2012年3月24日 (土)

合法木材と生物多様性

政策セミナーに参加しました。
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合法木材の利用促進を目指した貿易と国際的な最新動向
2012年3月23日(金)10:00-12:30
場所:東京・広尾 駐日欧州連合代表部
共催:EU代表部・日欧産業協力センター

●目的は合法木材の価格維持。プレミアムではない。

EUは違法伐採対策と合法木材の貿易促進を目指した「木材規制」を2010年に新たに定めました。2013年3月から、違法に伐採さ入れた木材や、その製品はEU市場で流通できなくなります。
 
米国には違法に捕獲した野生動物の売買を禁じるレイシー法が1900年に成立しています。そして2008年の改定で木材製品も対象になりました。この法律により米国の国内法だけでなく、原産国の法律に違反した製品の米国内での所持・販売も取り締まりの対象になります。そして輸入業者が書類をそろえて合法であることを証明しなければなりません。

(参考:レイシー法 http://www.aphis.usda.gov/plant_health/lacey_act/index.shtml )

オーストラリアも2011年に違法木材の取引を禁止する法律が成立しました。意図的な違法木材の売買には禁固刑や罰金、そのほかに規制のリストを業界やNGOなどと協議しているところだそうです。法律は世界の主要な木材市場の一つであるオーストラリアが、ダンピングの国にならないようにと立法されたそうです。

これら各国の状況が駐日米国大使館ケンドリック・リュウ氏、駐日オーストラリア大使館サリー・スタンデン氏、EU代表部通商部ヘイス・ベレンツ氏、フォレスト・トレンド カースティン・キャンバー氏から報告されました。

一方日本はというと、グリーン購入法で政府調達の木材・木材製品に合法性・持続可能性を求めているのみです。そして「証明にはコストがかかる、FSC認証の紙だからといって高い値段で買ってもられるわけではない。もっと消費者に理解してもらいたい」との発言が日本製紙連合会の上河潔氏からありました。

日本がプレミアムを期待しているのに対し、欧米豪は木材価格を引き下げている違法木材を市場から締め出すことを目的に規制をしています。とくに中国がアフリカ諸国などから違法木材を安く輸入し、加工した製品を輸出していることを念頭に置いてのようでした。

●日本は性善説。「自主的な取り組み」で違法木材の市場締め出しができるのか

日本では合法性や持続可能性を証明する手段として「1,森林認証、2,業界団体の自主的行動規範 3,個別企業による自主的な証明」を挙げ、規制は最終手段で自主的取り組みでいくことを強調していました。
これらの合法性の証明も、輸出国側が合法であるとすれば良いので、米国のように事業者自身が合法であることを証明しなければならないことと比べて緩いと言えます。

「日本は自然と共生する文化がある」、また「自主的な取り組みが守られている」と性善説に立っているように見えました。そして欧米豪の「規制によって、価格を下げている違法木材を市場から締め出す」との違いが浮き彫りになりました。そこに規制を嫌がる国内事情を優先している日本の姿を感じました。
 

●「持続可能」から「合法」へ。森林管理の中身が問われる

1990年代から持続可能な森林施業に対する認証制度(FSCやPEFCなど)が始まりました。しかし持続可能性を証明するのは難しいという理由で2000年代は「合法」で国々が足並みをそろえるようになってきました。そうすると持続可能で生物多様性を損なわない森林の管理が法律で定められているかどうかが重要になります。

野生動物の絶滅は生息地の喪失と狩猟・捕獲が大きな要因です。例えばアジアの熱帯雨林に生息するスローロリスでは、伐採によって生息地が失われるだけでなく、伐採されると夜行性で見つけにくい動物も捕獲しやすくなってしまいます。
(参考:スローロリスとFSC 30秒動画 
 http://www.youtube.com/watch?v=QE4hB7kxsrM&feature=share )

その森に生息する野生生物が法律で守られているかどうか。合法木材のチェックポイントです。

●合法木材から考えるグリーン経済

EUの木材自給率は90%、日本は26%。
 安い違法木材とその製品が日本に輸入されなくなれば、紙や木製品の値段が上がって消費者にはマイナスです。でも安易な紙の使用や木製品を使い捨てをするライフスタイルを改める強い動機になります。木材自給率のアップ、丁寧に作られた長持ちする木製品、修理して使う、アンティークやリサイクル業など、国内の産業にプラスの要素も考えられます。
 木材製品が高価になると、プラスチックなどほかの資材に流れて、木が売れなくなるという日本の懸念もセミナーで示されました。これは環境への負荷に応じた廃棄費用を製品に課す、それができないのならせめて有料ゴミの回収価格に環境負荷を反映するなど別の政策との連携が必要になると思います。
 違法木材の市場締め出しには、合法木材の価格維持にとどまらず、グリーン経済へ転換するきっかけの一つになるのではと思いました。

(鈴木希理恵 JWCS理事)

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2012年2月15日 (水)

効果的な生物多様性国家戦略に変更なるか

●参加型で新しい国家戦略をつくる
 「生物多様性国家戦略」の変更が、環境大臣から中央環境審議会への諮問という形で始まりました。その2012年2月9日の中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会を傍聴しました。

 「生物多様性国家戦略」は1995年に初めて閣議決定され、その後「新・生物多様性国家戦略(2002)」「第三次生物多様性国家戦略(2007)」「生物多様性国家戦略2010(2010)」と改定されました。現行の戦略は2012年度までとなっており、生物多様性条約COP10の成果を受けた見直しです。

 3月から5月に生物多様性小委員会で検討し、6~7月にパブリックコメントを行って、10月にインドで開催される次回締約国会議・COP11の前に閣議決定する予定になっています。

 今回の国家戦略の変更は、参加型で行われます。それはCOP10で採択された2020年までに達成すべき目標
「愛知ターゲット」の中の目標17に、「2015年までに愛知ターゲットを実現するための国家戦略や行動計画を参加型で策定する」と書かれているからです。

●生物多様性の知識を学校教育で
 審議会では、生物多様性が学校教育に組み込まれていないことを指摘する意見が複数の委員からありました。「自然とのふれあい」では不十分で、知識を学校教育のカリキュラムに入れるべきだという意見です。
 これまでに環境省は文部省と交渉はしたが、不調に終わっているのだそうです。

 学校教育の中で野生生物の取り上げ方が不十分なことは、JWCSが主張し続けていることです。。
学校教育の中で、細胞や飼育動物・栽培植物はカリキュラムに入っていますが、野生生物はごくわずかしか出てきません。そのため、人間の管理で生きている飼育動物・栽培植物と、生態系のバランスの中で生きている野生生物の違いを知識として学ぶ機会がありません。

 その結果「絶滅しそうな動物は動物園で飼えばいい、エサを与えればいい」という意見が生まれます。しかし生態系のバランスの中で生きているからこそ野生生物なのであって、絶滅させないために人間が飼育繁殖するのは最後の手段なのです。

 また「クジラが有用魚種を食べるから、海を壊さないようにするためクジラをとるべきだ」という「クジラ害獣説」を水産庁が広報していましたが、生態学的に不適切と批判を浴びて広報をしなくなったと聞きます。畑で野生動物が栽培植物を食べてしまう場合と違い、海はクジラがいてもサンマは豊漁だったりするなど、単純ではありません。そしてクジラも死んで他の生物の餌となるなど、海の生態系の一員としての役割を果たしていることも考慮する必要があります。

 生物多様性の減少が取り返しのつかない状態になるまであとわずかといわれています。世界の国々が手を取り合って生物多様性の減少を止めようとしているときに、野生生物の基本的な知識がなくては、議論の輪に入っていくことすらできません。

<参考>
『野生生物保全教育入門』 http://www.schoolpress.co.jp/book/others/yasei.htm

●原因への切り込みとと地域に張り付く専門家
 審議会では、ネオニコチノイド系農薬の使用が昆虫を激減させ、鳥類の減少につながっているという発言がありました。

 農水省は独自に「農林水産省生物多様性戦略」を策定しています。その検討会(2011.12.27)を傍聴し、農水省、林野庁、水産庁で生物多様性保全への姿勢の違いを感じました。

 林野庁は森林の「公益的機能の維持増進」を掲げ、違法伐採によって安く輸入される木材の取り締まりに注目しています。
 そして農水省では環境保全型農業や里地里山整備を生物多様性保全事業にあげていますが、農業全体の影響からみればピンポイントに感じました。先ほどのネオニコチノイド系農薬の問題のように、負の影響に切り込むところまではいっていないようです。
 さらに水産庁は守りの姿勢が強く、海の生態系が危機的な状況にある(例 http://wildlife.cocolog-nifty.com/blog/2011/08/post-d45b.html )現実から目をそらしているように思いました。ちなみに来年度改定される戦略にも「鯨類等の大型生物による有用水産資源の捕食の実態を把握し、その影響緩和の取組を推進する」の一文があります。

 国交省には「環境行動計画」があります。HPの「負の遺産の一掃と健全な国土にむけた取組」の中に「自然共生と生物多様性」が分類されているところは農水省に比べ積極性を感じます( http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/index.html )。

 各省庁の取組に対し、環境省が国家戦略改定のなかでどれだけリーダーシップを発揮して生物多様性減少の原因に切り込んでいけるのか、またどの省庁・自治体の所属であっても、地域に根を下ろして生物多様性のために調整ができる人材を配置できるのか。そこが効果的な国家戦略に転換するポイントだと思いました。

 (鈴木希理恵 JWCS理事)

 2012年2月9日(木) 中央環境審議会自然環境・野生生物合同部会
  http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14743
 
 生物多様性国家戦略とは
  http://www.biodic.go.jp/biodiversity/wakaru/initiatives/index.html
 
 農水省 生物多様性戦略検討会     
  http://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/s_senryaku/seibutu_tayo/index.html

 国土交通省 環境行動計画の点検 平成23年3月 
  http://www.mlit.go.jp/common/000139748.pdf

 国家戦略2010の点検結果 
  http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=18646&hou_id=14479 
 
 国家戦略2010(案)に対してJWCSの意見
   http://www.jwcs.org/data/100107.pdf 

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