がジンバブエに改善が認められない限りは輸出を認めないことを求めたい、と述べました。また、生息国間の対話、アクションプランのための基金は予算面の負担が大きい、地域レベルの行動計画はSSCによっても取り組まれてきている、これまで、1つの拠出者だけでは、ゾウの保全のために十分な資金を提供できなかった。新たな資金メカニズムを考えるべき。代金の10%を拠出するなどの策が必要だ、と主張しました。
EUは、日本の主張は受け入れられない。常設委員会で60トンが決まったこと自体が、日本にとって気分がよいのではないのかと発言しました。
ケニアは、この取引再開の影響が心配であること、修正案が1回限りの輸出とされたのはそのためであると発言、また日本の提案は修正案の採択を複雑にするものであり受け入れられないと述べました。
中国も発言し、現在のところ輸入国は日本だけであるが、中国は来年の6月か7月に開催される常設委員会で輸入国として承認められることを期待している、したがって。日本の修正は受け入れられないと主張しました。続けて、ボツワナも日本の修正は認められないと発言しました。
まったく指示がない状況で、日本はアフリカ諸国の修正提案を受け入れると発言、議長はコンセンサスでチャド・ザンビア修正案を採択しました。
その後、ナミビアは、ゾウのみが他の附属書Ⅱ掲載種と異なった扱いをされるべきでないことを銘記したいと発言。
CITES事務局は、 アメリカの指摘したジンバブエの問題については、輸出入国に不履行があった場合の問題(事務局から常設委員会に取引停止を勧告する)として対処したいと説明しました。
EU、南ア、ナミビアの修正案はそれぞれ撤回されました。

◆アクションプラン
事務局が現「象牙流通管理行動計画」(アクション・プラン)の修正案を提示しました(Doc.53.1 Addendum)。アフリカ大陸内やアジアに見られる「無規制状態の国内象牙市場」への対策が強化しようとするものです。事務局の修正案は、プランを作るべき国をアフリカゾウ生息国だけでなく、アジアゾウ生息国、その他の国にまで広げています。また、プランの履行状況の報告違反に対する制裁措置を具体化しています。
アメリカは、アクションプランを策定すべき国の拡大に反対しました(アメリカも含まれることになります)。特に象牙占有権限の立証責任の転換が求められていることについて、このような措置をとるとアメリカでは憲法違反になると主張しました。
ナミビアは、不履行に対する制裁措置の規定を削除すべきである、すべてのCITES掲載種の取引を停止するのは過剰な措置であると主張しました。
ドイツは、事務局案を支持する。それをベースにケニアの何らかの提案を検討できる。
ルワンダは、ナミビアが削除を求める部分は、既に採択されていたバージョンにも規定されていたものであり、削除は妥当でないと指摘した。
ケニアは、事務局案をベースにそれを強化する修正を加えたいと指摘しました。
事務局は、ルワンダと同旨。また、原案を採択してもらいたいと発言。
議長は、いったんは事務局とケニアで午後の全体会までに修正案を用意することを提案したものの、事務局と相談し、時間がないという理由で事務局案にしぼったコメントを求めました。
タイは、自国は、優先順位を置く4カ国のひとつだが、4カ国に絞るのは不適切。国の特定を削除すべきと発言。ウガンダ、タンザニアは事務局案を支持。結局、議長が、ケニアに申し訳ないとしつつ、コンセンサスを求め、反対がなかったため採択となりました。
ケニアは、別に提案していた決議10.10の改正案(Doc.53.4)を撤回しました。

◆今回の決定の評価は・・・
 先日のブログにも書きましたが、妥協案でコンセンサスにしたほうがよかったのか、投票に付したほうがよかったのかの判断は難しいものがあります。しかし、現実となった結果については次のように言えるでしょう。このことをメディアにもリリースしました。

「1989年の象牙取引禁止以来かつてないほどの規模の象牙の違法取引が発生しており、しかも犯罪組織がこれに関わっていることが、今回の会議で共通認識となった。そのような中で、6月2 日の常設委員会で決まった60トンを含め100数十トン以上になると推測される象牙輸出を認めたことは受け入れがたい。合法取引の再開は、既に蔓延している違法取引のさらなる隠れ蓑になり、ゾウの生息国における密猟監視はさらなる困難を強いられるだろう。1回の輸出と引き換えに決定されたモラトリアム(2019年の締約国会議まで)の期間に、関係国は急ぎ密猟や違法取引の取締を強化すべきだ。また、誰かが象牙を買おうとする限りゾウの密猟や違法取引はなくならないことを日本の消費者に訴えたい。」

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2007年6月14日 (木)

アフリカゾウとトラの議論

◆象牙取引再開提案の概要とこれまでの経過
6月13日、第Ⅰ委員会でアフリカゾウの附属書改正に関する3つの提案およびそれらの修正提案が審議されることになりました。
3つの提案とは、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカ4カ国のゾウについて、割当量を決めて毎年象牙を輸出することなど求めるボツワナ・ナミビア提案(提案4)、ボツワナのゾウについて40トンの未加工象牙在庫の1回での輸出、その後は毎年8トン以内の輸出枠以内での輸出、その他商業目的での象牙製品などの輸出を求めるボツワナ単独提案(提案5)、象牙取引の20年間モラトリアムなどを求めるケニア・マリ提案(提案6)です。
 また、昨日(6月12日)、提案4,5(取引再開提案)に対してEU、南アフリカ、ナミビアがそれぞれ修正提案を、提案6(モラトリアム提案)に対してケニアが修正提案を提出していました。
 昨日、常設委員長委員長が仲介の労をとり、関係国間でコンセンサスをめざした交渉が行われましたが物別れに終わったものです。

◆閣僚級交渉へ 第1委員会の討議はストップ
 午前9時に予定された第Ⅰ委員会は、9時半、10時と開始時間が延ばされていきました。象牙取引問題のためにというわけではありませんが、今日は閣僚級会合が予定され(私が知る限り、CoP9以降はこのようなことはありませんでした)、各国の環境大臣が続々と到着しています。アフリカゾウの問題でも、昨日の事務レベルの交渉が結実しなかったものの、今日になって閣僚レベルでの話し合いが行われています。その結果を見るために委員会がストップしているのです。10時20分になっても閣僚たちの交渉は続き、ゾウの議論は午後となりました。

 午後1時に議論が再開されましたが、依然として閣僚級交渉の結果が出ておらず、サンゴ類の附属書Ⅱ掲載提案から討議が始まりました(日本は反対したが、化石サンゴを除くという修正付で採択)。

3時10分になってようやく第1委員会が再開され、ジンバブエの環境大臣から交渉の経過報告がありました。アフリカは共同歩調をとること、また多くの点で合意できたが、未だ解決できない点があるので、今夜5時に再び集まって結論を出したい、いましばらく時間をもらいたいということでした。
結局、その結論を待つことになりました。

◆妥協によるコンセンサスの危険
今の状況をどうみるべきでしょうか。事務レベルでは何も決められず閣僚が入っての政治的決着とすれば、提案の撤回しかないのではと思っていました。しかし、これほど時間がかかっているところをみると、何か具体的な妥協案で決着する可能性もありそうです。
昨日の記事の終わりに、EU提案をベースにコンセンサスをとることがよいのかどうかについては、個人的に様々な意味で疑問をもっていると書きました。
EU提案によれば、少なくともCoP17(9年後)までは毎年の継続的取引再開は当面避けられます。継続的取引再開は、(輸出枠はあるものの)その国からの全面解禁に限りなく近いのでそれを回避するという意味では評価できるものです。それでも、EU提案をベースに妥協することには次のような疑問があります。
第1は、再開を認める取引量が大きいことです。4国で140トン(ボツワナ70トン、ナミビア15トン、南アフリカ40トン、ジンバブエ15トン)、常設委員会で決まった量とあわせると、今回200トンもの取引再開が認められることになってしまいます。
第2は、妥協することをやめて投票に持ち込んだ場合、果たしてEU提案より悪い結果になるだろうかということです。これは法律的な問題ですが、今回の2つの取引再開提案の中で、1回限りの在庫取引はボツワナについてしか提案されていません(40トン)。CITESの議事進行手続によれば、提案の修正は、提案趣旨を明確にする場合か、趣旨を限縮する場合にしか認められません。ボツワナ以外の国からの1回の在庫輸出を認める修正は許されないはずです。一方、4カ国の毎年の継続的取引についてはもともと提案されていたことですが、さすがにこれを認めることにはEU含め二の足を踏む国が多いと思います。そうすると、結局投票になっても、せいぜい(ボツワナのゾウについてそのような新たな修正が行われることを前提に)ボツワナからの40トンの在庫を1回限りで輸出することが認められる程度ではないかと予測されます。

 一方、投票になれば、モラトリアムが可決される可能性も低いでしょう。結局、今回の会議自体でみると投票で決着をつけた方が取引再開のリスクは少ないが、先のことを考えたときには、それより多い量の取引と引き換えにある程度のモラトリアムを確保したほうがよいのではないかということが問題なのです。3年後の次回締約国会議ではどのような投票環境になっているのか確かなことはわかりません。6年後の会議ではなおさらです。そこで一挙に毎年の継続取引が決まってしまう危険もあるわけです。そう考えると、モラトリアム確保の意味は小さくありません。
 コンセンサスで決着したほうがよいのか、投票に進んだほうがよいのか、確かな答はないといったほうがよいかもしれません。


◆アジアンビッグキャットの討議再開
6月12日の午前に議論のあった「アジア大型ネコ科動物」(アジアンビッグキャット)ですが、各締約国とCITES事務局に勧告を行う決定案が作成されることになりました。作成に当たったのは中国、インド、ネパール、ロシアです。この決定案が本日配布され、第Ⅱ委員会で議論されることになっていました。しかし、作業部会や小グループから出される報告や修正案の翻訳(国連公用の英版、仏版、西版)に時間がかかり、午前中の会議が20分以上中断した後、この議題の討議が始まりました。
最初に発言したのはインドです。野生生物保護法を改正し、トラ保全の部署を設け、さらに中央野生生物犯罪局を設置するなどの努力を強調しました。しかし、トラ保護区のアセスメントの結果、生息環境が悪化していることがわかったこと、同時に密猟が深刻であること、それゆえトラ身体部分の禁止を続ける必要があり、飼育繁殖により生薬材料を生産することは密猟由来の製品をロンダリングする結果を招き絶対に反対である、今日では漢方薬は虎骨を必要としない、国内取引とはいえ中国が虎身体部分の取引を行えば野生個体へ強い悪影響が及ぶと強調しました。

◆不十分な決定案
インドは、その後、中国らと起草した決定案の内容を説明しました。
 この決定案は、生息国に対して、アジアンビッグキャットの保全と取引に関する決議12.5の履行状況を、次回CoP15とそれまでに開催される常設委員会に報告するよう求め、その他生息国各国の法執行に向けた努力を求めています。また、事務局に対しては、1年以内にトラ取引法執行会議を開催すること、IUCNとグローバル・タイガーフォーラムが共催するトラ保全戦略ワークショップを支援すること、トラ法執行対策協議会(Tiger Enforcement Task Force)がアジアンビッグキャットの違法取引を継続的に監視していくことを求めています。
 問題は、中国のタイガー・ファームについてです。この点について決定案は、
「商業規模で飼育繁殖を行っている締約国は、繁殖個体数を野生のトラの保全を支援する限度のレベルに抑制すること」
と述べるにとどまっています。この決定の表現では、中国のタイガー・ファームを含む商業的な飼育繁殖が野生個体群の保全に資するかのようにも見えます。この表現は昨日の段階で中国、インドらから出されていた案とまったく変わっていません。おそらく中国が譲らず、他の国が妥協しなければ決定自体の成立が危ぶまれたのではないかと想像します。
 次に中国が発言し、1993年、任意にトラの身体部分の取引を禁止した、現在、NGOやメディアが中国は取引を再開すると書き立てているが、野生個体群の保全のために国際的に貢献するのでなければ、取引の再開はしない。新しいアプローチとして、飼育繁殖を試みているが、野生個体の保全に資するという科学的な根拠を見出すまでは再開しないという立場は変えないと強調しました。そして、個人所有の毛皮製品に対するラベリングシステムを導入し違法なものと識別できるようにすることを紹介、さらにタイガーファーム関係のスキャンダル(ファーム内のレストランでトラ肉を出しているなど)は根拠がない、NGOが中国を差別視するものだと強く批判しました。
それに続いたブータンの政府代表は、そのポリシーをトラが話しますとして、1人称で森林の生態系の中で役割を果たすチャンスが欲しいと述べました。
ロシアは、アムールトラは、450頭前後と推定されている。幸い、個体数は安定しているが、密猟圧力は高まっていると述べました。その後、インドネシアに続き、アメリカが発言し、タイが続きました。

◆タイガー・ファームへのカウンターとなるアメリカ修正案
注目はアメリカの発言で、現在の「トラ保全の危機」について、中国が飼育繁殖個体の取引を再開することは密猟圧を高めると確信する。中国が取引を再開しないと述べたことは歓迎するが、決定の修正を提案したいと述べました。これは、中国のタイガー・ファームに対する強力なカウンターになる案です。
修正案は、「集約的な商業規模で飼育繁殖を行っている締約国は、国際的に認知された保全のための繁殖プログラムによって、保全に潜在的に貢献すると認められた繁殖集団の数を、 野生のトラの保全を支援する限度のレベルに抑制し、身体部分の取引のために飼育繁殖してはならない。」というものです。
また、新項目として、全ての締約国に対して、決議12.5で示された懸念の視点から、トラの国内取引に関するポリシーを評価し、アジアンビッグキャットの身体部分の取引を排除すること、業界及び消費者がアジアンビッグキャットの身体部分を排除し代替品を受け入れるようにするための教育プログラムを含む措置をとることなどを提案しました。

◆足を引っ張るEU
この修正案についての議論は午後に再開されましたが、アメリカの修正提案に強く反対したのは、ドイツ(EU)でした。EU諸国にもサファリパークなどトラの飼育繁殖施設があり、どれが「集約的な」ものに当たるのか判断がつかないと発言しました。
これに対し、アメリカは「国際的に認知された保全のための繁殖プログラムによって、保全に潜在的に貢献すると認められた」という部分を削除する再修正を行いました。新項目についても、「全ての締約国に対して、決議12.5で示された懸念の視点から、トラの国内取引に関するポリシーを評価すること」とし、残りの部分は削除する修正を行いました。かなりの後退といわざるを得ません。商業規模のトラの飼育繁殖が保全にとって脅威だという認識を引っ込めてしまったからです。インドはアメリカの修正に異存ないと発言しました。

◆タイガー・ファームで生産された虎骨の中国内の取引を封じることができるか
しかし、なおも中国は、身体部分の国内取引のための繁殖を禁ずることには承服できない。「国際取引」のためというなら理解できるが、と発言しました。
ケニア、スワジランド、マラウイは、アメリカの修正提案に賛成、グローバルタイガーフォーラムは、トラの危機を、WWF(タイガー・コアリション)は、トラの商業的飼育繁殖の野生個体群に対するリスクを強調しました。
アメリカ中国漢方普及協会は、1993年に中国が虎骨取引を禁止した際、虎骨を薬局方から削除した、中国の内外の漢方薬薬剤師たちは虎骨の代替物を使うことを快諾している、中国の伝統である漢方薬関係者はトラの絶滅に手を貸すことを望んでいないと発言。
中国野生生物協会は、中国で最大のNGOでトラの保全に関する教育活動などを行っている、中国の現在の政策、つまり飼育繁殖が野生個体の保全に積極的な意義があると証明されない限りは取引再開しないという政策を支持すると発言しました。
WTI(インド野生生物トラスト)TRAFFIC時代に1992年に中国向けのトラの押収が相次ぎ、翌年中国は取引を禁止した経過と現状を考えれば、当然それが続けられるべきことを主張しました。さらにアジアンビッグキャットといえば、300頭しかいないアジアライオンが今年になって8頭も密猟されたこと、アジアライオンの骨が入った酒が売られていることも発覚していると報告しました。
ヨーロッパのある国は、中国の提案のように「国際的に」を挿入することには反対。しかし、「締約国は」を「生息国」に差し替えるなら同意できると発言しました。そうすれば、ヨーロッパにあるサファリパークなどは影響を受けないということでしょう。
中国は、虎骨の取引を禁止したのは犀角に関するミッションが訪中した際、純粋に任意でやったのあり、国際的プレッシャーのためではないこと、また、1993年以降14年も経っており、国民世論や経済界の意見を踏まえて政策の見直しをすることは当然とも強調しました。
実に多くの発言が相次いでいますが、焦点は中国による将来的な虎骨等の国内取引を封じるような決定(次回CoPまで有効)になるかどうかが焦点です。この段階でのアメリカ案だと、飼育繁殖そのものには手はつけられないが、国内取引は封じるものになるでしょう。しかし、中国の提案(許されない取引を「国際取引」に限定)を受け入れれば、何の効果もないものになります。

◆白熱した議論の決着
結局、アメリカの再修正案が投票にかけられ、可決されるに至りました。これに対して中国は、国内措置に踏み込むものでCITESの領域を踏みはずしていると批判しました。 とはいえ、全体会で中国が議論の再開を求めない限りは、今回の会議の決着はついたことになります。

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2007年6月13日 (水)

▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(6)合意に達するか?


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その6



修正案を検討、結果は明日へ持ち越し



議長は、議事進行手続にしたがい、取引への規制の程度が弱いものから順に討議を始めると宣言、ナミビアによる提案4(4カ国からの年輸出枠付で継続的取引)の趣旨説明を求めました。
これに対して、ナミビアは南アフリカの修正提案から議論してもらいたいと発言。その後、ナミビアなどいくつかの発言がありましたが、結局趣旨説明が行われたのは南ア修正案についてだけでした。
ナミビアは、南ア修正案は、12日間の交渉に基づく妥協案であると冒頭強調しました。
法執行は経済的インセンティブと結びつかなければ効果がない。
生物学的には議論の余地はなく、本来は、普通に附属書Ⅱ掲載種として取引してよいはずであると強調しました。また、モニタリングのためにすべての取引を停止する必要はないが、国際協力をする趣旨でCoP16まで新たな象牙取引を凍結することをのむと述べました。
また、CoPでアフリカは象牙問題だけに集中して他の問題に関心を持ってこなかった、他の議題に目を向けるためにも、この問題をCoP外の常設委員会で議論することには意味があるとも述べました。



ナミビアの環境大臣も一部発言し、ゾウは過去10年間で2倍に増えている。生息地消失がゾウに対する主要な脅威であり、増えたゾウは農作物への被害をもたらしている。象牙取引の対価は地域コミュニティーに還元するとしました。


ドイツは、次のように発言しました。
科学的情報に基づいて決定するのだが、しかしそれだけでなく、心で感じる問題でもある。ヨーロッパ人にとってゾウはすばらしい存在。アフリカ諸国の対話によってその内部で決まっていくことを願う。EUはそれを支援していく。対話会議のある夜のセッションで解決にかなり近づいたと思われたことがあった。そのとき議論された内容に基づいて提案を作った。もう少しでコンセンサスに達するのではないかと思う。


ケニアも、この2週間、妥協案を探ってきた。EUの修正案は、もっとも影響が少なく、コンセンサスに導くものであるとして、コンセンサスへの意欲を示唆しました。


常設委員会議長でもあるチリも、それぞれの修正提案の差は少ないので、それを埋める努力をすべきでないかと発言しました。


ここで議長は、EU修正提案、南アフリカ修正提案、ケニア修正提案の3つをベースに、常設委員会委員長を議長にして、コンセンサスをめざして修正案を検討しつつ、それができなければ全体会に戻すことにしてはどうかと提案しました。反対はなく、関係国間の折衝が開始されることになりました。
もしコンセンサスが得られれば、明日の第Ⅰ委員会で決着がつくことになるでしょう。しかし、大変難しい判断ではありますが、私個人は、EU提案をベースにコンセンサスをとることがよいのかどうかについては、様々な意味で疑問をもっています。交渉の結果がどうなったかは明日を待たなければなりません。




◆ 議論の詳細    (1)(2)(3)(4)(5)



(JWCS事務局長 坂元雅行)




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▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(5) お昼休みに修正提案


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その5



Photo

EU、南アフリカ、ナミビアそれぞれからの修正提案


昼休みの間に、EU、南アフリカ、ナミビアそれぞれからの修正提案が配布されました。生きた個体の輸出などについても微妙な違いがありますが、未加工象牙の輸出については次のとおりです。


<EU修正案>
・ ボツワナ70トン、ナミビア15トン、南アフリカ40トン、ジンバブエ15トンの政府在庫の輸出を一定の条件の下に認める。
・ 次の手続に従いながらCoP17まで未加工象牙の輸出を凍結する。
▼常設委員会は、事務局の補佐のもと、CoP16までに象牙取引承認のための意思決定手続を行う。
▼常設委員会は、MIKE、ETIS、「象牙流通管理行動計画」(アクションプラン)の履行状況に基づき、ゾウの状況、取引状況、違法取引の影響を包括的に評価する。
▼アフリカゾウ生息国は、法執行体制の強化、アクションプランの履行、能力開発等を続けること。
▼CITES事務局は、アクションプラン履行のためのアフリカゾウ基金を設置すること。


<南アフリカ修正案>
・ 未加工象牙の再開内容はEUと同じ。
・ 常設委員会が、CoP12で認められた象牙および上記象牙の輸出と、ゾウの密猟や違法取引との著しい因果関係を、MIKE及びETISの報告にもとづいて評価し、その結果にもとづいて年輸出枠付で継続的輸出を認めるという条件で、CoP16まで未加工象牙の輸出を凍結する。


<ナミビア修正案>
・ ボツワナのゾウについてのみの修正提案。
・ それ以外は南アフリカと同じ。

<ケニア修正案>
・ モラトリアム期間を12年間とする。そのほか、決議10.10、アクションプランの改正などを提案している。




◆ 議論の詳細    (1)(2)(3)(4)(6)



(JWCS事務局長 坂元雅行)




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▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(4) ETIS(ゾウ取引情報システム)


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その4



ETIS(ゾウ取引情報システム)の報告



TRAFFICから、ETIS(ゾウ取引情報システム)について、次の通り報告がありました。TRAFFICとは、WWFとIUCNの自然保護事業で、野生生物の取引を監視している機関です。


ETISデータベースには、現在2,952件の象牙の輸入差止め・押収が記録されており1989年以来、322トンの象牙が押収等されていることになります。そして、違法取引が近年非常に増えていることが報告されました。


また、1トン以上の大規模な押収等が増加しており、これは組織犯罪がかかわっている証拠であろう見方が示されました。さらに、違法取引を行ったものが十分に起訴されていないことも指摘されました。


違法取引に特に深く関わっている国として、コンゴ民主共和国、タイ、カメルーン、ナイジェリア、中国があげられました。
中国は著しい法執行努力を続けていることが評価されたものの、依然として違法取引への影響が強いと報告されました。また、フィリピンは違法取引の中継国として中心的な存在であると指摘されました。


違法取引の傾向の原因が何かについては、CITESでの決定は影響なく、むしろ無規制状態の国内象牙市場の存在の影響が強いと評価しています。特に中国は、アフリカから違法象牙が持ち込まれないよう普及啓発を徹底する必要があると指摘されました。


これに対し中国は、一部のNGOから誤った情報が出されていることもあり、ETISの中国に対する評価には是認できないところがあると指摘。中国の管理システムは事務局によって2回に渡り検証され、決議10.10に適合していると評価されていること、それにもかかわらず、このまま中国が象牙輸入国に指定されないことになれば、(合法取引への失望の故に)中国内で違法取引が増えるだろうと述べました。


タイは、ETISによる評価については、満足できない。タイについて個別の指摘をした段落を削除すべきだと主張しました。


午後になってETISに対する議論が再開、中国が再び発言しました。10年間で中国で押収された量は、世界全体の10分の1に過ぎない。ボツワナとケニアはガバナンスの評価が抜けている。
EIAは、過去20年間、象牙の違法取引を調査してきたNGOですが、MIKEは未だスタートしていないので、1997年に象牙取引再開決定して以降の10年間はデータがなく、そのときの決定とその後起こったこととの因果関係は証明できるはずがないと発言。
また、1991年以降、押収したものや私企業が所有する在庫のインベントリ(棚卸し)が行われたことがない。象牙ブームというだけでなく、長期にわたるマーケット管理ができていないことが根本問題だとしました。


TRAFFICは、中国からの疑問に答え、中国のデータはすべて政府から直接得たものである。中国はまた、他のどの国グループよりも押収等スターのどれよりも大きい、さらに大部分が最近の押収等によるものと指摘しました。


これに対して、中国は、(ETISのことではありませんが) 第54回常設委員会はNGOからの批判を受け、法執行機関が裏づけ調査したところ、売られている量ははるかに少なかった。NGOは嘘をレポートに書いていると発言しました。




◆ 議論の詳細    (1)(2)(3)(5)(6)



(JWCS事務局長 坂元雅行)



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▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(3) MIKE(ゾウ密猟監視システム)


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その3



MIKE(ゾウ密猟監視システム)


CITES事務局から、MIKE(ゾウ密猟監視システム)について、次の通り報告がありました。
MIKEでは、個体数のトレンド、密猟のトレンド、管理努力、CITESでの決定の影響などを監視するため、アフリカとアジアでそれらの情報が収集され、6月2日に開催された第55回常設委員会でアフリカで51箇所、アジアで20箇所のベースライン情報が整ったことが確認された。


2007年のIUCNの報告「アフリカゾウの状況レポート」によれば、アフリカでは40数%が、アジアでは20数%が監視の対象となっており、アフリカの中では中央アフリカがどこよりも密猟が激しいとされています。


これに対して、ケニアは、ベースライン情報がどのようなものかアフリカの生息国は理解していない、元データを提供しただけであり、事務局から説明がない、アフリカとアジアの生息国を集めた会議を開き、十分な説明を行うべきだと述べました。


タイは、事務局で資金を確保してもらい、東南アジアでのMIKEサブ地域会議を開催し、今後の進め方について議論したいと発言。


ドイツ(EU)は、資金の面で、将来的なMIKEの存続に懸念を示しました。


フランスが、MIKEアジア中のインドについて50,000ドルを緊急に出したものの、2007~2011年のための予算として400万ドルが必要であり、資金提供者を求めていると報告され、プロジェクトの将来に懸念が示されました。


ジンバブエは、MIKEは補完的なものであり、生息地での保護区管理や法執行を直接行うものだと指摘しました。



◆ 議論の詳細    (1)(2)(4)(5)(6)



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▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(2) 審議の前に修正提案


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その2



討議前に配布された修正提案


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討議に先立って、ケニア・マリから、3つの追加資料が配布されました。


●第1は、モラトリアムを20年間から12年間(CoP18までということになります)に短縮する妥協案です。20年間は長すぎるとして多数の支持が得られないと考えた結果でしょう。


●第2は、「象牙流通管理行動計画」の改定に関する対案で、既にCITES事務局から出されていた改定案よりもずっと詳細です。ゾウが附属書Ⅱに掲載されている国(ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカ)や象牙輸入指定国に指定された国(日本)に、国内流通管理の履行状況を定期的に報告することを明確に求めています。また、ETIS(ゾウ取引情報システム)そのほか信頼できる情報源に基づき、象牙の違法取引が実質的に増加したと認められる場合は、「象牙輸入国」への指定を無効にすることも定められています。


●第3は、前記のモラトリアム、行動計画そして生息国間の対話の促進やアフリカゾウ保護基金の設置を盛り込んだ決議10.10の改正案です。


6月12日の午前のセッションは、ナマコの作業部会や淡水性カメ・リクガメに関する決定の履行などの議題が討議された後、一連のゾウに関する議題に入りました。



◆ 議論の詳細    (1)(3)(4)(5)(6)



(JWCS事務局長 坂元雅行)



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▼ アフリカゾウの附属書改正、審議状況(1) 3つの提案


◆ 6月12日、第Ⅰ委員会で行なわれたアフリカゾウの附属書改正に関する議論を詳しく報告。その1


6月12日、第Ⅰ委員会でアフリカゾウの附属書改正に関する3つの提案が審議されました。


3つの提案とは・・・、

●ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、南アフリカ4カ国のゾウについて、割当量を決めて毎年象牙を輸出することなど求めるボツワナ・ナミビア提案(提案4)、

●ボツワナのゾウについて40トンの未加工象牙在庫の1回での輸出、その後は毎年8トン以内の輸出枠以内での輸出、その他商業目的での象牙製品などの輸出を求めるボツワナ単独提案(提案5)、

●象牙取引の20年間モラトリアムなどを求めるケニア・マリ提案(提案6)です。

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これらの提案については、5月29日から31日にかけての3日間に続き、6月10日に行われたアフリカゾウ生息国間の対話会議でコンセンサスに至らず、その後非公式の折衝が続けられていましたが、調整がつかず討議となりました。


あわせて、象牙の流通管理に関する決議(決議10.10)の趣旨を具体化するための「象牙流通管理行動計画」の改定案(CITES事務局提案)も議論されます。
行動計画の主たる目的は、アフリカ大陸内やアジアに見られる「無規制状態の国内象牙市場」への対処です。規制しない場合は国内取引を禁止すること、規制するなら決議に定められた条件に適った方法で行うことを関係国に求め、行動計画を実施しない国に対する制裁手続を実効性のあるものにすることがポイントになります。



◆ 議論の詳細    (2)(3)(4)(5)(6)



(JWCS事務局長 坂元雅行)



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