2018年12月23日 (日)

2018年注目されたニュースTop10

2018年 JWCSのTwitterランキング

JWCSは野生生物保全につながる、おもに海外のニュースをツイッターでシェアしています。2018年に多く読まれた記事(インプレッション)上位10位を発表します!

第10位 EUで関心の高いウナギの保全

ヨーロッパウナギの資源量は90%下落。最終的に日本と中国のテーブルにのるウナギは「地球最大の野生生物犯罪」。犯罪組織の関与で取引関与はますます危険になった。 https://t.co/nAny2n94w4

ヨーロッパウナギはIUCNレッドリストでは「深刻な危機(CR)」とされています。ニホンウナギ、アメリカウナギの「危機(EN)」より高いランクです。ヨーロッパではウナギの生息地の保護も含め保全の関心が高く、新聞の見出しになっているようにEUではウナギの違法取引が“largest wildlife crime on Earth”と呼ばれているそうです。そしてヨーロッパウナギの稚魚が養殖用に密漁され、中国や日本が消費していることが注目されています。


第9位 トッケイヤモリの違法取引

トッケイヤモリの組織的な違法取引がインド東北部、ネパール、ブータン、バングラディシュで数百万ドル規模になっている。ペットや伝統薬に利用される。
鳴き声から名前がついたというトッケイヤモリは、日本で野生個体がペットとして3000円程度で売られており、知名度が高いためこの記事は関心を集めたようです。TRAFFICは2015年発行の報告書で、インドネシアでトッケイヤモリを商業用に繁殖しているが採算がとれないことや、捕獲により野生個体数に影響が出ていることを指摘しています。


第8位 鳥8種の絶滅が明らかに

新たな分析により、この10年で8種の鳥が絶滅したと判断された。そのうち5種の絶滅は南米の森林破壊が原因で、アニメ映画「Rio(ブルー初めての空へ)」に出てくる青いオウムも含まれる。
『IUCNレッドリストカテゴリーと基準』3.1版改訂2版によると、絶滅は「既知の、あるいは期待される生息環境において、適切な時期(時間帯、季節、年)に、かつての分布域全域にわたって徹底して行われた調査にもかかわらず、1個体も発見できなかったとき」とされています。この記事はバードライフインターナショナルの調査によって絶滅が明らかになったというものです。
これらの鳥の絶滅要因として持続的ではない農業と森林伐採が挙げられており、ブラジルから大豆などを輸入している日本の消費も無関係ではありません。


第7位 アフリカの国々によるゾウ保護の動き

ゾウを守りたいアフリカの国々が結成したアフリカゾウ連合(AEC)の会議がエチオピアで開催された。 https://t.co/0ke2gs4Xel

実はこの、アフリカゾウ連合はワシントン条約の重要なグループになっています。
南部を除くアフリカの国々にとってゾウの密猟は、種の絶滅の問題だけでなく、武装勢力が象牙の違法販売で資金を得ているので治安の問題として深刻に受け止められています。アフリカゾウ連合は、「国際的な象牙取引の脅威から逃れる」ことを目的の一つに掲げ、30か国が加盟しています。
そのためワシントン条約締約国会議で議題が投票にかけられた時、アフリカゾウ連合の30票とEU加盟国28票(2018年現在)は、採否を決める存在となっています。


第6位 世界のウナギを調査した報告書

過去10年で日本はウナギの主要な輸入国(図)。そして2014-2015年から2016-2017年の間に、日本の養殖池に入れられたウナギの57-69%(11-12トン)は、違法・無報告漁業、密輸によって供給されたと推定されている。 https://t.co/YVNztvnHjT
2018年7月に開催されたワシントン条約動物委員会には、現在附属書Ⅱに掲載されているヨーロッパウナギ以外の未掲載のウナギについて調査した報告書が提出されました。この報告書P43 の地図は、北米、ヨーロッパ、中東、東南アジア、オセアニアのウナギが中国に集まり、まとまって日本へ輸出されていることを表しています。これを見ると「ウナギは日本の食文化」と言っているだけでは済まされず、世界の野生生物の問題と認識する必要があることがわかります。
 
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第5位 種の絶滅の持つ意味

種の絶滅は、進化史の生命の木(系統樹)の枝を切ることであり、原生自然の破壊、密猟と汚染が50年以内に終了し、絶滅率が自然なレベルにまで低下したとしても、自然界が回復するには500~700万年もかかる、という論文が発表された。 https://t.co/1oIsCMquq4
この研究は種の絶滅を「何種絶滅した」と足し算をするのではなく、その種が地球上に出現し進化してきた時間を合計する考え方だそうです。例えば現存するゾウの種はアフリカゾウとアジアゾウの2種ですが、この2種を失うことは、マンモスやナウマンゾウなど過去に絶滅したゾウの系統の大きな枝を失うことになります。そして人間による大量絶滅が起きる前の系統樹のように枝が茂るまでには気の遠くなるような時間が必要とのことです。
 ちなみに野生生物保全論研究会(JWCS)は、未来の進化も考えた野生生物保全であるべきだと考えています。(詳細はJWCS(2008 )『野生生物保全事典』緑風出版をご覧ください)
Mammal diversity will take millions of years to recover from the current biodiversity crisis
Matt Davis, Søren Faurby, and Jens-Christian Svenning
PNAS October 30, 2018 115 (44) 11262-11267; published ahead of print October 15, 2018
第4位 どんな両生・爬虫類ペットが野外に放される?

外国産両生・爬虫類ペットのうち野外に放される可能性が高い種についての論文が公開され、長期間にわたって大量に輸入され、安く販売された種・長生きする種・安く販売され、成体が大きくなる種があげられている。
この論文では、初めて両生・爬虫類を購入する人に対し人畜共通感染症のリスクや長生きするペットを世話し続けられるかなど購入前に思いとどまる情報を提供すること、また小売業による買戻しやペットシェルターで野外に放すことを防ぐことを提案しています。


第3位 インドが規制強化

インドは野生由来の全てのCITES掲載動植物種(2種の木とその製品を除く)の商業輸出を禁止する。もしインドから野生由来の附属書Ⅱ掲載のカメなどが日本に輸入されたら、違反行為になります。 https://cites.org/sites/default/files/notif/E-Notif-2018-031.pdf


このCITESの通知文によると、締約国は違反行為をインド管理当局と事務局に通知するよう求められています。そうすると第9位のインドで密猟されたトッケイヤモリが日本で見つかったら、日本政府はインド管理当局とワシントン条約事務局に通知しなければならないことになりますが…。


第2位 爬虫類ペット密猟で日本人が南アで有罪に

日本人の男、南アで有罪判決 アルマジロトカゲ違法所持:朝日新聞デジタル https://t.co/X7LuOOw2Bf


アルマジロトカゲはワシントン条約附属書Ⅱ掲載種です。希少価値があり1匹30万円以上とも言われています。とか。附属書Ⅱ掲載種は税関で摘発されなければ、国内での譲り渡し(販売、貸借等)に規制はありません。税関でワシントン条約該当物品の関税法違反として差止めた件数に対し、通告または告発した事件数はわずか0.9%(税関におけるワシントン条約該当物品の輸入差止等の件数と主な品目2017年)。この事件は原産国の南アフリカで有罪になりましたが、日本の法律は野生生物犯罪に甘いと言わざるを得ません。


1位 ニュージーランドの外来生物対策

ニュージーランドは外来の捕食動物を2050年までに取り除く目標を掲げた。プロジェクトの一つにはキウイフルーツを使ったお酒のメーカーが保護区の島の外来捕食者の駆除を支援している https://t.co/JtqnK2qkcp


島単位での外来捕食者を駆除し、キウイなど在来の鳥たちを守る活動を、お酒のメーカーがタイアップしているというこの記事。以下がニュージーランド政府の「Predator Free 2050」のサイトです。国民運動になっているようです。
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このように2018年を振り返ってみると、爬虫類ペットとウナギ、そして野生生物に対する日本と海外の温度差が注目されたように思います。
2019年は5月にワシントン条約締約国会議がスリランカで開催されます。野生生物の保全に前進が見られる年になることを願っています。

対象期間2018年1月1日~12月15日 
ツイッターの文面は一部修正してあります。
記事の内容を正確にお知りになりたい方は、原文をご参照ください。

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2018年6月 7日 (木)

シンポジウムの話題から考えたこと

生物多様性基本法制定10周年記念シンポジウム レッドリストと種の保存
2018年6月2日(土)早稲田大学 
主催:WWFジャパン、日本自然保護協会、日本野鳥の会 
共催:IUCN日本委員会、イルカ・クジラ・アクションネットワーク、グリンピース・ジャパン、トラ・ゾウ保護基金、野生生物保全論研究会
シンポジウム全体の内容は主催団体からの報告に譲り、ここではJWCSの理論研究会でテーマとしてきた、「保全と利用」について考えてみました。
●未来のおじい、おばあはヤンバルクイナを食べるか?
 シンポジウムで「昔はヤンバルクイナを食べていたと沖縄のおじい、おばあは言っていた、将来ヤンバルクイナの数が増えて、再びおじい、おばあがヤンバルクイナを食べられるようになるといい」という話がありました。
 絶滅危惧種が消費できるほど増えてほしいという意味だと思いますが、実際にヤンバルクイナを食べるようになるでしょうか?

 未来のおじい、おばあは、現在の小学生かもしれません。2015年に沖縄のヤンバルクイナ生態展示学習施設に行ったとき、国頭村のヤンバルクイナのキャラクターの名前が「キョンキョン」に決まったお知らせや、ヤンバルクイナを小学生が描いた絵が張られていました。
 もしも生態展示学習施設でヤンバルクイナの絵を描いている遠足の小学生に、「おじい、おばあになったらヤンバルクイナを食べたい?」と聞いたら「へんなひとー!」と言われてしまうかもしれません。そして帰宅後、「ママー、今日ね、変な人にヤンバルクイナ食べたい?って声かけられた」なんて話したら、「遠足で不審者出没」というLINEが保護者の間で飛び交ってしまうかもしれません。それくらいヤンバルクイナに対する認識は変わっているのではないでしょうか。将来、数が増えてもヤンバルクイナは大切にするものであって、食べるものではないという認識は変わらないのではないかと思います。
●「食べる」「カネになる」だけが自然と人のつながりか

 またシンポジウムでの「食べたり、利用したりするという伝統的な自然とのつながりがなくなると、その自然を守ろうと思わなくなる」という話にも疑問を感じました。
 生態展示学習施設でヤンバルクイナの絵を描いた小学生は、昔ヤンバルクイナを食べたおじい、おばあに比べて、自然を大切にする気持ちが劣っているのでしょうか。そうではなくて自然と人間のつながりが「それ食えるのか?それともカネになるのか?」というつながりから、「絶滅危惧種は大事にする」に変化したのではないかと思います。
 かえって「食べる・カネになる」という価値は、自然に対してより大金が提示されれば(カネがあればもっといろいろな食べ物が買えるので)小さくなってしまうでしょう。
 今回のシンポジウムの登壇者のひとり、中静徹・総合地球環境学研究所特任教授の論説文「絶滅の意味」が中学校の国語の教科書に掲載されています(新編 あたらしい国語 3年 東京書籍)。生態系のしくみや生態系サービスなどを学んだ世代は、「それ食えるのか?カネになるのか?そういう価値がなければ守る必要はない」というのは、20世紀の人間の考えだと思うのではないでしょうか。
 そうすると「伝統が失われて嘆かわしい」という声が上がるかもしれません。しかし失われる伝統には、若い世代に引き継がれない理由があるはずです。
 一般に伝統と言われるものには昔ながらの男尊女卑がしみ込んでいるので、それを理解せずに「上から目線」で「伝統を守れ」と言ったところで、若い世代、とくに女性から忌避されて静かに廃れるのではないかと思います。 「伝統」は絶対視されがちで、反論すると面倒くさいので、伝統が廃れる本当の理由は表に出ないように思います。
 ところでご神木や神の使いなど「食べる、カネになる」以外の価値のために野生生物を大事にすることもありますが、その「伝統」はあまり強調されないようです。定義があいまいな「伝統」よりも、地域の自立と持続可能性から地域の将来を考える方が、保全につながるのではないかと思います。
 
 
 さらにこのシンポジウムは、登壇者が全員男性でしたが、参加者には多くの女性の姿がありました。また仕事としてレッドリストや生物多様性について情報収集のために来ている参加者が多いように見えました。

 いまや自社の企業活動が種の絶滅に加担してしまったら、自社製品の不買運動がインターネットを通じて世界規模で起こるかもしれません。また投資家が、環境への配慮が足りない持続的でない会社と判断して投資をやめるかもしれません。絶滅危惧種への対応はビジネスリスク要因になったのです。ここにも「食えるのか?カネになるのか?」という認識とのギャップがあります。  
 このシンポジウムは「生物多様性基本法制定10周年記念」として、法律制定の経緯やレッドリストの基本となる考え方など、過去を振り返って意味を考えたり、整理をしたりする、その名にふさわしい内容でした。そこで語られた「過去」と、現在の認識のギャップは、もしかしたら主催者側より参加者の方が、より多く気付いたかもしれないと感じました。 
 
(JWCS 鈴木希理恵)

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