2011年12月11日 (日)

キーワードは「地域に張り付く専門家」

「森林」と「絶滅のおそれのある生物」について2つの集まりを傍聴しました。
連続セミナー「生物多様性保全に役立つ合法木材調達」第2回(主催・フェアウッド・パートナーズ 11月30日)と「我が国の絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する点検会議」第2回会合(環境省 12月5日)です。

日本の森林(民有林)をどうすべきかを決めているのは市町村森林整備計画。森林法で森林の取り扱いのルールを決めていないのは、日本の特徴なのだそうです。そして伐採届を出せば、違法にはなりません。「自分の土地は自分の好きにしていい」という私権が強いのも日本の特徴だそうです。だから規制よりも補助金で誘導する手法がとられてきました。

絶滅のおそれのある野生生物の保全も、国の予算は限られるので地方分権の流れで地方自治体の仕事に、ということのようです。でも地方自治体も仕事が増えても予算を伴わないのでは、実行できないのではないかと思うのですが。

 もっとも気候や地形がさまざまな日本では、より地域密着の方が自然への対応を考えるには適しています。例えばこの会議の第1回で国のレッドリストには掲載されていない種が、都道府県版のレッドリストには載っているというデータが示されました。つまり国ではなく都道府県の事業であれば、全国に分布しているように見える生物が、地域での絶滅は始まっていることを早めに知って対策を立てることが可能になります。

ところが市町村が、生物多様性に配慮した持続可能な森林計画の立案や、希少種の保護増殖事業を行おうとすると、専門性のある職員が必要になります。フィンランドの森林・林業行政では中央よりも現場事務所の人数が圧倒的に多いこと、米国内務省魚類野生生物国の絶滅危惧種事業のなかで回復事業の人数が多いことがそれぞれの会合で話されました。つまり専門知識を持ち、地域の意見の調整ができる「地域に張り付く専門家」が必要とされているのです。

 生物多様性に限らず、こういう人物が活躍できるかできないかが、自治体格差につながるのではないかと思いました。

(鈴木希理恵 JWCS理事)

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2011年9月21日 (水)

COP10後10年の方向を探る会議

 名古屋での生物多様性条約COP10から1年。2020年までの目標「愛知ターゲット」、国連生物多様性の10年と、10年単位の取り組みの1年目のとして、環境省は方向性を決める会議を開いています。

 COP10の結果を受けて生物多様性国家戦略が改定されます。それに先立ち、有識者の意見を聞く「人と自然との共生懇談会」が開かれています。この懇談会は7月から12月まで毎月開かれ、国家戦略改定の議論が2012年1月から始まり、9月に決定される予定です。     
(資料・議事録→ http://www.biodic.go.jp/biodiversity/ )

 この「共生懇談会」は、JWCS理事の山極壽一・京都大学大学院教授も委員になっています。9月12日の第三回懇談会では国際協力がテーマでしたので、山極委員から研究者が主体にすすめるアフリカでのゴリラのエコツーリズムを核に、生息地周辺の生物多様性保全と紛争防止に向けた活動の報告がありました。

 また経済界から「愛知ターゲット」への取り組みを検討する会議も開かれています。愛知ターゲット目標4は「持続可能な生産及び消費」と「自然資源の利用の影響を生態学的限界の十分安全な範囲内におさえる」ことをビジネスにも要求しています。
 これまでに事業者の自主的な取り組みを促すために「生物多様性民間参画ガイドライン
( http://www.env.go.jp/nature/biodic/gl_participation/gaiyou.html )」
ができています。
 このガイドラインでは、取り組みを各社で考えるスタンスですが、自社の経済活動が生物多様性にどんな影響があるのかわからない、何をしたらよいのかわからないという声があり、そのためさらに踏み込んだ情報提供をすることになったそうです。


 9月20日に開かれた「経済社会における生物多様性の保全等の促進に関する検討会
( http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14177 )」
では、日本標準産業分類の大分類ごとに生物多様性に与える影響を整理した資料「経済活動が生物多様性に与える影響について」と、生物多様性の危機(例:生息地の改変)ひとつひとつについて関連する産業、生物多様性総合評価報告書(JBO)の記載、法律や制度をまとめた一覧表「経済活動が生物多様性に与える影響とその対策について」の検討が行われました。
 業種ごとの生物多様性への影響について、製造業は細かく分けたほうがいいのではないか、金融・保険業は「間接的影響」だが影響は大きいのではないかなどの意見が出されました。
 経団連自然保護協議会の石原委員からは、自社製品の原材料の調達から廃棄までの環境への影響を低減するライフサイクルアセスメント(LCA)を始めている企業や、社会貢献としてすでに植林をしていた企業には、生物多様性の視点を取り入れて樹種の選択をするよう呼び掛けたことなどの発言がありました。

愛知ターゲット目標4は、「環境への配慮をしている、してない」から「生物多様性への影響の量をどれだけ減らしたか」へ、「意識の高い企業が取り組んでいる」から「生物多様性への配慮はビジネスの主流」へと質・量ともに大きなステップアップを要求しています。
 各企業にとっては、ささやかな社会貢献ではグリーン・ウォッシング(環境に配慮しているように取り繕っている)と批判されかねず、本業の生物多様性の影響を海外からの原材料調達も含めて分析することが必要になります。生物の生息地の情報はますます必要とされるでしょう。そして問題解決や影響緩和のために、政府や企業ができないことをNGOが担うこともあるでしょう。
 グリーンエコノミーのような経済の仕組み自体の変革は、今はまだ雲をつかむような話ですが、ビジネスチャンスの競争に政策が連動した国が一番乗りをする日が来るのかもしれません。

(鈴木希理恵 JWCS理事)

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